Alanis Morissette, “So-called Chaos” (2004)

これはすごい一枚だと私は思うのだ。一曲目の“Eight easy steps”の冒頭から、ちょっと中近東っぽいかと思われる「アラニス音階」(私が勝手に名づけたもので、一般性は全くない)が炸裂。そこから、一気にロックの王道を行くようなシャウトへと流れ込んでいくのだ。分厚い音作りに支えられながら、Alanisの強烈な個性が押し寄せてくる曲だ。“Spineless”“Knees of my bees”なども同じような曲想。

二曲目の“Out is through”では一転して、アコースティックな音使いから曲が始まり、さびのところのメロディーは、「アラニス音階」のおどろおどろしさからはほど遠い美しさのだ。続く“Excuses”なども、透けて見えながらも表には出て来ないアラニス特有のおどろおどろしさが、曲の美しさを一層引き立てている。こういった系統の曲の中で私が最も気に入ったのが“Not all me”。シンガーソングライター系のあっさりな音作りで、曲が映える。

Alanis Morissette, “Alanis Unplugged” (1999)

このアルバムはいいなあ、と思う。いつものアルバムのどこが自分の体に合わないのかと言えば、曲自体というよりは、エレクトリックなバックのアレンジの気色悪さに原因があるらしいと悟る。

一曲目の“You learn”からとてもいい。“No pressure over Cappuccino”“That would be good”“aprincess familiar”といい感じで続く。

“ironic”に関しては、元のバージョンの方がいいな。

Alanis Morissette, “jagged little pill” (1995)

これがソロデビューアルバムらしい。一番強烈な印象を与えたのは、大当たりした“ironic”だろう。この曲のサビは頭にこびりついて離れない。この当時私はアメリカにいて、ケーブルTVのMTVで流れているこの曲のビデオクリップを何度となく見た記憶がある。あるときカナダ人の仕事仲間が、私のアパートに泊まりに来ていたのだが、ビデオを見ながら「この人はカナダ人なんだ。」と言っていたのが思い出される。

フォークっぽさを残したシンガーソングライターとしての顔と、ぶち切れかけたロッカーとしての双方の顔が思わぬタイミングで入れ替わる、その自由さに圧倒されてしまう。たとえば、三曲目“Perfect”の、昔ながらのフォークっぽい導入部は、なんと綺麗なことだろうか。かと思えば、いきなりの一曲目“All I really want”でのロッカー振りは、なんと激しいことだろうか。