5年間一度も記事を書くことなく過ぎました。サイトを始めて25年になります。自分もアラ還世代に入り音楽を聞く時間も減ってきてたところで、新型コロナによるリモートワーク導入。通勤時間が減ると音楽聴く時間も減るのです。年末になり、筒美京平トリビュートな番組が多いのですが、自分の人生のターニングポイントは「木綿のハンカチーフ」だったなと痛切に思うのでありました。
カテゴリー: 国産系
あっぷるぱい、「あっぷるぱい」(2012)
Apple Musicが開始されて、早速飛びつきました。iTunes Matchで痛い目に遭った教訓はいずこへ?昔から気にはなっていたけれど、自分では買う(借りる)気にならない70-80年代の洋楽旧譜を中心に聴いていたのですが、やはり本来の使い方をしてみようかとAppleおすすめのリストを掘っていました。そうしたら遭遇したのがこの作品です。
ほとんどネット上に情報もないバンドで、ライブをしてる形跡もないのですが、
「シュガーベイブが演奏しそうな楽曲」をコンセプトに結成された大学生バンド(当時)
なのだそうです。ワタシの感想は、『荒井由実の初期四部作かな」だったので、そう遠くもないかと。本人たちは、シュガー・ベイブ、山下達郎、大貫妙子、ジョニ・ミッチェル、ローラ・ニーロあたりをfavoriteとして挙げています。70年代の「シティ・ポップス」の香りを引き継ぐ、我々の世代にはたまならい佳作と言えるのではと思います。メインとなるのは、ダー坊の脱力系女性ボーカル、これがいいんですよね。
渡辺美里ってどんな人?
「セブンティーン」のコンテストがきっかけで、「白井貴子の妹分」として1985年にデビュー。1980年代後半というのは、まさにこのお方の時代だった。しかし、90年代半ば以降に急激に失速。教祖であり続けることを自ら断ち切って、新しい世界を拓くことはできなかったんだろうか?
EPOってどんな人?
日本が誇る女性ボーカリスト。とにかく日本人離れしたうまさがある。80年代は、山下達郎の流れをくむポップシンガーとしてメジャーシーンで活躍。90年代以降は、むしろ癒し系シンガーとして語られることが多くなった。最近の若いシンガーもうまいけれど、歌を理解して歌って聞く側に伝える力みたいな点で、EPOは圧倒的に違いを見せつけていると私は思う。
EPO, “SuperNatural” (1989)
ごめんなさい。私にとっては、どうにも誉めようのないアルバムです。「母の言い分」は、その後の“Soul Kitchen”中の“bleeding heart”に繋がる母子葛藤に関する曲で、彼女にとっての重大問題のようだ。この時期というのは、おそらく「業界的に作られた洗練された音のEPO」から「自分らしい音を出せるEPO」への過渡期だと言えるのだと思うのだが、もがきながらこの時期を乗り切っていったことが、今の素晴らしさに繋がっているように思う。
彼女の公式ページにある、このアルバムに関するさらりと書かれたコメントを読んで欲しい。
EPO, “DOWN TOWN”(1980)
山下達郎の同名曲をカバーして一躍注目されたデビュー盤。「シティポップス」という懐かしい言葉が頭をよぎる。
1. “down town”は同時代人の間では「ひょうきん族のエンディング」で話しが通じるだろう。40歳を過ぎてから好きになってきたのが5.「語愛」。
山本潤子(新居潤子)さんって、どんな人?
商業的に成功したフォークグループの先駈け的な存在である「赤い鳥」でボーカルを担当していた。ワタシ的には、赤い鳥時代の歌が最高だと思う。赤い鳥解散後は、荒井由実楽曲を卓越したコーラスアレンジで演じてヒットを連発したHi-fi setで活躍。私の独断と偏見に満ちた日本人女性ボーカル声質ランキングでは、だんとつの一位である。「は?」という人でも、「翼を下さい」や「フィーリング」を歌っていた人だと言えば心当たりがあるのでは?現在はソロ活動を継続しており、NHK-BSのフォーク番組などでもよく見かける。
荒井由実ってどんな人?
