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Corrinne May (Singapore)

Corrinne May, “Beautiful Seed” (2007)

とても好きな歌い手さんの最新盤。発売後一年経って気付くなんて、いかに情報収集をさぼってるかってことですね。

さて本作ですが、どうにも突き抜けきらない感じがあります。いつものCorrinne Mayのように聴こえるのですが、「この曲はすごい!」という感じの曲がないのです。ひとつには使っている音域の問題があるような気がします。彼女は中音域での声質が素晴らしい人ですが、ちらっと織り込む高音域のフレーズが非常にアクセントとして効くのです。しかし、今作は中低音域に大半のフレーズが収まってしまっているので、いささか退屈に響くのかも。あとはピアノ弾き語りに近い形の方がいい気がします。オーケストレーションが厚過ぎるんじゃないかな。

2.“Shelter”, 12.“On my way”あたりは、まあまあいいかな、と思います。

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Corrinne May (Singapore)

Corrinne May, “Safe in a crazy world” (2005)

バラード漬けだった前作とはちょっと違った一枚。1. “Little Superhero girl”は、本国シンガポールをはじめ、東南アジアでヒットしている様子。幼児向けTV番組にヒントを得た曲らしいのだが、楽しげですね。2. “Save me”は、心の内のちょっとどろっとしたところを出した作品だろうか。最近結婚したとのことで、こういう部分を上手く出せるようになったのかもしれない。

タイトル曲の5. “Safe in a crazy world”もストリングが乗ってくるピアノ弾き語り曲。自分の世界にしっかり引き込んでくれる。7. “Angel in disguise”もそうだが、アルペジオを多用するようになったのは、Vannessa Carltonの”A thousand miles”のヒットの影響なのだろうか?9. “The birthday song”もいい曲だ。

さて、このアルバムの一番の当たりは3. “Free”Beth Nielsen Chapmanっぽさも感じるが、音の処理の洗練された感じはこの人に軍配があがりそう。さすが。11として、別バージョンも含まれている。

このアルバムも外れがない。前作のインパクトにはやや劣るかもしれないが、音に幅を広げた点を見るべきと思う。私としては、2006年上期ベストの一枚です。地道に全米を回っていたりもするので、メジャーになってほしいですね。

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Corrinne May (Singapore)

Corrinne May, “Fly away” (2002)

とにかく素晴らしい作品。ピアノ弾き語りをメインとするシンガポール出身の女性SSWで、声質と曲がひたすらに美しいのだ。この作品は2002年の発表で、当時日本でも発売になったが、私は気づいていなかった。最近二作目の日本発売に伴って取り扱い先を変えての再発売となったのでこの作品に出会ったが、知らずに過ごした4年間を悔やんでしまう。Carole King的な王道を行く人だとのコメントを多く見かけるが、最近の人では誰に一番近いだろうかと考えると、Beth Nielsen Chapmanではないかと思う。声質でふっと思い出したのは宇多田ヒカル、高めの声域でちょっと似ていることがある。

一番はまってしまった曲が10. “Will you remember me”だ。ありがちな美しいスローバラードっぽいのだが、コード進行と曲の展開に仕掛けがたくさんある。曲の頭から、ピアノ+シンセで薄いながらも広がりを感じさせる音世界をまず作る。声質にとにかく引き込まれてしまう。局の後半が圧巻。思わぬタイミングで、テンションのかかったコードがぽんと入ってくる(augumentかな?)。最後の”will you remember me? remember”とひたすら続くリフレインがものすごい。これのどこがすごいの?と思う人が多いだろうというのは想像つくのだが、おそらくこれは80年代初頭を体験した人間の郷愁に訴えかけてくるものがあるからだろう。

タイトル曲の1. “Fly away”も、ものすごい曲だ。ピアノ一本でじっくり最後まで聞かせきるバラード。上と違って音に仕掛けはないんだけど、声質と歌唱力を堪能すべし。高音域まで、力むことなくきれいに出し切れるこの人は、いったい何者なのでしょう?“2. Same side of the moon”は、生ギター+シンセがバックの曲。聴かせてくれます。5. “If you didn’t love me”, 9. “Walk away”, 11. “Journey”もいいピアノバラードだ。全部は書ききれないが、外れ曲がないアルバムで、「明かりを落とした部屋で、正座してスピーカーに対峙して聞きましょう。」とそう言いたくなる一枚。

しいて難を言えば、きれいすぎる、あぶないところがない、ということだろうか。音自体に、どこかとげとげしたところとか、どろどろしたところが、まったく感じられないのだ(歌詞はそうでもないかも)。ソングライターとしては、Joni MitchellとかRickie Lee Jonesの域には達しないな、と感じるところはそういうところに原因がありそうだ。決して批判してる訳ではないのだ。私の場合、この二人と比べてしまいたくなる女性シンガーなんて、滅多にいない。どうしても比べたくなってしまう、という時点で、私にとっては凄い人なのです。