DÉJÀ VU 50TH ANNIVERSARY DELUXE EDITION (2021)

Rolling Stone誌のサイトが伝えるところによると、CSN&YのDeja vuの50周年記念盤が出るらしい。オリジナルのLPとCDをリマスターしたものが一枚ずつ、残りのCD三枚がデモバージョンとか未収録曲などになるとのこと。オリジナル盤に収録されなかった曲には、やはりそれぞれネガティブ理由があるのだろうから、この手の商法にはいささかうんざりするところもある。しかし、ブートレックのライブ盤で演奏されていた曲なんかは全部入っているのを見ると、あのライブの選曲はそういういきさつだったのか、などと考えるのは楽しいですね。5月の発売だそうですが、Apple Musicへの登場を待ちます。

David Crosby, “Oh, Yes I can” (1989)

CSN&Yといえば、Neil YoungとかStephen Stillsのカラーが好きな人が多いのでしょうが、ワタシとしてはどうにもCrosbyが気になります。それは”Guinnevere”であったり、”Deja Vu”であったりという、幻想的な曲調によるものです。

しかし80年代のCrosbyは銃と麻薬で問題行動が多く、82年のCSN再結成のツアー中に拳銃不法所持で逮捕されたり、85年には8ヶ月を獄中で過ごしたりしていたようです。その状態から回復した1989年に発表されたのが本作品です。

まず一曲挙げるとすれば、タイトル曲の10.“Oh, yes I can”。バックグラウンドボーカルはJames Taylorらしい。全曲スキャットで通してしまう9. “Flying man”はフュージョンっぽい不思議な曲だなと思うと、ギターがLarry Carltonだったりする。

今は亡きMichael Hedgesがギターを弾いている5. “Tracks in the Dust”, 11.“My Country ‘Tis of Thee”も、なかなかです。

James Taylor, “Dad Lives His Work” (1994?)

Lovesじゃなくて、Livesとなっているのがポイント。81年の”dad loves his work”ツアーでのアトランタ公演をCD化した、よく分からない一枚。イタリアの怪しいレーベルから出ているのだが、住所など連絡先までしっかり入っている。やっぱりブートとして扱うべきなのだろうか?Dan Dugmore, Waddy Wachtel, Leland Sklar, Rick Mrotta, Don Grolnickと、いつも通りのすごい面子が揃っている。

Jackson Browne, “Running on empty” (1977)

ライブ収録が多いのだが、ライブ盤と言うよりは、ロードムービーの音楽版という感じだろうか。タイトル自体は、車のガスタンクが殆ど空の状態で家とスタジオを往復していた、というところから来ているらしい。

表題曲の“Running on empty”から涙ものなのだ。ピアノでロック弾き語るのが、なんともいえずカッコいいのだ。“The road”もDavid Lindreyが泣かせてくれる。“The load out”のJacksonとDavidの絡みも、ずっしり重い。と思っている間に音がだんだん厚くなってきて“Stay”へ流れ込んでいくのだ。Rosemary Butler(「幻魔大戦」のテーマ曲を歌っていた)の絶叫もすごい。

Crosby, Stills and Nash東京公演@NHKホール(1991/4/22)、東京厚生年金会館(1991/4/25)

1981年にCSNを聴き始めてからちょうど10年。来日が決まったときは狂喜乱舞しました。東京公演を二日見に行ったのだが、一日目はStillsの調子がいまいち、二日目は絶好調と波の激しさを見せていた、しかし、とにかく素晴らしかった。「聴く人」としての原点を、そして音楽からは切り離されて存在できない自分の在り方を確認した二日間。ライブで物販にほとんど手を出さないワタシですが、このときのリーフレットは手元にあります。

Crosby, Stills and Nash, “Crosby, Stills and Nash” (1969)

CSNとしてのデビュー盤。確か、”4way street”を先に聴いてから、こちらを後から聴いた。かなりの曲は事前に知っていたわけだが、LPに針を落とした瞬間から、スタジオ録音での1. “Suite: Judy Blue Eyes”のDADDADの変則チューニングと、圧巻の三度コーラスのにいきなり打ちのめされた。4. “You Don’t Have To Cry”, 8.“Helplessly hoping”もいい曲だね。

意外にはまるのが、Crosbyの3. “Guinnevere”。すごく好きな曲なんだけど、いかにも薬でラリってますという感じの曲で、他人にも理解されにくいのが難点。確かにこれに聞き入る高校生ってのは、傍から見ていてやばい存在だったかも。

GAROライブ@江古田マーキー(1983/07/07, 07/09)

1983年春に大学入学のため札幌から東京へ出てきた。北海道にはない梅雨が天敵だった。そんな時期、丁寧に読んでいた「ぴあ」にGAROの再結成ライブがあるとの記事を見た。西武池袋線に初めて乗って、行ってきました江古田マーキー。蒸し暑い中、列に並んで開場を待った記憶がある。
この再結成は、マークこと堀内護とトミーこと日高富明によるもので、ボーカルこと大野真澄は参加していない。しかしそれでも、アコースティックギターワークとコーラスは素晴らしかった。彼らはそのあと何回かマーキーでライブをやったようだ。
しかし、それも日高さんが1986年に亡くなって終了。NHK-BSのフォーク番組なんかを見ていると、「もし日高さんがいたら、GAROもこういう番組に出ていたかもしれないのになあ」などと思う。

はっぴいえんど、「風街ろまん」(1971)

わたしとしては、二枚目が最高傑作じゃなかろうかと思う。3.「風をあつめて」、7.「夏なんです」などの細野さんのボーカルが好き。高音でのボーカルが取れないことを苦にしていたらしいのだけれども、この頃デビューしたJames Taylorを聴いて開眼したらしい。

8.「花いちもんめ」もすごくいい曲だ。松本さんの新潮文庫から出ている小説なんかを読むと、その背景がわかる。実体験はないけれど、昭和30年代の東京の香りがぷんぷん漂うね。

はっぴいえんど、「はっぴいえんど」(1970)

通称ゆでめん。高校時代に中古盤がなかなか入手出来ず、再発の新盤をどきどきしながら購入したのを覚えている。

7.「12月の雨の日」が素晴らしい。音の作りはまったくBuffalo Springfield(ついでに言うと、LPのライナーノーツもBuffaloの”again”そのもの)。それに絶妙としか言いようのない松本さんの歌詞が乗るのだ。 「水のにおいが眩しい通りに」 なんて、これはもう絶対松本さんにしか書けない代物だ。

3.「しんしんしん」は細野さんが歌っているが、これも私のiTunesでは五つ星。9.「朝」もいい曲。

一方で、はっぴいえんどの代表曲と語られることも多い、大滝詠一が歌う1. 「春よ来い」も確かに好きなのだけれども、はっぴいえんどの本領では無いような気がしている。

America, “America” (1971)

これがデビュー盤で、もっとも有名な一枚でしょう。“A horse with no name”(邦題「名前のない馬」)は最大のヒットだが、曲自体は大して面白いものでもなく、そのギタープレイのみに興味がいってしまう。「砂漠を馬で行く」というイメージが、サハラ砂漠のような砂漠しか思いつかない当時の私にはどうにもイメージできなかったが、アリゾナに住んでみて、「ああこういうことなのか」と思った。西部劇の世界を連想するのが正しかったということだ。

“riverside”とか“Three Roses”はアコースティックギターのカッティングが心地よい曲。こういう世界はAmericaが開いた世界じゃないかなあ。あと、“I need you”は、歌詞がどうにも甘ちゃんではあるが、いい曲じゃないかと私は思う。“Children”などは、CSN&Yの”Teach your children”を後追いする世界で笑えるね。

America, “Homecoming” (1972)

彼らにとっては二枚目のアルバム。私にとっては最初に買ったアルバム。中古レコード屋で買ったのだが、貧乏高校生だった故、「外れだったらどうしよう」という不安がいっぱいだったのを未だに覚えている。しかし、これが大当たりだったのだ。

なんと言っても、しょっぱなの“Ventura Highway”の、ギターのイントロが強烈。いかにも70年代カリフォルニアサウンドという感じで、涙ものだ。このイントロは、何年か前にJanet Jacksonが”Someone To Call My Lover”でイントロだけをぱくっていたので、原曲を知らずとも耳覚えがある人が多いことと思う。

“To each his own”“Only in your heart”もピアノのイントロが印象的な曲。“Don’t cross river”はDan Peekの曲だけど、曲の作りといい、声質といい、まさにNeil Youngなのだ。その他には、“California revisited”あたりがおすすめ。生ギターを弾く人には一度は聞いてもらいたいアルバムだ。

アースボイスコンサート@武道館 (1992)

武道館で大規模な環境系のコンサートがあったことがある。新聞やぴあ等の前宣ではJames Taylorの出演を前面に押し出していたのだが、行ってみるとJamesの出番は数曲、あとはギタリストのLee Ritenourの独壇場だった。ワタシは大いに怒り狂ったのだが、会場から出てみると他にも怒り狂っている人がいて安心した。

今になって調べてみると、Michael McDonaldがいいパフォーマンスしてたりするんだけど、James Taylorの名前がさっぱり出て来ない。Ivan Linsもいたはずなんだけど、やっぱり検索にかからないなあ。

James Taylor, “Sweet Baby James” (1970)

2012/08/24 渋谷TSUTAYA

James Taylorはデビュー盤をBeatlesのアップルレコードから出しているのだが、これはアメリカでの再デビュー盤。大学に入ってすぐの頃、サークルの先輩からテープを借りてダビングさせてもらったのだが、アルバムを通して聴くなんてことはここ20年以上は無かったな。

さて70年代Singer-songwriterものが大好きなワタシにとっては、James TaylorはJackson Browneと並ぶ神なのです。このアルバムのしょっぱなに来ている1.“Sweeet baby James”は、SSW時代を開いた一曲。5.“Country road”、8.“Blossom”あたりは、典型的なJames Taylorの音。