いわずと知れたユーミン、実は私はこの人が苦手です。四畳半フォーク趣味だった中学時代には、それを揶揄するような彼女の発言にかちんと来ていた。洋楽全盛期だった私の大学時代にさえ、一大勢力として存在していたユーミンファンを、「いろいろ聞いたうえでなおユーミンが好きなわけ?それとも耳に入ってきやすいものを好きだと言ってるだけ?」と冷ややかな態度で見ていた。
そんな私が、荒井由実の70年代半ばまでの初期四部作をレビューしてみようと思う。このあたりの作品では、荒井由実の曲の良さに加えて、細野晴臣・鈴木茂といったはっぴいえんどを源流とする人々、そして松任谷正隆、山下達郎、吉田美奈子、大貫妙子といった錚々たるメンバーが固めたバックが醸し出す緻密な音世界が、やはり時代の先を行っていたと認めざるを得ないのが真実。この時代の彼女は、やはり良いのです。
白井貴子さんってどんな人?
国産女性ロッカーの草分け的な人で、80年代前半には「学園祭の女王」とか「総立ちの貴子」とか呼ばれていた。あの渡辺美里は、「白井さんの妹分」としてソニーから売り出された、と言えば、当時の影響力の大きさがそれとなくわかるだろうか?でも、当時のわたしは洋楽一辺倒でリアルタイムにその時期を覚えていない。
わたしが好きなのは今の白井さん。内省的な詞も、社会的なアピールも、バランス良く歌えてしまうところがベテランらしくてグッド。伸びの無い声質なのだけれど、低音域から中音域で心地よい。90年代後半にNHKの「ひるどき日本列島」とかでも活躍していたので、今や主婦層への知名度の方が高いかもしれない。笑顔キュート系という私好みの特徴をお持ち。
白井貴子ミニライブ@富山県久光町夏祭り(2000)
石川県に住んでいた2000年の夏に、富山県福光町の夏祭りに来たところを見にいった。町の中心を流れる川の岸にステージが組まれて、それを対岸から見る形になっていた。それまで気にはなっていたもののCDを真面目に聴いたことはなかったのだが、これをきっかけに一気にのめりこんだ。生ギター2人+白井さんの編成で、”Chance”なんかをやっていたのを覚えている。
鈴木祥子ライブ@Saravah東京(’12/12/15)
鈴木祥子さんを聴き始めて、7-8年?一度もライブに行っていなかったのだけれど、今日ついに実現。クリスマス・アルバム発売にちなみ、10年ぶりとなるクリスマスライブだったそう。100人程度の小さなキャパのハコだったのだが、中年男性がうごめく異様な光景?まあ、自分も立派にその範疇です。リラックスした雰囲気なのは良いのですが、ちょっと緊張感の無さも感じられたのはちょっと残念。
で、祥子さんです。やっぱりすごかったですね。特にピアノ弾き語り曲、ピアノのタッチが重いのです。”Little love”とか「愛はいつも」のような初期作品は、当時の声、当時のアレンジだとあまり魅力的だと感じないのですが、これを今の声で、ピアノ弾き語りでやられたりすると、もう参ってしまいました。
あとは、「鈴木祥子の作曲講座」も面白かった。ベースラインが半音進行になるのは教会音楽に多く、これはオルガンではベース音をペダルで奏でていただろうとの説。洋楽にはこの影響を受けたものが多く、S&Gの”Bridge over troubled water”や、Carole Kingの”Locomotion”などを題材に取りながら説明してくれたのでした。
クリスマス・アルバムからの曲もどどっとやっていたようですが、ワタシは多分買いません。オリジナル・アルバムで、がっつり勝負して欲しいなと思います。次の快作が出た頃に、また聞きに行きたいですね。
大貫妙子、”note” (2002)
鬼才大貫妙子さんの2002年のアルバムを今頃になって聞いています。この時期の大貫さんは、山弦の二人と一緒に仕事をしているのですよね。山弦とは、(最近は松たか子の旦那としてむしろ知られているかもしれない)佐橋佳幸さんと、小倉博和さんのアコースティックギターデュオ。これに平松八千代さんを加えたSOYは、ワタシ的には大好物です。
