荒井由実、”COBALT HOUR” (1975)

唐突だが、私は基本的にアンチユーミンなのだ。四畳半フォーク趣味だった中学時代には、それを揶揄するような彼女の発言にかちんと来ていた。洋楽全盛期だった私の大学時代には、一大勢力として存在していたユーミンファンを、「いろいろ聞いたうえでなおユーミンが好きなわけ?それとも耳に入ってきやすいものを好きだと言ってるだけ?」と冷ややかな態度で見ていた。

そんな私が、荒井由実の70年代半ばまでの初期四部作をレビューしてみようと思う。このあたりの作品では、荒井由実の曲の良さに加えて、細野晴臣・鈴木茂といったはっぴいえんどを源流とする人々、そして松任谷正隆、山下達郎、吉田美奈子、大貫妙子といった錚々たるメンバーが固めたバックが醸し出す緻密な音世界が、やはり時代の先を行っていたと認めざるを得ないのが真実。この時代の彼女は、やはり良いのです。

さて、最初に取り込む一枚は、彼女の三作目となる”Cobalt hour”。この一曲は、と言えば、やはり2. 「卒業写真」だ。Hi-Fi setの方がヒットしたし、ボーカルだけをとれば山本潤子さんの方がすばらしいのである。が、曲の仕上がりとしてはこちらの方が圧倒的に良い。やはり、このバックのアレンジによるところが大きいのかなと思う。鈴木茂のギターはすごいね。ヒットした5. 「ルージュの伝言」は、どうも私にはピンとこない。8. 「少しだけ片想い」、9. 「雨のステイション」は名曲。