このアルバムで特筆すべきは7.“Fire and rain”でしょう。後に彼は”That’s why I’m here”(1985)の中で、
“Oh, fortune and fame’s such a curious game
Perfect strangers can call you by name
Pay good money to hear fire and rain
Again and again and again”
と歌うのですが、複雑な思いを持ちながらも自己の代表作だと認識しているのですね。その歌詞については諸説あるらしいのですが、下の記事が一番理解の助けになったかな。

http://www.snopes.com/music/songs/firerain.asp

Neil Young, “After the gold rush” (1970)

  1. Tell Me Why
  2. After The Gold Rush
  3. Only Love Can Break Your Heart
  4. Southern Man
  5. Till The Morning Comes
  6. Oh, Lonesome Me
  7. Don’t Let It Bring You Down
  8. Birds
  9. When You Dance You Can Really Love
  10. I Believe In You
  11. Cripple Creek Ferry

アコースティックロックの原点みたいなアルバムです。かつ、Bluegrass的な要素もあって、ワタシ的には素晴らしい。

CSN&Yが”Deja vu”を出した1970年のソロ作品。46歳になった昨年に、初めてアルバムを通して聞いた訳ですが、ほとんどの曲を知っていた。CSN&Yのブートを随分聴いていたのだけれど、それらにソロ曲が多く収録されてたからでしょう。それもある意味、CSN&Yのカラーですね。

4. “Southern man”と7. “Don’t let it bring you down”は、翌年に出たCSN&Yのライブアルバム”4-way street”に収録。

3.?“Only love can break your heart”はカントリーっぽいワルツで、後年のEaglesの”Hollywood Waltz”なんかに繋がっていく世界。1.?“Tell me why”, ?2. “After the gold rush”,, 8. “Birds”あたりも好きな曲です。

 

Sneaker続報

MySpaceのMichael Carey Schneider(SneakerのVo. Kbd.)のページを発見。「リクエストがあれば、2枚のLPジャケット写真の画像、ライナーノート、歌詞カードなどの挿入物のコピー送ります」という記述があったので早速お願いしたところ、即日それらのものを送っていただきました。感謝感謝です。こんなことってあるんですね。

また、MySpaceのSneaker Songs- Michael Carey Schneiderでは、Sneakerの代表曲をストリームで聴く事が出来ます。Sneakerになじみのない人は、こちらも是非聴いてみて下さい。

Sneaker, “Loose in the world” (1982)

本日、iTune Music Storeにて購入。このページです。

さて、このSneakerは、80年代初頭に2枚だけのアルバムを残した西海岸のAORバンド。スタジオミュージシャンたちが組んだバンドという意味では、TOTOあたりと共通しているでしょうか。この”Loose in the world”は、彼らの二枚目。プロデュースはDoobie Bros.のJeff Baxter。一枚目からは、”More than just two of us”という大ヒット曲が出ていますが、このアルバムはそれほどの商業的な成功は収めませんでした。しかし、これが良い曲揃いなのです。ワタシがこのアルバムにはまったのは、たしか数年後の85,6年あたりだったと思いますが、それこそテープがすり切れるほど聴いたものです。もう20年もこのアルバムを聴いてないはずなのですが、どの曲もはっきりくっきり記憶している。こんな一枚がダウンロード購入出来てしまいようになったことに、ひたすら感動なのです。

1. “Believe Me Tonight”は、いかにも西海岸な快活な一曲。アナログシンセのぎらぎらした音の使い方がこの時代らしいですね。2. “Quit Crying”のアコギのフュージョンっぽいソロは好きだったなあ。いかにもオベーションの音なんですよね。5.“Never Get Over You”も、いいピアノバラード。 “More than just two of us”の二匹目のどじょうを狙ったっぽいところはあります。

6. “Where You Gonna Run”のリズムの刻みはレゲエっぽいですね。こういうところから、このアルバムと夏という季節が、頭の中で結びついてしまうのです。10.“Nothing from you”もいい曲。ギターのアルペジオが単純なんだけど非常に印象深いAメロから、いかにも西海岸なサビに流れ込む作りが秀逸。アルバムを締める11. “I can’t imagine”も、いいバラードです。

  1. Believe Me Tonight
  2. Quit Crying
  3. Before You
  4. The Fight / Voices
  5. Never Get Over You
  6. Where You Gonna Run
  7. Pour It Out
  8. Someone To Blame It On
  9. Did You Order One
  10. Nothing From You
  11. I Can’t Imagine

“Believe Me Tonight”のYouTube動画↓

Ma・Ma・Doo!!/フルーツシャワーレディ (1981)

ご無沙汰しております。震災以降は初めてのカキコミになるのですね。いろいろ思うことはあるのですが、それは置いておいて。。。

狂喜乱舞してしまう動画を発見してしまいました。GAROの日高富明さんが解散後に結成したHRバンド、Ma・Ma・Doo!!の「フルーツシャワーレディ 」です。高校生だった頃、TVのCMで使われていたのを聞いて気に入って、FMでエアチェックしたカセットも持っていましたっけ。GAROにのめりこんだのはその後で、これが日高さんのバンドだったなどとは当時は知らなくて。

随分音源を探したのですが、アルバム化されなかったために入手出来ずに四半世紀くらい?久々に聴いたこの曲は、やはり気持ち悪いほどのさわやかさでした。

このバンドの活動前後について、素晴らしい資料がありました。↓
MAMADOO!!

have a happy holiday

小田和正さんの「クリスマスの約束」は、ファンではないものの、つい毎年見てしまう番組です。昨日の放映のみどころ(ききどころ)は二カ所。

一つは、山本潤子さんが歌ったハイファイセット時代の名曲「冷たい雨」。

もう一つは、ガロの「美しすぎて」。これの元ネタは、ライブ盤に収録されたバージョンだと、ワタシにはピンと来ました。以前にも一度紹介しているのですが、再度どうぞ。↓

Pat Metheny Group, “First Circle” (1984)

名盤です。その割には、カセットの時代から更新してなくて、改めて聴き直してみると「なんでこんな重要作品を更新してなかったんだ?」と思う一枚。

“Yolanda, You Learn”, “The First Circle”, “If I Could”が続く辺りは圧巻。80年代半ばにライブに通ったワタシ的には非常にはまります。”The First Circle”のスチール弦と、”If I could”のガッド弦のコントラストが何とも言えないのです。

最後の”Praise”は、題名通りに賛美歌テイストがちょっと入った曲。アコギのカッティングが非常にカッコ良い。好きだなあ。

2010/08/10 渋谷TSUTAYA

Journey, “Escape” (1981)

言うまでもなく、80年代アメリカンハードロックの金字塔と言えるアルバム。自分自身が、このアルバムからの何枚目かのシングルの頃に洋楽を聴き出したので思い出深い。

何と言っても、このアルバムピカイチは、未だにCMなどで多用されている”Open Arms”。ロックバラードの名曲として、普遍の価値を持つ一曲と思う。

“Don’t Stop Believin'”, “Who’s Crying Now”あたりも、記憶の中で重要な位置を占める曲。やはり必聴盤なのです。

James Taylor/ “Walking man” (1974)

評論家には酷評され、売り上げもイマイチだったというこのアルバム、私は結構好き。 プロデューサーはNYのフュージョンシーンを牽引したギタリストのDavid Spinnoza。いかにもスピノザの音だなあ、というところが随所にある反面、Jamesの歌がとても優しい。70年代前半の洗練された音の代表格みたいな仕上がりじゃないでしょうか?

タイトル曲、1. “Walking man”は、ビルボードチャートにさえ入らなかった曲らしいですが、とてもいい曲です。3. “Let It All Fall Down”, 5. “Daddy’s Baby”, 6. “Ain’t No Song”, 7. “Hello, Old Friend”, 10. “Fading Away”も佳曲。

フィンガーピッキングの名手として知られる、ギタリストとしてのJames Taylorの良さが目立つアルバムからもしれません。

GARO, 「美しすぎて」(1973)

「学生街の喫茶店」で知られるガロの、いわば陰に押しやられた名曲です。

この作品は、もともとスタジオ録音バージョンがA面曲としてシングル発売されました。その際のB面曲が「学生街の喫茶店」。なぜかB面曲の方の人気が沸騰し、ついにはA面、B面が逆転して再発され、バカ売れしたという代物です。類似テイクは、彼らの2枚目”GARO2″にも収録されていますが、はっきり言ってこれはつまらない。(実はシングルとLPでもテイクが違うそうなのですが、えとせとらレコードのサイトに詳細がありますので、ご覧あれ)

今回特にご紹介させていただくのは、1973年発売のLP “GARO LIVE”に収録されたテイクです。アコギとコーラスだけによる、CSN&Yフォロワーの真価を発揮した、まさに美し過ぎる曲なのです。

現在最も安直な入手法は、SONYがやっているダウンロードサイトmoraでの購入です。CD-Rに一度落とさないとiTunesに読み込めないという面倒くささはありますが、アコースティックロックファンの方は是非是非聞いてみてください。必聴です。

 

「情熱大陸」〜松本隆さん編

80年代初頭、僕は中森明菜・河合奈保子派で松田聖子はキライな存在だった。しかし30年近く経ったいま、むしろ松田聖子の曲の多くをはっきり覚えている。「顔や存在は覚えているけど、歌の中身まで思い出せない」アイドルと、「むしろ歌を覚えている」アイドルとが分かれてくる、その要因はまぎれもなく曲の力だ。この一連の作品は、作詞家松本隆と作曲家筒見京平コンビによるもの。この組み合わせが最初に飛ばしたヒットは、太田裕美さんの「木綿のハンカチーフ」であるのもよく知られた事実だ。

3/15(sun)放送のTBS「情熱大陸」が、この松本隆さんを取り上げていた。動く松本隆さんをこんなに長い時間見たのははじめてで非常に新鮮だった。「不自然なことは絶対にしない」という作詞にあたっての姿勢が徹底されていて、むしろ50代後半になってその姿勢を貫けることの方が不自然にも思え、面白いなあと思いながら見ていた。