1.「あなたを思うと」、2.「緑の道」、3.「ともだち」、8.“Snow”あたりの山弦コラボ作品が秀逸。山弦としてはちょっと抑えた、しかしツボを抑えたプレイで大貫さんの魅力を引き出しています。
一方で4.“Wonderland”なんかは、シュガーベイブの流れそのままのポップス、6.“Le Musique”あたりは、これも初期のトレードマークだったヨーロッパっぽい音造り、9.「星の奇跡」は、”pure acoustic”の頃の音造り。このとき大貫さんは多分48歳、新しいものを次々繰り出すという作品ではありません。しかし、自分の魅力を引き出してくれる山弦のようなアーティストとのコラボを取り入れつつも、自分がかつて作ってきた音でしっかりとアルバムをまとめるような安定感が際立つ心憎い作品。外れのない佳曲揃いです。
阿部芙蓉美, 「沈黙の恋人」 (2012)
iTune Music Storeで、最近は滅多にしない衝動買いというのをしてしまいました。邦楽のマイナー系(失礼)ってのは普段は探索範囲外なのですが、一曲目の“highway, highway”のPVに何故かYouTubeでぶち当たってしまい、そのウィスパー系の声に引き込まれたのです。
wikiによると、この人は稚内のご出身だそう。ワタシと同じ北海道人なんですね。Sarah McLachlanが好きなのだそうですが、その影響ははっきり聴いてとれます。Sophie Zelmani, Kathryn Williamsなんかにも通じるところも。こういう世界はじっくり歌詞を聴き込まないと本当のところはわからないのですが、まずは「聴いていて疲れそうなところがない」「ギターを中心とした薄い音の作りがとても気に入った」というのが第一印象。
ダントツに良かったのが、最初に挙げた“highway. highway”とタイトル曲の「沈黙の恋人」の二曲。他には、「君とあの意味」, 「いつかまた微笑みあえる日が来るまで」、“cinema”、「希望のうた」あたりを気に入りました。
この文章は暫定稿。聴き込みながらreviseをかけていこうと思います。
山本潤子、 “Songs” (2007)
2010/08/10 渋谷TSUTAYA
元赤い鳥・ハイファイセットの山本潤子さんがJ-pop(この表現は非常にキライなのだが)の名曲をカバーするという企画のアルバム。潤子さんは、どう考えても史上最強の日本人女性ボーカリストの一人だし、好きなんですよ。上手いし、説得力もあるし、声もやはり素晴らしい。
でもこの一枚の存在意義がどうしてもわからない。カラオケが上手いおねーさんが歌っているのと、どう違うのかがわからない。原曲を越えていくようななにかとか、「今、ここで新しいものを生み出そう」という心意気みたいなものが感じられない。
でも、amazonのレビューなんかでは、結構好評なのです。多分いいアルバムで、ワタシがオーディエンスの枠内に入ってないというだけなんでしょう。
鈴木祥子、「優しい雨」(1993)
作詞が小泉今日子、作曲が鈴木祥子さん。小泉今日子が歌ったバージョンは、1993年のTBS系ドラマ「愛するということ」の主題歌として使われ、オリコンの最高位は2位だったようだ。祥子さんも直後のオリジナルアルバム”Radiogenic” (1993)にこの曲を収録している。ギター一本がバックなんだけれど、ちょっとテンポが遅すぎかなあ。
しかししかし、ライブでピアノ弾き語りでこの曲を歌っているYouTube映像をは、ぞくっと来るような素晴らしいものなので、皆さんにもこの感動を是非。ライブ盤”I was there, I’m here”で聴けるのも、ほぼこのバージョンです。
PerfumeのペプシCM
The Cardigansの”Lovefool”じゃありませんか。
90年代Swedish popsの最高到達点?
