最初に買った鈴木祥子さんのアルバムが、この”Candy Apple Road”と、「あたらしい愛の詩」 (1999)の二枚だった。もう20年を越えるキャリアの中で見れば、初期のJ-pop女性シンガー路線から、自身の洋楽体験を反映したロック色の強い路線へシフトした時期の作品群。初期ファンの期待を裏切る作品への反響に、自分自身がかなり戸惑ったことを、2009年のライブに先立ったインタビューで語っている。
5年くらい前から祥子さんを聴き始めて僕は、明らかに遅れてきたファンなのだが、このアルバムは本当にすごいんじゃないかという思いが強まりつつある。それは、自分のリスニング傾向を公開しちゃってるlast.fmの個人的なアルバムチャートでもはっきり出てしまっているわけで。
特に印象的な曲がいくつかある。まずは、4. 「恋のショットガン(懲りない二人)」。「女性らしい歌詞だな」と思って聴いていると、S気全開の“もう降参だと言いなさい”というサビに流れ込むという思わぬ歌詞の展開が面白い。そして、音はどうしようもなく、ロックなのだ。個人的には、この曲でのギターが好きなのだが、弾いているのは当時の旦那の菅原弘昭さん。
9.“Shelter”は、何とも言えない澱みがある曲だ。こういう曲を書き切れる、演り切れる、というのが、祥子さんのスゴミなのだと思う。
11. “Angel”も大好きな曲。ポップなメロディーと自然体の歌詞ながら、とても大事なことを伝えているように思える。作詞は小倉めぐみさん。しかし,本人が書いていたとしてもまったく違和感がないその歌詞は、今に至るまで続く「なにかを見失ったまま、さまよいながら、でも進み続けている」鈴木祥子ワールドそのままだからと僕は感じる。あなたの”胸の中の天使”は、あなたにどう生きろとメッセージを送っていますか?
12.“River’s end”は、のちのライブ盤のMCで、自分が生まれ育った下町のことを歌ったと語った曲。忘れるために生きているというくだりも、のちの「忘却」あたりにつながる世界だ。
その他、3. “Sulky Cat Strut”あたりも、決して好きでは曲調でないにも関わらず、「器用だなあ」と思ってしまう。単純なようで実はメロディーの作りが面白いのは8.「君の赤いシャツが」。13.「ぼくたちの旅」は、珍しく前向きな歌詞なんだけど、曲のキレがいいのでやはり大好きな曲。
そしてそして、この人の天才ぶりを示す一曲が7. 「3月のせい」だと思う。私の拙い言葉をどう書き連ねようとこの壮絶な世界を説明できない。ぜひあなた自身が聴いてみて下さい。