番組での取り上げ方では「不世出のラブソング書き」みたいなポイントが重視されてたんだけど、僕はむしろラブソングではない、はっぴいえんど時代の松本さんの詞が好きだ。「風街」系の情景描写、あれは絶対他の人にはできないもので、あの世界を知るか知らないかで、東京という街の捉え方ががらっと変わってしまうような代物だ。鈴木さんがクスリで捕まってしまいはっぴいえんどのCDが販売中止になったりと、ちょっとイヤな流れが最近あったけれど、ちゃんとはっぴいえんど時代についても番組中で言及されたのはうれしかったな。

ところで、wikiを読んでみると、松本さんは青南小学校卒業なのだね。学生時代、青山の路地裏の学習塾でバイトしていて、ここの生徒や卒業生を何人か教えたことを思い出した。僕が東京に来た80年代前半には、駄菓子屋も路面電車も消えていたけど、当時の光景はやはり僕にとっての風街だ。

Glenn Frey, “Solo Collection” (2002)

5. “The one you love” (放題:「恋人」)だけを聴きたかった。本当は、この曲が収録されたオリジナル盤[“No fun around” (1982)]を探していたのだけれど、なかなか遭遇しない。そこでTSUTAYAで借りたのが、このベスト盤。他のベスト盤ではライブバージョンが収録されていたりするので要注意。

文句なしに、ロックバラードの秀作です。この曲が出たのはイーグルス解散で、Glenn FreyとDon Henryがソロアルバムを競うように出していたころ。ちょうどこの曲あたりで私は洋楽を聴きだすようになったのでした。

James Taylor, “JT” (1977)

名盤です。一番印象深いのが映画「FM」のサウンドトラックでも使われていた、1. “Your smiling face”(邦題:「きみの笑顔」)。AORっぽいアレンジが素晴らしいのだ。 2. “There we are” , 7. “Handy man”あたりも素晴らしい。この三曲って、”dad loves his work”の頃にNHK-FMでJames Taylor特集があって、その時にかかった組み合わせじゃないかと思う。エアチェックしたカセットテープが擦り切れるほど聴いたんで、さすがに頭に刷り込まれたかな。

その他、10. “Terra Nova”は当時の奥さんのCarly Simonとのデュエット。9. “Looking For Love On Broadway”もいい曲です。

ふきのとう、 「初夏」 (1975)

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今日の横浜は天気が非常に良かったので、この記事は的外れの気もするのだけれど。本州が梅雨のこの時期、故郷の札幌は最も陽気がいい季節で、とても帰りたくなる。ふきのとうのこの曲は、札幌の短い夏を題材にとった曲で、何故か心の奥底に張り付いているのだ。ふきのとうは、北海学園大学のサークルから出てきたフォークデュオで、まさにこの曲はご当地ソング。(他の地域ではどうだったか知らないが)札幌のNHKでは、この曲がバックに流れた札幌の映像をスポット的に放映してた記憶があり、その影響なんじゃないかと思う。

歌詞に現れる「かに族」も消えて久しく、「地下街はいつも都会の顔して、狸小路を田舎扱い」と歌われた地下街も、最近ではなんとなく薄汚れた感があり、商圏の中心は札幌駅周囲へと北にシフトしているようだ。地下鉄を筆頭に、オリンピックで何もかもが真新しかった当時の札幌が思い出されるのだ。

America, “History: America’s Greatest Hits”(1975)

ビルボードのアルバムチャートで3位までいった、1-4枚目のアルバムからのベスト盤。佳曲揃いなので、特にマニアな人でない限りは、1-4枚目をバラ買いせず、この一枚で済ませるのが正解ではないだろうか?他のアルバムと比較して何より嬉しいのは、安定してCD市場に供給され続けているというメリット。

Pat Metheny, “Watercolors” (1977)

Pat Metheny名義ながら、Lyle Maysと組んだ最初の作品。もう30年も前のアルバムになるんだな。

Jazzを解さない私としては、1. “Watercolors”, 4. “Lakes”の、二曲が好き。透明感あふれるというか、ドビュッシーっぽいというか。5. “River Quay”も結構好き。7. “Sea Song”のLyle Maysのピアノっていうのは、いかにも彼の色が出ているね。

学生時代の短い期間、遠距離恋愛というのに没頭した時期がありました。電子メールなんてない時代だから、便箋10枚を超える手紙が週に一度くらい行き交ったわけだが、彼女のこのアルバムに関する感想は、「さらりと流れてしまった」だったのを強烈に記憶している。「綺麗っぽく作っただけで、記憶に留まるような引っかかるところがない」と言いたかったのだと思うし、多分それは正解なのだろう。これとは別に、研究室の先輩はPat Methenyを「環境音楽だよね」と総括していた。これもきっと正解。

なのに、20年以上経った今もこのアルバムを聴いている私。騙されやすいってことかね。

America, “Silent letter” (1979)

Capitalレーベル移籍後第一弾、Dan Peek脱退後の初デュオ作品にして、George Matrinがプロデュースした最後のアルバム。めちゃくちゃ面白いわけではなく、かと言って箸にも棒にもかからないという不出来でもない、微妙なアルバム。

2. “All around”のコーラスは、ちょいとママス&パパスっぽい空気だろうか、心地よい。6. “Foolin'”は、西海岸っぽい乾いた音が心地よい。4. “1960”, 9. “All my life”あたりのG. Beckleyの甘ったるいバラードには毎回騙される。5. “And Forever”みたいな、D. Bunnelのちょっとおかしなコード感覚の生ギター曲も実は結構好きだったりする。

Van Halen, “1984” (1984)

(最初の)David Lee Roth時代の最後を飾る、芸のないタイトルのヒットアルバム。

言うまでもなく、代表曲は2. “Jump”。全米No.1ヒットである。Oberheimのアナログシンセのイントロが印象的。当時の御茶ノ水の楽器屋の店頭では、みんながこのフレーズを弾いていた。PVでは、Davidが飛び跳ねてました。

今になって聴き直してみて面白いと思うのが、3. “Panama”。重厚なリズムセクションと、単純ながらEddieにしか出せない音のギターのリフの絡みが面白く思えるのです。

America, “Harbor” (1977)

オリジナルアルバムとしては7枚目、Dan Peek脱退前のトリオとしての最後の一枚にして、Warner Bros.レーベルから発売された最後のオリジナルアルバムでもある。ハワイ録音で、ジャケットが印象的。商業的には大成功とはほど遠かった一枚だが、私としてはとても好きなアルバム。

1. “God of Sun”の音の枯れ方がなんと言っても素晴らしい。単調なリズムを刻み続けるピアノと、G.Beckleyのリードボーカル、いかにもアメリカなコーラスワークと文句ないのです。4. “Political Poachers”も好きな曲だ。5. “Sarah”は、Beckleyっぽい甘ったるい曲だけど、いいんだよね。9.“These Brown Eyes”はPeekの曲でなんだか記憶に残ってる。

1曲目を除けば決め手となる曲もないのだが、ハワイ録音のせいだろうか、ストリング仕立てをちょっと控えてアコギバンド回帰してるからなのか、音の抜けがよくて、好きな仕上がり。まあまあ、おすすめです。

America, “Holiday” (1974)

Americaの四枚目。この作品からプロデュースが(The Beatlesを手がけた)George Martinとなり、ストリングを加えたアレンジなどの新趣向が出てくる。商業的に成功した五枚目の”Hearts”の布石と捉えるといいのだろうか。名盤と言える出来ではないけれども、個人的には好感を持ってるアルバム。

オズの魔法使いからヒントを得ている2. “Tin man”, 4. “Lonely people”が全米トップ10入りした二曲。前者は以前からのアコースティックギターバンドとしての色と、George Martin色がうまくミックスした曲で結構好き。ちょっと変わった音作りの 7. “Hollywood”や、アコースティックギターとピアノの絡むイントロが印象的だった10. “Old man took”も記憶に残っている曲。他には、3. “Another try”、9.“You”あたりも好き(甘ったるさがちょいと気にかかりますが)。

John Cougar, “American fool” (1982)

イギリスのニューウェーブ勢がチャートを席巻した1982年に、ソリッドなアメリカンロックで売れたたのがJohn Cougarだった(その後、John Cougar Mellencamp, John Mellencampと名義は何度か変わる)。何枚かパッとしないアルバムを出したあとのブレークスルーだったようだ。

1. “Hurts So Good”はビルボードの最高位が2位らしい。今聞くと非常にいいなあ。2. “Jack and Diane”は、ビルボードで 1位まで上り詰めた曲。イントロが、もろに80年代前半のアメリカンロックっぽくていいよねえ。この曲のアコースティックギターの使い方が、ものすごく好きだった。wikipediaによると、本人あんまりこのアレンジは好きではないようだけど。5.“Can You Take It”、 8. “Close Enough”あたりも好きだった。TSUTAYAで借りて20年ぶり以上に聴いたわけだけど、結構このアルバムの曲は(シングル的には売れなかったものまで含めて)覚えてるもんだな。

Jackson Browne, “For everyman” (1973)

Jackson Browneの二枚目にして、初期の最高傑作。本作に加わったDavid Lindleyは、以降JBの作品に欠かせないキーパーソンとなる。アルバムは、The Eaglesのヒットとして知られる1.“Take it easy”から始まる。ドラムが16ビートを刻んでいるところ、David Lindleyのスライドギターが効果的に使われているところが、がイーグルスバージョンとの大きな違いか。4. “I though I was a child”もSSWとしての本領を発揮した名曲。5. “These days”はJBの曲の中でも最も好きな曲の一つ。最初に触れたのは、New Grass Revivalによるカバーバージョンでしたが。6. “Redneck friend”はあまり好きな曲ではないが、キーボードがElton Johnだってのが特記事項。9. “Sing my songs to me”も佳曲。タイトル曲でもある10. “For everyman”は、David Crosbyへのメッセージとして書かれた曲。everymanは「どこにでもいる当たり前の人」と訳すらしい。「この場に踏み止まり生きていく」ことを、内向きな表現ながら、強い社会的メッセージを発した曲だそうだ。

GARO, “GARO” (1971)