Nina Perssonのどことなく獰猛な北欧顔がいいなあ。
白井貴子ミニライブ@横浜・日本大通り (2010/6/6)
横浜関内の日本大通りで行われた、TVKの「2010 秋じゃないのに収穫祭」という催しの一部として行われた、白井貴子さんのミニライブに行ってきました。
歩道上に設置されたミニステージで行われた30分の短いものでしたが、それなりの人だかりが出来てました。客層は、昔からのファンよりさらに上だろう、って方々も多く、植樹祭などの社会活動の中で広がったファン層なのだと推察しました。
演目は覚えてる範囲で5曲。”Chance”, “Yes”, “Princess Tiffa”, 「森へ行こう!」, 「元気になーれ」。かなりグダグダ感が漂っていたのは、催し物の性格上、仕方のないことであったか?私としては、歌よりむしろ、ホンチ・ナンチのギター陣二人のプレイを面白がってました。
最後に。。。後ろの携帯カメラでばしゃばしゃ取ってたおっさん、確かにオレは長身で邪魔だったかもしれんが、オレの肩の上に携帯乗せて写真撮るのはやめてくれ。
鈴木祥子、「鈴木祥子」(2006)
デビュー18年目にしてのセルフタイトルアルバムで、40歳を過ぎての初作品。アルバムのために曲を書く、というのではなく、書いた曲をライブでやっていって、いいものをアルバムとして出す、というスタイルを取ったらしい。今までのアルバムは、一枚一枚の中でもバラエティ豊かというか、すごく音楽性の幅が広いことをみせつけているかのような感もあり、それは時として器用貧乏っぽい印象を与えることもあったのだけれど、本作は至ってシンプル。けだるさというか、全力疾走から一息入れたような感じを受けるし、それが決してマイナスに作用していない、等身大の姿を映し出しているかのようなところが非常に好きだ。
2.“Love is a sweet harmony”や4. “Passion”は好きだなあ。洋楽を消化しきった人じゃないと、絶対に書けない曲だ。3. 「何がしたいの?」は、「見失い感」とでも書いておきましょうか、壮絶な曲だ。ぐさっと来る一曲。1. 「愛の名前」、5. 「契約 (スペルバインド)」、8.「忘却」もいい曲です。10. “Blondie”も、すさまじさを感じる曲。11. 「道」は、ピアノのイントロがもろにCarole Kingの”So far away”ですな。一方、6.「ラジオのように」の再演・再収録は、ちょっと意味がわからない。確かにこのテイクの方が僕としては好きなのだけれども、あえてオリジナル盤に再収録するほどの出色でもないかな、というのが個人的な感想。
何曲かでエレキバイオリンを弾いているROVOの勝井祐二さんの動向には個人的に興味があった。彼は札幌の高校の一期下で、自主制作盤やらライブやらの告知を校内に張りまくる有名人だったので、直接話した記憶はないけれど知っていた。「こんな田舎でやってても限界あるだろうに」などと当時は思っていたのだが、本当に影響力のあるミュージシャンになってしまったんだなと感動。80年代初頭の売れたロックのスタイルを消化しきった感のある祥子さんと、その時期には売れ線のロックなんてまるで聴いていそうになかった勝井さんが一緒に仕事して、壮絶な一枚を仕上げてるところが、ある意味とても面白いなあ。
追記: 「忘却」のYouTube動画を発見。アルバム収録のバージョンとは異なるアコギ弾き語りバージョンですが、その凄まじさはわかっていただけると思います。しかし、アコギがNeil Youngっぽくて面白い。
鈴木祥子、「私小説」(1998)
1990年代後半の祥子さんは、ワタシ的には一番ツボにはまる時期なのです。しかし、曲によって好き嫌いが大きく分かれるこの一枚は、非常に微妙な作品ではあります。
このアルバムで一番好きな曲は、2.「プリヴェ」。後年のライブ盤”I was there, I’m here”でのピアノ弾き語りバージョンが素晴らしいのですが、70年代SSWのテイストを出してるこのテイクも素晴らしい。
1.「完全な愛」は、初期ガールズポッポス路線の香りを残した一曲でちょっとはじけきらないでしょうか?3.「だまってそばにいる女」あたりは、EaglesとかNeil Youngとか、70年代の西海岸アメリカンロックっぽい音の作りが面白い。クロウハンマーっぽいバンジョーの使い方は、ちょっとワタシ的には許し難いですけど。7.「依存と支配」は、ある意味問題作で、イカレきった歌詞が大好き、でも音が大嫌いという本当に微妙な一曲です。8.「ただの恋だから」はカーペンターズっぽく仕上げた曲ですが、やはり祥子さん上手いなあ、と納得してしまう曲です。10.「日記」はミディアムテンポのロックしてて、これまたいいんですよねえ。
太田裕美、「茶いろの鞄」 (1976)
B面ネタ続きになりますが、「赤いハイヒール」のB面曲だった「茶いろの鞄」を取り上げてみます。
「赤いハイヒール」は「木綿のハンカチーフ」の次作として発売された作品です。「木綿のハンカチーフ」では上京者は男性・地方に留まったのは女性というのが語り部の役割分担でしたが、「赤いハイヒール」ではこの性別が逆転します。二匹目のどじょう作戦が明確な曲で、余勢を駆ってそれなりに売れましたが、今聴いてみると冴えのない曲です。
それに対して、このB面曲はなかなかすごい。ソフィスティケイトされた運びのメロディーの運びは、この時期の歌謡曲とは明らかに一線を画する秀逸なものです。コード進行には、ジャズの要素がちょっと入ってるでしょうか?
