Pat Metheny, “Secret story” (1992)

これはPatのソロ作。しょっぱなの“above the treetops”がカンボジアサウンドで面食らうのだが、続く“facing west”は、PMG以上にPMGしているんじゃないか、と言う曲。“The longest summer”が、本当に泣ける。ピアノを弾くのはLyle Maysではなく、Pat Metheny自身。これが、ピアノであってもPatの音なのだ。これには本当に驚いてしまった。これにかぶってくるギターシンセにも、ぐぐっと来る。続く“Sunlight”も、PMGっぽいとてもきれいな曲。

後半は、Pat自身が「とにかく哀しい音にした」と言っている部分だ。しかし、“See the world”は、やはりPMGっぽい佳曲。ソロと言いつつ、PMGの面々がバックを固めた時が一番なのだ。日本人として聞き逃してはならないのが、“As a flower blooms (I am running to you)”。曲の最後でバックにひっそりとかぶってくるボーカルは矢野顕子。歌詞はちゃっかり日本語なのだ。これを楽しめるのは日本人の特権であるから、せいぜい楽しもう。

しかしこのアルバムが出た頃の雑誌のインタビューでは、Patは「PMGではやりたいことはやり尽くした。」的な発言をし、Lyleは一流ミュージシャンをゲストに揃えたこのアルバムに嫌味を言うなど、非常に危ない空気が伝わってきたのだが、何故か10年経った今でもPatとLyleは一緒にやっている。めでたしめでたし。