携帯に舞い込んだ渋谷・TAUTAYAのレンタル半額キャンペーン。ここは以前から狙っていたブツをまとめ借りなのだ。で、これは名盤の誉れ高いGAROのファーストである。数年前に出たボックスものも買いぞびれ、中古屋では10年近く探し回っても遭遇せず、という逸品。レンタル屋で借りれたなんてね。自分の間抜けさ加減を呪うのです。

このアルバムとの出会いは高校時代に遡る。CSN&Yで洋楽に目覚めた僕は、ほどなく和製CSN&Yの異名をもつGAROにたどりつく。もちろん「学生街の喫茶店」なんかで知ってはいたのだが、アコースティックロック色が強かった一枚目の存在は知らずにいたのだ。同時期に、富澤一誠著による「失速〜ガロが燃え尽きた日」という本も店頭に並んでいた。この作品は、今に至るまで議論の多い一冊だけれども、間違いなく僕をGAROへと導いた一冊だった。とは言っても、80年代初頭には既に廃盤になっており、あちこち探して北18条駅の北大教養部そばにあった中古レコード屋でLPに遭遇したのは、高校三年の夏だったろうか。予備校の夏期講習帰りかなんかだったと思う。この一枚は、LPを大量に処分したときも生き残り、未だに手元にある。でも、プレーヤーがないんだけどね。

さて家に戻ってLPに針を落とすと、そこには邦楽とは思えない世界が広がっていた。1. 「一人で行くさ」の、イントロでのアコギの絡み、いきなりの三度コーラス、これはCSN&Yの”Deja vu”とか、Americaの”Homecoming”に針を落としたときと正に同じ感覚で、すっかりやられてしまった。この一曲は、GAROの曲としては最も好きな曲のひとつだ。4, 「何もかも遠くに」あたりは、Stepehn Stillsっぽいよねえ。6. 「暗い部屋」は、あまり好きではない曲調なのに、なぜか深く囚われてしまった曲。8. 「小さな恋」は、当時はそのわかりやすさが好きだった。今思えば、甘ったるすぎるけど。9. 「地球はメリーゴーランド」は、今でも好きだなあ。Bee Geesっぽいんだよね。

1983年に江古田マーキーでの堀内・日高二人だけの再結成ライブには行ったが、三人揃っての再結成は日高さんが他界したことであり得ないことになってしまった。久々に聴いてみて、黎明期の日本のアコースティックロックを代表するバンドであることを再確認。はっぴえんどほど後世にインパクトを与え続けられるグループではなかったかもしれないけど、好きだなあ。洋楽で言えば、AmericaとかBreadとかと似たような位置づけですかね。

Steve Morse Band, “Coast To Coast” (1992)

Steve Morse Bandのアルバムの中で、最も好きな一枚。それを決定付けるのは、“The Oz”。ロックインストというよりはフュージョンっぽい曲で、速弾きではなく、むしろコードワークで勝負の一曲。単純なんだけどすごくすごく格好いいギターインストで、個人的には忘れ難い。2:10くらいのところのブリッジというか、Cメロというかも格好いいんだよなあ。

いつも通りの速弾きロックインストの1. “User Friendly”, 2. Collateral Damageも、もちろん格好いいのです。

Christopher Cross, “Christopher Cross” (1979)

邦題は「南から来た男」。言わずと知れたAORの珠玉の名盤。透き通ったハイトーンボーカルがもてはやされたのは、これと前後するAir Supplyのヒットなんかとも共通するところがあった。8. “Sailing”が特に素晴らしい。 “Never Be The Same”もやはり名曲。

80年代前半に僕が洋楽を聴き始めた頃、僕が聞いていたのは60年代後半もの。その時点からわずか15年遡る程度でしかったものを、えらく昔のものを聞いている気になっていた。いまさらながらこのアルバムが30年近くも前のものになるというのにショックを受ける。

The Doobie Brothers, “The Captain And Me” (1973)

大学時代、Eaglesは死ぬほど聴いていたが、Doobieはさっぱり。デビュー盤であるこの一枚を聞いて、単なる食わず嫌いだったことを思い知らされる。おそらく、洋楽を聴き始めた頃は、Micheal McDonaldのソロが非常に売れていた頃で、(後期の)ちょっとむずかしめのサウンド=Doobieっていう思い込みがあったのだと思う。この一枚をツタヤで借りてきたのだが、失われた20年を呪うような内容だった。

2.“Long Train Runnin'”、ひたすらギターが格好いいねえ。3.“China Grove”も言わずと知れた名曲だ。5.“Clear As The Driven Snow”みたいな、いかにも西海岸って音もいいなあ。こういう曲があることを知っていれば、見方はすっかり変わっていたはずなのだ。タイトル曲である10. “The Captain And Me”のコーラスワークも、教科書的な三度コーラスながらすごいなあ。Eaglesが「コーラスではDoobieに絶対勝てない」と思っていたというのが納得できる。

Journey, “Frontiers” (1983)

高校卒業の春を猛烈に思い出すアルバムだ。アメリカ発売が2月で、日本発売は5月だったとwikipediaにはあるのだけれど、ベストヒットUSAなんかでは早くからオンエアされていたせいだろうか?

1. “Separate Ways (Worlds Apart)”が売れていました。ディスコでこの曲ががかかっていた記憶があるんだけれど、あれは札幌だったのか?東京だったのか?5. “Faithfully”(邦題:「時への誓い」)は、いいロックバラード。ロードムービーっぽいビデオクリップだったのが思い出される。2. “Send Her My Love”も耳にこびりついてる感じなんだよなあ。ハードロック趣味ではなかった僕の記憶にさえ残るのだから、やはり名盤なのでしょう。

The Eagles, “One Of These Nights” (1975)

イーグルスがハード路線へと舵を切り出した作品。でも結構好きで、大学時代に良く聴いていた(もちろんリアルタイムではない)。タイトル曲である1. “One Of These Nights”のコーラスにはやられました。3. “Hollywood Waltz”のペダルスチールにも、はまったものだ。4. “Lyin Eyes”なんて、ウエストコーストサウンドの教科書的な乾いた音だ。5. “Take It To The Limit”は代表的なヒット曲。8. “After The Thrill Is Gone”とか9. “I Wish You Peace”も好きだったなあ。この手の音の話で盛り上がった、一緒にバンドをやっていた友の顔を思い出す。彼が亡くなってもう10年以上が経つんだな。

The Eagles, “The Long Run” (1979)

最初の解散の際に残した一枚。初期イーグルスファンの私としては、どっぷりひたる部分の少ないアルバムではあります。その中でも記憶に残るのは、やはりTimothy B. Schmitの 2. “I Can’t Tell You Why”。昔から好きな曲だ。3. “In The City”のさびの部分のコード進行も好きだったなあ。10. “The Sad Cafe”もアルバムを締めるにふさわしい佳曲。

The Eagles, “Desperado” (1973)

これが二枚目。初期Eaglesを代表する一枚。私は非常に好きです。やはり極めつけは.5. “Desparado”でしょう。ロックバラード史上に燦然と輝く名曲だ。

1. “Doolin Dalton”もいい曲。ブルーグラスあがりの私としては、2. “Twenty-One”も外せない。MuleskinnerでのClarence Whiteのプレイをぱくったとしか思えないイントロが笑える。いかにもランディマイズナーだなあ、という6. “Certain Kind of Fool”も好きな曲だ。

The Doobie Brothers, “Minute By Minute” (1978)

The Eaglesと共に70年代後半のウエストコーストシーンの双璧をなしたグループ。これは後期作品で、Steely Dan流れのMicheal McDonald色の強いアルバムだ。2. “What A Fool Believes”が傑出した名曲。このコーラスワークは、本当にすごい。タイトル曲である3. “Minute By Minute”もやはりすごい。10, “How Do The Fools Survive?”もいいねえ。音が初期Doobieほど単純ではなく、ちょっと難しいところはあるかもしれないが、AORの名盤と捉えておけばよいでしょうか。

The Byrds, “Byrdmaniax” (1971)

私のギターアイドルClarence Whiteなどの加入で大きくカントリーロック路線へ舵を切ったThe Byrdsの後期作品の一つ。1. “Glory, Glory”は、やはり名曲なんじゃないでしょうか。もう一つ言及しておきたいのが、Jackson Browneのデビュー盤にも収録されていた“Jamaica say you will”。JB版でのClarenceのギターには本当に泣けるが、このThe Byrds版もなかなかのものだ。JBファンに取っても聴く価値のある一曲。

The Byrds, “Mr. Tambourine Man” (1965)

フォークの神様Bob Dylanの曲をロック編成で演ずるというデビューの仕方で、Folk Rockという新分野を開拓したのがThe Byrds。自分が生まれた年のアルバムだと思って聴くと感慨深い。1. “Mr. Tambourine Man”は言うまでもなく彼らの代表曲。12弦エレキのイントロからして既に格好いいし、コーラス部も格好いいよね。しかし、個人的には正直ピンとくるのはこの一曲のみ。高校時代にベスト盤を聞いていた後遺症だろうか。

Buffalo Springfield, “Again” (1967)

Neil Young, Stephen Stillsを擁した’60後半の西海岸バンド。その影響は、はっぴいえんどを通じて、日本の音楽界にも色濃く残る。ロック史を語る上で避けては通れないバンドの一つ。

アルバムは、Neil Youngの“Mr. Soul”から始まる。1982年のテクノ志向で知られるいかれたソロ作”Trans”でも再演していた曲だ。2. “A Child’s Claim To Fame”あたりは、後にpocoの結成に参加するRichie Furayらしいカントリーロックナンバー。5.“Bluebird”, 9, “Rock & Roll Woman”はStephen Stillsらしい曲の作り。CSN&Y以降よりは、彼はこの時代の方が格好良かったんじゃないかな。10. “Broken Arrow”は、Neil Youngの農場の名前にもなった曲。わざとらしい組曲作りがほほえましい、いかにも初期Neil Youngっぽい曲だ。

Billy Joel, “The Stranger” (1977)

今さら何を書くまでもない大御所Billy Joelがブレークを果たした一枚。洋楽に興味なんてさらされない中学生の耳にでさえ、このアルバムからのヒット曲は容赦なく耳に飛び込んできたものだ。