たとえば「木綿のハンカチーフ」でのストリングなどのような、いかにも歌謡曲歌謡曲したアレンジは今となっては堪え難いのですが、この曲のアレンジは、なんとか現在でも我慢出来る程度の仕上がりになっています。イントロや間奏での、フルートのフレージングはかなり自由で、この曲の雰囲気をかなり決定づけています。荒井由実の「あの日に帰りたい」とか、丸山圭子の「どうぞこのまま」といった、ボサノバっぽい曲が流行った時期に重なる、というのもポイントかもしれません。
一方、不良ロック少年と思いを寄せる少女、そんな時代を振り返るという歌詞は「青春のしおり」あたりと共通するものなのですが、松本隆さんの定番ワード「路面電車」が登場するあたり、それはまぎれもなく風街ワールドです。ディープな地方生活経験のない松本さんが書く田舎は、どこか薄い気がします。やはり、都会に徹した詞にこそ松本さんの真価があるように思います。
そして、裕美さんの歌です。彼女は時として、元気に歌いすぎて曲をダメにしてしまうという失敗をしでかしていたように思います。特にそれは高音域を張りすぎてしまう、という点に現れるのですが、この曲ではうまくファルセットで抜いて、いい意味での力の抜けた雰囲気を醸し出しています。
なので、実はこの曲が太田裕美の最高傑作、というのが今日の私の結論です。
YouTubeに音ありました↓
「情熱大陸」〜松本隆さん編
80年代初頭、僕は中森明菜・河合奈保子派で松田聖子はキライな存在だった。しかし30年近く経ったいま、むしろ松田聖子の曲の多くをはっきり覚えている。「顔や存在は覚えているけど、歌の中身まで思い出せない」アイドルと、「むしろ歌を覚えている」アイドルとが分かれてくる、その要因はまぎれもなく曲の力だ。この一連の作品は、作詞家松本隆と作曲家筒見京平コンビによるもの。この組み合わせが最初に飛ばしたヒットは、太田裕美さんの「木綿のハンカチーフ」であるのもよく知られた事実だ。
3/15(sun)放送のTBS「情熱大陸」が、この松本隆さんを取り上げていた。動く松本隆さんをこんなに長い時間見たのははじめてで非常に新鮮だった。「不自然なことは絶対にしない」という作詞にあたっての姿勢が徹底されていて、むしろ50代後半になってその姿勢を貫けることの方が不自然にも思え、面白いなあと思いながら見ていた。
番組での取り上げ方では「不世出のラブソング書き」みたいなポイントが重視されてたんだけど、僕はむしろラブソングではない、はっぴいえんど時代の松本さんの詞が好きだ。「風街」系の情景描写、あれは絶対他の人にはできないもので、あの世界を知るか知らないかで、東京という街の捉え方ががらっと変わってしまうような代物だ。鈴木さんがクスリで捕まってしまいはっぴいえんどのCDが販売中止になったりと、ちょっとイヤな流れが最近あったけれど、ちゃんとはっぴいえんど時代についても番組中で言及されたのはうれしかったな。
ところで、wikiを読んでみると、松本さんは青南小学校卒業なのだね。学生時代、青山の路地裏の学習塾でバイトしていて、ここの生徒や卒業生を何人か教えたことを思い出した。僕が東京に来た80年代前半には、駄菓子屋も路面電車も消えていたけど、当時の光景はやはり僕にとっての風街だ。
Song for Memories, “Song for Memories” (2000)
泉谷しげるのフォーク時代の名曲A-2 「春夏秋冬」、PPMのA-4 “Puff”、GAROのファーストに収録されている名曲 A-7 「地球はメリーゴーランド」、荒井由実のA-9 「あの日にかえりたい」、B-5 「中央フリーウェイ」、カーペンターズのB-7 「YESTERDAY ONCE MORE」、ふきのとうのB-8 「白い冬」、オフコースのB-9 「さよなら」、赤い鳥のB-10 「翼をください」のあたりは、まさに自分の中学?高校時代のリスナーとしての嗜好にびたりと一致するのだ。しかし、やっぱり潤子さんの歌は素晴らしいね。
