前作の無理なロックっぽさに戸惑った私だったが、この一枚での変貌ぶりにも驚きを隠せない。一転して、ボサノバフレーバーあふれるポップス路線への転換だ。イギリス人のHamish Stuartのプロデュースで、録音もイギリスで行われている。年齢相応に大人らしい音楽をしよう、ということなのだろうけれど、声質と曲がマッチしていないように思われる。こういう路線を聞き慣れている人にとっては、Swing out sisterやWorkshyとの落差の大きさにがっくり来てしまうだろう。あるいは、スカンジナビアポップスからジャズへと戻って成功したSiljeとの比較でも、だいぶ見劣りしてしまう。二枚目までのスカンジナビアン・ポップス爆走路線が、彼女には一番合っている気がしてならない。
そんな中でもちょっとうれしかったのがカバー曲だ。Joni Mitchellの“Circle game”とか、Carole Kingの“Too late”なんかを歌っているのにはちょっと感激。他にも、ジョビンの曲を二曲ほど取り上げているが、Pat Methenyの影響で、ブラジル音楽に興味がある割にはさぼって聞いていない勉強不足の私としては、ちょっとコンプレックスを感じてしまう選曲でもあるのだった。うだうだと不満めいたことを書き連ねたが、基本的には私の好きな路線ゆえ、次作でより洗練された音を聞かせて欲しいと願うのだった。(でも、またとんでもない路線へ鞍替えしてしまうのだろうがな・・・)