タイトル曲の2. “The Stranger”はよく知られているが、何と言ってもこの一枚を代表する一曲は3. “Just The Way You Are”だろう。私のiTuneでのratingは文句なしの五つ星。ロックバラードを語る上で、歴史上欠かせない一曲であると断言できる。4. “Scenes From An Italian Restaurant”も佳曲。

Bill Evans Trio, “Waltz For Debby” (1961)

一言で言って青春の音です。雪解けの札幌でこのアルバムを教えてくれたあの人は、今も元気でやっているのだろうか?一時期ピアノ譜を買って一生懸命練習したけれど、中学時代にようやく到達したソナチネで沈没した私にはやはり無理でした。

1. “My Foolish Heart”は本当に本当に名曲だ。2. “Waltz For Debby”は、人類の宝だ。「お前が思うこの世で美しい曲を三つだけ挙げろ」と言われたら、この一曲は必ず入ってくる。4. “My Romance”もいい曲だ。筆舌に尽くしがたいというよりは、この一枚について書こうとする自体ことが失礼だと自分で思ってしまう、そういう作品。

Original Soundtrack, “FM” (1978)

FM局を舞台とした映画“FM”のサウンドトラック。映画自体は後世に残るようなものではなかったが、サントラだけはその豪華顔ぶれから生き残っているという作品のようだ。二枚組CDもの。下の通り、「ごめんなさい」と平伏すしかない選曲です。

Original Soundtrack, “No Nukes” (1979)

西海岸系のアーティストによる反原発コンサート。下に示すようなメンツなので、聞かないわけにはいかないアルバム。これは映画にもなって、東京に出たての頃だったろうか、レーザーディスクを上映する渋谷の飲み屋までわざわざ見に行った記憶がある。しかし、選曲のせいだろうか、メンツの割には正直面白くないアルバムだと今になると思う。しいてお勧めするのは The Doobie Brothers with John Hall & James TaylorというメンツでのJohn Hallの名曲、5. “Power”だ。

Woodstock, Bangladesh concert, No Nukes, Live Aid…….ロックで時代が変わると信じてられていた熱気も今は昔。

Airplay、”Airplay” (1980)

AORの名盤中の名盤と言われる一枚で、私ごときが多くを語らない方が良さそう。とにかく音作りの緻密さは完璧だ。1. “Stranded”, 2. “Cryin’ All Night”と、ゾクゾクする音の作り。5. “Should We Carry On”のようなバラードも完璧なのだ。一番好きな曲は、9. “She Waits For Me”かな。

The Alan Parsons Project, “Eye In The Sky”(1982)

これも掛け値なしの名盤。ビートルズの”Abbey road”を代表作とするスタジオエンジニアだったAlan Parsonsを中心としたイギリスのグループ。プログレ系に分類されることも多いが、このアルバムはAOR色が強い。

なんといっても、2. “Eye In The Sky”が名曲。“I am the eye in the sky looking at you, I can read your mind”なのだ。5. “Silence And I”はセイコーかどこかのCMで使われていたような気がする。10. “Old And Wise”も印象深い曲だ。

Steve Morse, “High Tension Wires” (1989)

ハイスピードな疾走系ロックインストを得意とする、スポーツニュースの挿入曲御用達ギタリストのSteve Morseであります。この当時は「元Dixie Dregs, Kansasの」で説明がついたのですが、今や「Deep purpleの」という大御所様になってしまわれた。思えば私が初めて買ったCDがこの一枚、感慨深いものがあります。1. “Ghostwind”のPat Methenyっぽさには驚いたものです。しかし一番驚いたのは、やはり8. “Tumeni Notes”のひたすらオルタネティブピッキングによる速弾きでしょう。ワンフレーズが長いのだ。ちょっと速いパッセージを入れるとか、ハンマリング・プリングで速いように聞かせるというのとは全く訳が違います。5. “Third Power”や9. “Endless Waves”は、今でも好きな曲。

Bread, “Anthology” (1985)

Breadは1970年代前半に活躍したコーラスが売りのアメリカのグループだ。これはそのベスト盤。CSN&Yっぽくもあり、Bee Geesっぽくもありだが、ロックっぽさは非常に薄い。大学時代やはりベスト盤を買って聞いて、しばらくはまった時期がある。

1. “Make It With You”は、アコースティックギターのカッティングとストリングがかぶるという教科書的なソフトロック、大好きな曲だ。この曲はビルボードで一位を記録しているらしい。10. “If”は彼らの代表曲のバラード。いろんなこと思い出してしまうんだよなあ。泣けるって訳でもないんだけど。

The Eagles, “Hotel California” (1976)

The Eaglesといえば、”Hotel California”という人が大半だろう。私はむしろ初期Eagles派なのだが、これはやはり名盤だと思う。

1. “Hotel California”のアコースティックギター・ツインリードにはやはり鳥肌ものだ。はじめてLAに行ったときは見に行きました、The Beverly Hills Hotel。改装中だったが・・・。いかにもGlenn Freyっぽい3. “The Last Resort”, 6 “Wasted Time”も好きな曲だ。8. “Life In The Fast Lane”も後期Eaglesを代表する曲。9. “New Kid In Town”もいい曲だ。このハーモニーはやっぱりすごいな。

確かにいいアルバム。しかし強く思い入れる一曲に欠けるかな、というのが総括。

America, “Hideaway” (1976)

このアルバム、絶対にLPで保有していたという自信がある。しかし、聴き始めてもまったく覚えのある曲が出てこない。とても、ヒット作”Hearts”(1975)の翌年の作品と思えない、つまらない出来。

そう思いながら聞いていると、一曲だけ覚えのある曲があった。Dan Peekが書いた10. “Today is the day”だ。この曲は好きだったなあ。

James Taylor, “at Christmas” (2006)

“Winter wonderland”, “Jingle Bells”, “Santa Claus is coming to town”, “Auld Lang Syne”(蛍の光)などの定番も入ったクリスマスアルバム。ジャズっぽいアプローチに、Jamesのアコースティックギターが絡むつくりの曲が多い。

Joni Mitchellの“River”を取り上げているのに興味を持って購入したのだが、歌詞こそ同じものの、コード解釈やメローディーラインの取り方がJoniのオリジナルのとはかなり違って聞こえて、「こうなっちゃうのかな?」というのが正直な感想。

“Baby, It’s cold outside”はNatalie Coleとのデュエット。これはなかなかよろしいです。

増尾好秋、「グッドモーニング」 (1979)

高校時代、地元札幌の民放局が深夜の映画番組のテーマ曲として“Little bit more”を使っていた。夕暮れのヨットハーバーかなんかのコラージュっぽい「動かない映像」に、この曲がかかっているという芸のないものだったが、なぜか記憶から離れないのだ。あと、このアルバムから想起されるものといえば、川原由美子の漫画かな。「フュージョン」という言葉よりは、「クロスオーバー」という言葉がしっくり来るように感じる一枚。

増尾さんは燦燦と輝くキャリアを持つジャズギタリストだが、このアルバムではメロディメーカーとしての顔を強く出している。バックの面々は、テクニックばりばりのフュージョンを展開しているのだが、増尾さんは技巧を抑えて「ギターで歌う」ことに集中しているかのようだ。聴きやすさを重視したぶん、ギターアルバムとしては物足りない部分も出てくるのだけれど、私はこの作品どうにも好きだなあ。どの曲が特に、ということもなく、全体そのままがどこか自分の一部になっているように感じられる、お勧めのアルバムです。

Livingston Taylor, “Life is good” (1988)

10年以上探していたアルバムを、ついに池袋レコファンにて発見。矢吹申彦さん画によるジャケットが当時話題になった作品だ。言うまでもなく、Livingston TaylorはJames Taylorの弟で、70年代に何枚かの作品を残しており、最近もCheskyなどから渋い作りの作品を発表している。本作は1988年に、8年の沈黙を破って発表したもの。プロデューサーにArtie Traumを迎えているというのも、私的にはうれしいところだった。

とにかくやさしい音の作りなのだ。1. “Life is good”は、根底に流れる70年代SSW的なものと、多少の黒い音の影響、そして80年代のシンセを多用したぎらっとした音が絶妙にブレンドした曲。さりげない歌詞がまたいいのだ。2. “Sing I do so well”は、Acc. Gtrのバッキングとサックスの調和がとても好きだった曲。3. “City Lights”も、非常に優しい曲。Jamesとの兄弟デュエットなんだけど、James Taylor & JD Southerの”her town too”を思い出してしまうのだ。4. “If I were you”も、抜けのいいイントロから入ってくる佳曲ですばらしい。5.”It’s love”, 6. “Make it love”といい曲が続き、バラードの名曲7. “Loving arms”が続く。9. “Glad I know your well”も心に染み入るスローバラード。“Falling with with you”も、80年代初頭っぽい音の良い曲だ。

久々にこのアルバムを聴いて、全く違和感がなく、この音がずっと体に染み付いていたってことに気づかされる。全編を通じて、構えのない自然体にも関わらず、だれたところのない絶妙の作品だと絶対の自信を持ってお勧めしたい。

「一本の音楽」 by 村田和人

一言で言えば、「旅に音楽を持ち歩くことは欠かせない」、といった内容の歌だ。この曲を聴くと痛切に思い出すのが、1995年の夏のことだ。僕はこのとき海外修行中で、この夏はイギリス南部のブライトンという町に滞在していた。ある週末、どうしても北の方に行ってみたくなり旅に出た。本当はスコットランドに足を踏み入れたかったのだけれど、夏は宿を取るのが大変だとのことで、イングランド最北端のDurhamという町で引き返してきた。Durhamの駅で南へ戻る列車を待っていたときに駅で聞いていたのがMDに入れておいたこの曲、イギリスらしからぬ暑い日だったのを痛烈に覚えている。

なんでこんなことを書いているかというと、僕も最近遅ればせながらiPod族の仲間入りしたのがきっかけだ。この曲は1983年の発売、日立マクセルのカセットテープのCMで使われていたので耳にすることは多かった。実家の弟がこの曲にどっぷりの時期を過ごしたこともあり、10年前の春に帰省したときにこの曲をMDに録音した。それが海外に出る直前のこと。今の若い人は、「一本の音楽」という言葉から何を思うだろう?メモリースティックだろうか?カセットのことだとは思わないのは確かだと思う。最近、旅(というか出張だけれど)に出ることが多い。この曲をiPodに入れて持ち歩こうと思う。カセット・MD・デジタルオーディオと、自分の関わったテクノロジーも何世代にも渡るようになってきたなと実感することで、自分の軌跡も感じてみようと思う。歌詞のように、「昨日までのわずらわしさ、破り捨ててしまえ」とはいかない現実とともに。

James Taylor, “New moon shine” (1991)

この時期はアコースティックな路線に回帰しているのが特徴。FiddleにMark O’coner, DobroにJerry Douglasなんて涙物の組み合わせだねえ。かと思うと、Breacker兄弟やSteve Gaddみたいなジャズ系の大物も登場していて、これにも驚き。

“Copperline”“The water is wide”みたいな、dobro, Fiddle付きのばりばりのアコースティックな曲、私は好きなのだ。“The water is wide”は、元はケルトのトラッドみたいだけれど、ドラマ”summer snow”でSisselが歌っていたので、そちらを覚えている人も多いのではないだろうか。歌詞にMartin Luther Kingが登場する“Shed a little light”は、メッセージ色の強い、ちょっとゴスペルがかった曲。かと思うと“Slap Leather”はロックンロール。“Like everyone she knows”では、久々にJamesの絶妙なフィンガーピッキングが聴ける。この曲ではサックスにBranford Marsalis。

まとめてみると、ちょっと散漫な感もあるが、いろいろ聴き所のあるアルバム、と言えましょう。

James Taylor, “Mud slide slim and the blue horizon” (1971)

こんな長い正式タイトルだったと今更知った私。しかし、間違いなく名作なのだ。なんといってもこのアルバムで一番好きなのが、“You’ve got a friend”だ。Carole Kingの曲で、上に書いたように彼女も自身のアルバムで演じているけれど、私はこのJames Taylorのフィンガーピッキングのギターと、ボーカルの方が好き。バックボーカルにJoni Mitchellがクレジットされてるのがちょっと驚き。

タイトル曲の“Mud slide slim”も、この時代のものとは思われない洗練された曲。ピアノとバックボーカルでCarole Kingが参加している。“Hey mister, That’s me upon the jukebox”もカントリーっぽさを出しながら、ギターとベースラインが洗練されていて絶妙の仕上がり。

余談ながら、“Riding on a rail road”での、Banjo: John Hartford, Fiddle: Richard Greeneというのが、ブルーグラス上がりの私にとっては感動もの。

渡辺美里、”Tokyo” (1990)

このアルバムを聞いたとき、なにか転機が来たのかな、と感じた記憶がある。「サマータイムブルース」「第三京浜選んだ・・・」という歌詞が出てくるのだけど、たしか渡辺美里が免許取って、自分で運転しはじめた直後だったのではないかと思う。ささいなことなんだけど、高校時代をひきずった歌からちょっと抜けたのかな、と感じたのであった。でも、この曲は未だに聴けるいい曲だ。

あともう一曲挙げておくと“Boys kiss Girls”である。歌詞はどうにも馬鹿らしいのだが、村田和人らが参加したさびの部分のコーラスワークが素晴らしいのだ。短いフレーズなのだけれど、とても強烈。佐橋さんのギターもいいね。でも。岡村靖幸の色が強く出たアルバムで、そういう意味ではちと苦手。

America, “Perspective” (1984)

これを最後にメジャーレーベルとの契約が切れた訳で、確かにこれでは売れないだろうというアルバム。

“Can’t fall asleep to a lullabye”にはJourneyのSteve Perryが参加しているので話題になりましたな。しかし、Steve Perryが参加してこのざまはなんだ?という感じだった。それほど当時はSteve Perryが参加した曲は当たったもの。

でも実は“5th Avenue”での甘ったるいGerryの歌とか好きだったりするんだなあ・・。

Joni Mitchell, “Shadows and Lights”(1980)

Jaco Pastrias, Michael Brecker, Pat Metheny, Lyle Mays等が参加したライブアルバム。これは映像作品としても発表されている。Patは当時まだ売り出し中で、JoniのパートナーだったJacoのおまけとしての参加という感はぬぐえない。しかし、ビデオは、初期のPatの映像を堪能できる貴重なものとしても嬉しい存在だ。もちろんJoniのすごさは言うまでもなし。

 

America, “Encore” (1991)

これはCDの再発が順調に行っていなかったころ、Rhinoレーベルから出たベスト盤(?)なんだが、どうも選曲は変。Warnerから出ていたベスト盤と重ならない選曲に、との配慮でもあったのだろうか?。

なぜにそう思うかといえば、Capitol時代に関しては“You can do magic”,“The border”“Survival”など、それなりに当たった曲が収録されていたのに、WarnerものはB級作品ばかり。Joni Mitchellの”Hits”&”Misses”の”Misses”のような扱いだと思って聴くと、また趣きがあるかも。CDの再発が進んだ今となっては、有り難みも薄いかもしれません。

 

James Taylor, “Hourglass” (1992)

この時期はアコースティックな路線に回帰しているのが特徴。FiddleにMark O’coner, DobroにJerry Douglasなんて涙物の組み合わせだねえ。かと思うと、Breacker兄弟やSteve Gaddみたいなジャズ系の大物も登場していて、これにも驚き。

“Copperline”“The water is wide”みたいな、dobro, Fiddle付きのばりばりのアコースティックな曲、私は好きなのだ。“The water is wide”は、元はケルトのトラッドみたいだけれど、ドラマ”summer snow”でSisselが歌っていたので、そちらを覚えている人も多いのではないだろうか。歌詞にMartin Luther Kingが登場する“Shed a little light”は、メッセージ色の強い、ちょっとゴスペルがかった曲。かと思うと“Slap Leather”はロックンロール。“Like everyone she knows”では、久々にJamesの絶妙なフィンガーピッキングが聴ける。この曲ではサックスにBranford Marsalis。

まとめてみると、ちょっと散漫な感もあるが、いろいろ聴き所のあるアルバム、と言えましょう。

Complete Set “CSN” (1991)

すべてのアルバムに深ーい思い入れがある割には、CDへの買い替えが進まないのはこのセットを購入してしまったからなのだ。CSN(&Y)の大部分の作品と、ソロ作などがてんこもりのお買い得品。これを買わずして、というセットである。

実はCSN&Yには”Human Highway”という「幻の一枚」がある。1974年にレコーディングが完了し、ハワイでジャケットの撮影までしたのに、結局発売が流れてしまったアルバムだ。Crosbyをして、「あの一枚に比べたら、”Déjà vu”なんてがきのお遊びみたいなもの」と言わせしめた作品らしい。噂には聞いていたが、別テイクがその後のCSN(1977)やCrosby and Nashのアルバムに収録されたり、一曲だけがNeil Youngのソロ作に流出した以外は、闇に葬られていた。が、このコンプリートセットには、その「蔵出し音源」が収録されているところが聴き所。このセットについているリーフレットには、その使われなかったカバーフォトが載っている。

たとえばdisc3の“See the changes”は、四人がクレジットされており”CSN”(1977)に収録されたのとは異なるバージョン。私がCSN&Yの作品として一番好きなのが、このアルバムだけに収録されている“Homeward through the haze”なのだ。Crosbyの作品なのだけれど、なんとも形容しがたく良いのだなあ。コーラスばりばりって曲ではないのだけれど、Crosbyの楽曲の力はやはりすごい。“Taken at all”も、Crosby and Nashのアルバムに収録された曲だが、StillsとYoungが参加した別テイクが収録されている。素晴らしい出来。

 

Matthew Sweet, “Altered beast” (1993)

同じ柄だが色違いのジャケットが多数用意されており、自分で着せ替えできちゃうという変なアルバム。“Life withouot you”“Do it again”みたいなスローなロックバラードはさすが、という出来。“The ugly truth”で気になってライナーを見ると、fiddle (violin)でByron Berlineが参加している。Country Gazetteにいた人なんだけど、みんな知らないだろうなあ・・。“Reaching out”では、Mick Fleetwoodがドラムで参加。これもいい曲だ。“Falling”“what do you know?”“Evergreen”とアルバムの後半にいい曲は集中している。前作ほどは、はまらない出来だが、冒頭でがっかりすることなく後半まで耐えるべし。

Matthew Sweet, “100% fun” (1995)

冒頭の“Sick of myself”のいかれた歌詞に、まず一撃を食らわされる。いいアルバムなのだとは思うけれども、どうしても“Girlfriend”には見劣りしてしまう、という感じだろうか。“We’re the same”を初めとして、アレンジとしてもよく練れていて職人技としてはいいのだけれども、ボーカルの切れがどうも悪くなっているようのが決定的なのかな、と思う。ミキシングのせいかもしれない。

 

America, “View from the ground” (1982)

久々にヒットしたのがこのアルバム。ビルボード最高位は8位。その栄華は短かったが、自分の洋楽どっぷり期と重なり、忘れ得ぬ一枚。日本版のLPは、パーム椰子と、いかにもアメリカンなコーヒーショップと、その前に停まった旧いアメ車かなんかの写真がぺらぺらした紙に印刷されていてそれが表に出るようになっており、元の地味なカバーフォトを覆い隠していたなあ。

で、最大のヒット曲はRuss Ballad提供の“You can do magic”(邦題:「風のマジック」)であった。垢抜けないプロモビデオがいかにも貧弱で、悲しい思いにひたったのを覚えている。第二弾シングルは“Inspector mills”だったと記憶しているが、これもまあまあの佳曲。

個人的に気に入っているのが、“Love on the vine”。どことなくお洒落なサウンドを、かっちょいいなあ、と思っていた。“Right before your eyes”も、Gerryの甘ったるいボーカルが印象的な曲。そして何といっても、“Jody”である。Russ Ballad提供によるこの曲は本当に好きだった。英語の不自由な高校生にも容易に理解できた甘ったるい歌詞は、ちょっとなあ、なんだけれど。ベスト盤なんかにも絶対収録されることはない曲なのだが、きれいな曲なのだ。この一曲を聴きたいがためにCDの再発をずいぶん待った。このCDはオーストラリアのEMIからの再発なんだけれど、店頭で見た時は、本当に涙が出そうでしたよ。

Matthew Sweet, “Girlfriend” (1990)

これがソロ三作目だったらしい。ひたすらに快作。レコードコレクターズとかちょっとマニアな洋楽誌では、その年のベスト盤を選ぶような企画があったものだが、かなりの評論家から一位をもらっていた記憶がある。

60年代後半から70年代前半の音を感じさせつつ、でもしっかり1990年の音なのだ。一曲目の“Divine Intervention”のギターサウンドで、しっかりトラップされてしまうのだ。“I’ve been waiting”が一番のお薦め。el.Gtrでのしつこいアルペジオに、ボーカルがかぶる。ポップなんだけど、しっかりロック。表題曲の“Girlfriend”は、なんせ歌詞が“need somebody to love”なので、「あ、Jefferson」と思ってしまうのだ。“Looking at the sun”もメロディーのきれいな曲。“Winona”は、Pedal Steel Gtr.とAc. Gtr.の絡みが印象的な、とても美しいロックバラード。“Evengeline”も、いいロックナンバー。“Thought I knew you”では、イントロのAc. Gtrの絡みは多録なんだと思うけど、わざと息が合わなかったかのように見せかけるアレンジなんか、とても考え付かないよね。“Don’t go”の60年代後半っぽさなど、もう涙ものなのだ。

とにかく外れのないアルバム。絶対の名盤。これを聴かずして、という作品。

Eggstone, “Somersault” (1994)

Swedishの男性三人組。ポップセンスとドライブ感あふれるロックを融合させたスタイルに特徴がある。私の頭の中では90年代前半のスカンジナビアシーンを代表するバンド。Croudberry Jamと重なる部分が大きいかな、と思うが、どちらが好きかと問われればEggstone!と私は答える。

これはたしか、渋谷のCISCOで買ったのではないかと思う。個人的な記憶とともに、痛烈な印象を持って思い出す一枚。“Against the sun”からアルバムは始まる。勢いだけのインディーズかと一瞬思わせられるが、Swedishにありがちなちょっとひねったコード進行と、ロックのドライブ感を失わないまましっかりポップスしているその音作りにひきつけられる。vo.の声質から、Bostonが思い出されるかな。“Hang on to your eco”のイントロなんかは、「どこのアイドルバンドだ?」と思わされるが、これもいい曲。“Good Morning”“Cornflake crown”は、いかにもswedish popsという感じのちょっとお洒落な一曲。まとめると、単純だがつぼを抑えた、いいギターバンド。

Noa, “Noa” (1994)

Pat Methenyが自らのプロダクションからデビューさせたイスラエル出身のシンガーNoa。ファーストのプロデュースを、Pat自身が手がける。何曲かはPat Metheny Groupがバックで演っている。Noaのバックグラウンドである中東の音と、アメリカンサウンドの調和が素晴らしい一枚。

Patの直接参加はバックボーカル(!)での一曲のみであるが、Lyle MaysのKeyboardが初期のPMGを思い起こさせる、素晴らしく優しい音に仕上がりっている。私のおすすめは2. “Wildflower”, 7. “Lady Night”, 9. “It’s Obvious”である。Noaの歌と、Lyle Maysのピアノ・シンセのからみがめちゃくちゃ泣けるのだ。特に初期PMGファンは必聴。

上の3曲のほかにも、10. “Desire”もおすすめ。

America, “Hearts” (1975)

シングルチャート的にも成功した5枚目のアルバム。プロデュースは、あのBeatlesも手がけたGeorge Martin。最も有名だと思われるのが、ビルボード一位を獲得した“Sister golden hair”(邦題:「金色の髪の少女」)。相変わらずの甘ったれた学園もの系の歌詞だが、音は心地よい。他のヒット曲としては、“Daisy Jane”(邦題:「ひなぎくのジェーン」)が挙げられる。個人的にはAmericaの曲の中でも最も好きな曲の部類に入る。隠れ名曲として挙げたいのが、“The story of a teenager”。なにかのサントラで使われたとライナーノーツで読んだ記憶があるが、良い曲だ。

Crosby, Stills and Nash, “CSN” (1977)

“Shadow Captain”を聴いて、えらく音が洗練されたな、と思ったものだけど、それだけ70年代は音楽が激変した時代だったってことだね。ちなみにBeth Nielsen Chapman“Life holds on”のイントロは、この曲のイントロをぱくったものとしか思われない。“See the changes”“In My Dreams”もお気に入り。

個人的にどうしても忘れられないのが、“Just a song before I go”。大学受験が終わり、大井町線の大岡山駅のホームで電車を待っているときのことだ。出来が悪くて意気消沈していたときに、追い討ちをかけるかのように商店街の街頭放送でこの曲がかかった。旅立つ人を送る内容の歌詞なのだが、こんなマイナーな曲がこんなタイミングでかかるものか?と思い、その場所には二度と戻ってこれないことを覚悟したものだ。でも、何故か受かっていたんだけどね。

Crosby, Stills and Nash, “Daylight again” (1982)

高校三年の夏休みに発売になったアルバム。予備校の夏期講習が終わってから、某大学の生協まで買いに行った記憶がある。高校一年の終わりにCSNを聞き出してからは初めての再結成だったので、狂喜乱舞したものだ。ファーストシングルが“Wasted On The Way”っで、そのチャートの動きに一喜一憂したなあ。“Southern Cross”はStillsの曲だけど、好きだねえ。これが二枚目のシングルになったのだったかな。一番好きなのは、やはりCrosbyの作品で“Delta”。わりにさわやかな側面もある、Crosby得意の幻想ムードの曲。

 

America, “Alibi” (1980)

この頃の作品は評価も低く、すっかり忘れられているのだと思うが、サウンドはけっこう心地良いのだ。Dean Parks, Waddy Wachtel, Steve Lukather, Lee Sklarなどが脇を固め、ゲストボーカルにはTimothy B. Schmidt, J.D. Southerなんかも参加している。TOTOとかJames Taylorの”dad loves his work”あたりと共通する部分があるかな。

“Survival”の枯れた抜けきるカリフォルニアサウンドが素晴らしい。“You could’t been the one”あたりの、ピアノの音やツインギターなんかは、いわゆるウェストコーストサウンドが練れ切った時代の集大成的な音だと思う(いわゆるAORですかね)。“I don’t believe in miracle”なんかもRuss Balladが提供した良い曲で、これが”view from the ground”の成功につながっていく布石となっているわけかな。

Jackson Browne, “Saturate before using” (1972)

衝撃のファーストアルバム。 一番ヒットしたのは4. “Doctor my eyes”。ワタシ的には、2. “A Child In These Hills”、5.”From Silver Lake”あたりが好き。

しかし、なんと言ってもJBが天才たる所以は、デビューアルバムの冒頭に1. “Jamaica say you will”はを持ってきてしまえるところだと思う。ピアノ弾き語りで始まる曲だが、この曲が気にいって何十回と聞いていると、三番からかぶってくる裏でかすかに聞こえているアコースティックギターのバッキングがふっと気になりだす。ピ アノ・ベース・ドラムで十分厚い音の中、ふっと聞こえてくるアルペジオは、 明らかにフラットピックでつま弾かれたものであり、「クロスピッキング」と いう単語が頭をよぎる。気になりだすといろいろな発見があるもので、 何やらベースランのような音も聞こえて、しかも全部ダウンピッキングでたたきつけているようだ。ちょっと弦がびびり気味で、特に4弦開放のDの音で顕著。妙にシンコペートしたところも耳につく。これはあの人ではないか?そう思って 聞いてみると、決め手がある。二音同時にピックではなく指で引っかけているような音が聞こえるフレーズ。この奏法は、 Muleskinnerの”Dark Hollow”の中でも聞かれたやつである。

そう。この曲のバックのアコースティックギターは、ひそかにClanrence White。The Byrdsが”Byrdmaniax”でも取り上げています。

 

Crosby, Stills, Nash and Young, “4 way street” (1971)

二枚組のLPで、札幌では中古で出回っていることもなく、「清水の舞台から飛び降りる」つもりで新品を買った。しかし、感動したんだなあ。“On The Way Home”が最高に気に入った。生ギター二本の絡みがいいんだな。元々はBuffalo Springfieldのアルバムに収録されたNeil Youngの曲なんだけど、こっちのバージョンが圧倒的に好き。同じくNeil Youngの“Cowgirl In The Sand”もいいね。“Love The One You’re With”も、こちらのバージョンの方が好きだな。

LPでは一枚目がアコースティックセット、二枚目がエレクトリックセットになっていた。このバンドのエレキの下手さには定評があり、賛否両論あると思われるが、“Ohio”“Southern man”と、私は好きだな。

Original soundtrack, “Fast times at Ridgemont high” (1982)

邦題が「初体験リッチモントハイ」というB級青春映画のサントラ。フィービーケイツが脱いでいたなあ。でも、このサントラの面子はすごいのだ。Don Felder, Don Henley, Timothy B. Schmidt, Joe WalshのEagles勢(解散直後だったのだ), The Go-Go’s, Stevie Nicks, Donna Summer, Sammy Hager(のちに Van Halenに参加)と、そうそうたる顔ぶれ。

そんな中で、Jackson Browneの“Somebody’s baby”はシングルカットされ、Radio & Recordsのチャート(テレ朝系”Best Hit USA”で採用されていた)ではトップを獲得した。なんともJacksonらしからぬ軽薄な歌詞・メロディーなのだが、好きなんだなあ。最初にテレビを通じて見た「動くJackson Browne」だったから。大学受験直前の冬のことでした。

 

Jackson Browne, “Hold out” (1980)

Jacksonにとって初となるビルボード1位獲得アルバム。私の大学一年の二学期は、もうこのアルバムにどっぷり、という時期で、忘れがたいアルバム。このアルバムがわかるようになった、ということが、自分にとってはちょっと大人になった、ということを意味する出来事だったように思う。

“hold out”のピアノとハモンドの絡むイントロから泣ける。“Boulevard”、単純ながらとてもかっこよいイントロから、上質のロックンロールへと流れ込んでいく。“Call ir a loan”のDavid Lindleyのギターも泣ける。また歌がいいのだ。そして、ピアノのイントロから始まる“Hold on Hold out”のかっこよさは、筆舌に尽くしがたい。

とにかく、色々なことが思い出され、キーボードを打つ手が止まってしまう、そういう一枚。音楽を聴くということは非常に個人的なことであって、他の人にはどうでもいい、どうにもわからない、と言っても、本人がいかんともし難い重みを感じてしまう一枚があったりするわけだな。

 

James Taylor, “Dad loves his work” (1981)

フュージョンっぽいアレンジとJamesの歌がぴったりマッチした名盤。AORの最高峰の一角を担う作品だと私は思う。しょっぱなの“hard times”から、がつんとやられる。なんでこんなにかっこいいんだろうね?続く二曲目は、私がこのアルバムで一番好きな曲。J.D. Southerとのデュエットの“her town too”(邦題は「憶い出の街」だったかな?)。これはシングルチャートでも上まで行って、よくFMでかかっていたのでよく覚えている。ギターの1~3弦のアルペジオを聴くだけで泣けてしまうのです。音が違うよね。歌詞は、離婚した女性についた歌ったものでちょっとシビアなのであるが・・。

“I will follow”なんかは、昔ながらのシンプルなアレンジで、シンガーソングライターとしてのJamesの良さが堪能できる。最後がアカペラ→ピアノのバックだけがかかってくる“that lonsome road”で締めというのも感動。

Pat Metheny, “Pat Metheny Group” (1978)

グループとしての二枚目。初期の最高傑作だと私は思う。最初の二曲が特にすごい。

“San Lorenzo”のイントロでは、ギター・ピアノ・ドラムのシンバルがなんとも言えないハーモニーを織り成す中で、ベースラインが動き出す、その音の拡がりが何ともたとえようがなく素晴らしいのである。大学院の最初の年だったろうか、夏休みの帰省中に、道東にヒッチハイクに出かけたことがある。札幌からは釧路へは夜行列車で向かったのだが、ちょうど海沿いの線路に出たあたりで朝日が昇り出した。そのときにちょうど聴いていたのがこの曲。ちょっと締まった朝の空気と、その光と、拡がりのある音が自分の中に作り出したものを、15年以上経つ今でも、忘れることができない。それ以来、気に入った景色の中にいるときは、必ずこの曲を聴いてしまう。常時携行アルバムだった。

“Phase dance”も、やはりすごい曲。これを聴いてからというもの、自分でギターを弾くのはやめよう、と思ってしまったのだ。それほど、自分にとっては決定的だったアルバムであった。

Pat Metheny Group, “Offramp” (1982)

たしか、「愛のカフェオレ」とかいう、とんでもない邦題を付けられたアルバム。このアルバムで聞き逃せないのは、James Taylorを意識して書いたという“James”。なんとも言えず優しい音で、忘れえぬ曲。最近のアルバムでも再演されていることが多く、ファンの多い曲らしい。

Pat Metheny and Lyle Mays, “As falls Wichta, So falls Wichita Falls” (1981)

Pat Metheny Group名義ではなく、二人の共作という位置付け。実は結構退屈してしまうアルバムなのだが、一曲挙げておかねばならないのが、“Ozark”。Lyle Maysの超絶テクのピアノプレーに、Patの単純なアコースティックギターがかぶる不思議な作品。ライブなどでは取り上げられこともない作品なのだけれども、私としてはPMGがらみの中ではかなりの上位に来る曲だ。

Pat Metheny Group, “American Garage” (1979)

ECMなどというヨーロッパ系のレコード会社と契約し、録音もオスロなどで行われることの多かったPMG。トレーラーハウスの並ぶこのジャケットに、「おれたちアメリカ人」という自己主張を感じてしまう。

とにかく全曲外れなし。特に、4. “American Garage“のイントロにはしびれますね。

Pat Metheny Group, “Still Life (talking)” (1987)

Methenyを狂ったように聴き出したのが86年のことだったと思う。それ以降で最初のスタジオ・アルバム。ブラジル系の音への傾斜が鮮明な時期の一枚。しかし、一番気に入っているのは、のどかにアメリカンしている3. “Last Train Home”。ドラムがひたすら、汽車のしゅぽしゅぽを刻みつつ、シタールっぽいギターシンセでPatが歌いまくるのだ。そして曲の後半でかぶってくるコーラスが新機軸。そしてフェイドアウトで汽車は通り過ぎていくのだ。1. “Minuano (Six Eight)”, 2.”So May It Secretly Begin”ともちろん素晴らしい。ラストの“In her family”も泣ける。

Pat Metheny, “Secret story” (1992)

これはPatのソロ作。しょっぱなの“above the treetops”がカンボジアサウンドで面食らうのだが、続く“facing west”は、PMG以上にPMGしているんじゃないか、と言う曲。“The longest summer”が、本当に泣ける。ピアノを弾くのはLyle Maysではなく、Pat Metheny自身。これが、ピアノであってもPatの音なのだ。これには本当に驚いてしまった。これにかぶってくるギターシンセにも、ぐぐっと来る。続く“Sunlight”も、PMGっぽいとてもきれいな曲。

後半は、Pat自身が「とにかく哀しい音にした」と言っている部分だ。しかし、“See the world”は、やはりPMGっぽい佳曲。ソロと言いつつ、PMGの面々がバックを固めた時が一番なのだ。日本人として聞き逃してはならないのが、“As a flower blooms (I am running to you)”。曲の最後でバックにひっそりとかぶってくるボーカルは矢野顕子。歌詞はちゃっかり日本語なのだ。これを楽しめるのは日本人の特権であるから、せいぜい楽しもう。

しかしこのアルバムが出た頃の雑誌のインタビューでは、Patは「PMGではやりたいことはやり尽くした。」的な発言をし、Lyleは一流ミュージシャンをゲストに揃えたこのアルバムに嫌味を言うなど、非常に危ない空気が伝わってきたのだが、何故か10年経った今でもPatとLyleは一緒にやっている。めでたしめでたし。

Crosby, Stills, Nash and Young, “Déjà vu” (1970)

こういうHTMLで書きにくいタイトルは止めてくれ、というのが第一の感想。Neil Youngが初参加したアルバム。タワーレコード札幌店でなけなしの小遣いをはたいて買った一枚で、これが洋楽への入り口となった。思えば、大きく人生を狂わせてくれた元凶だとさえ言える。「レコードがすり切れるほど聴く」という表現は今は死語となってしまったが、まさにそういう感じの一枚だ。

最初のノックアウトされたのは、“Carry on”のギターのイントロと、いきなりの三度コーラスだった。こんな世界があったんだ、と打ち震えた感動が忘れられない。続く“Teach your children”も定番的な名曲。スチールギターを初めてかっこいいと思った曲だ。この曲は、映画「小さな恋のメロディ」でも使われていた。“Almost cut my hair”は、いかにもDavid Crosbyという曲。当時はあまり好きではなかったが、今はなじめる。Neil Youngの“Helpless”も、これまた定番的名曲。カナダカナダした歌詞が良い。この曲は、映画「いちご白書」(”strawberry statement”)で、機動隊に包囲された封鎖学生のシーンで使われていて、あまりのはまり具合に感動した。今でも自分が危機的状況に陥ると、頭の中でこの曲が悲しく鳴り響く。“Woodstock”は、下手っぴなエレキが印象的な一曲。Joni Mitchellの”Ladies of the Canyon”(1970)に収録されているアコースティックバージョンと比較してみるのも面白い。“Déjà vu”も、これまたCrosbyの難解な曲。でも、すごいんだな。このアコースティックギターワークは、私の中では「一等賞」なのだ。

それから一転して“Our house”は、Graham Nashの甘ったるい曲。わかりやすいがために、最初は一番よく聴いた曲だ。その姿はよほど印象に残ったらしく、うちの母親は今でも「あんたが死んだら葬式でこの曲をかけてやる」と言う。“4+20”は、Stillsのソロ曲。このフィンガーピッキングのギターも当時ははまりにはまった。“Country girl”は組曲仕立てのNiel Youngの曲、。そして最後は勢いで持っていってしまう“Everybody I love you”“Everybody, I love you. Everybody, I do. Though your heart is an anchor….”と、実に単純な曲だが大好きだった。高校の卒業文集に歌詞そっくりぱくって書いたものね。

書いていて思わず涙ぐみそうになるね。関係者の方々、私が死んだらこの一枚を棺桶に入れて下さい。CDじゃなく、LPがいいな。

Pat Metheny Group, “Letter from home” (1989)

これは中期を代表する名盤。このアルバムが出た夏は、ほんと、この一枚で乗り切った記憶がある。“Have you heard”に始まり、“Every Summer Night”はピアニカとボーカルが妙にはまる曲。Brazilianしきってる“Better days ahead”は、軽快かつ美しく、記憶に残る曲。同じくラテンしてる“Beat70”もピアニカとギターが軽快で、とにかく抜けのいい曲。“Dream of the return”も美しい曲だし、外れ曲のほとんどない一枚。必聴。

James Taylor concert@Desert Sky Pavilion, AZ (9/24/1996)

アリゾナ在住中の1996年の秋、Desert Sky Pavillionまで、研究室の院生だったEugine君と見に行った。野外ステージだったんだけど、James Taylorを聞き始めて15年目、感動したなあ。しかし、このEugene君も自分でギターを弾く人だったが、このJames Taylorのコンサートに行く車中で私がThe PretendersのCDをかけていたら、「俺も好きなんだよ」と。James TaylorとThe Pretenders両方を好きな支離滅裂な趣味の人間など自分くらいだろうと思っていたが、まさか職場の同僚がそういう人だとは思わなかったなあ。