白井貴子 & Crazy Boys、「地球 -HOSHI-」 (2008)
昨年の「白井貴子 & Crazy Boys」名義でのツアーに引き続く、久々のニューアルバム。最近のソロ作が好きな私としては正直微妙なところもある。高音にぶら下がったまま降りてこなかった80年代当時の白井さんのボーカルはあまり好きではないし、それ以前に80年代前半の邦楽ロック(J-popと言うべき?)は、今思うに拙い音楽だったと思う部分も大きいからだ。ロッカーとしての白井貴子は、21世紀にどんな姿で戻ってきたのでしょう。
2. “Time Limit”は、疾走感あふれる80年代っぽい硬い音の作りのロックででよろしい。3.“Believing”も、ちょっと高音域でがんばりすぎなんじゃないの?と思う部分もあるけれど、良い曲だと思う。一番出来がいいなと思われるのが、4. “Run 風のように 雲のように”。タイトルのセンスには全くうなずけないが、この疾走感はたまらん。ギターとかシンセのフレージングは20年前にタイムスリップした感覚。レベッカってこんな感じだったな、とふと思う。6. “Start Again”は、ソロ作に一番近い感じだろうか。エキサイティングでもないが、安心して聴ける曲です。
Perfume, “Electro World”
40を過ぎた中年男としては、「十代の女性など意に介さない」という態度を貫くべきかとは思うが、この人たちはどうにも気になります。昨年からのNHKの環境CMで「何者だ、こいつら?」とは思っていたのだが、先月のトップランナーを見てから「ひょっとすると、こいつら結構すごいかも」との感想を持った。「わーっ」という感じで見てしまったのが、この番組での“Electro World”という曲のライブパフォーマンス。「勢いあるなー。地力もバカに出来無そう。」という感じと、「曲面白いじゃん」という両面が、ないがませ。
そんな中で、当該番組でのインタビューと、日経トレンディの記事が理解の助けになった。YMOとか決して好きではなかったけど、テクノが当たり前に耳に入ってきてた我々の世代には、響くものがあるのかも。中田ヤスタカ氏をプロデューサーとするサウンド集団、という感じでみるのが正解のよう。トップランナー中の中田氏のインタビューというのが面白く、「三人それぞれの個性は?」という問いに対しての答えが、すべて声質に関するものだった。要は三人を「楽器」として捉えているということ。レコーディングでもこの指示が徹底されるらしい(熱唱しないように、椅子に座らされてレコーディングさせられる、など)。また、本人たちも、自分たちの役割がよくわかっていて、アーティスト然としていないところが面白い。
小室哲哉にしろ、つんくにしろ、プロデューサー・仕掛け人として成功して、そして飽きられていった人たちというのは過去にいて、今回もやがてはそうなっていくのだろうけれど、彼女たちにはいいパフォーマンス見せてほしいなあ。
ところで、中田ヤスタカさんは、金沢のご出身のよう。あの街からこういう人が出てくるのも、結構意外な気がしてます。
白井貴子、”French Tough” (1991)
これもある種、中途半端な時期の作品。方向転換したまだ自分を受け入れきれていないというか、のたうちまわっている感じが残っているような印象を受ける。まだ、「深み」には至っていない感じですかね。
1. “夕焼けのバラード”は無難な曲。この時代、キーボードとかピアノとかドラムって随分硬い音に録っていたんだな。2. “Love Forever”は結構好きな曲。使っている声域の問題だろうか、落ち着きが感じられるのだ。5. 「みんなあなたのせいよ」は、好きな感じのミディアムテンポのロックバラード。9. 「レクイエムの聴こえる坂道」も結構いい曲なんだけど、今の時代の感覚で言うと、裏のシンセが余計なところでうるさい感じはしますかね。
白井貴子、”BOB” (1990)
決していい出来のアルバムとは思わないが、白井さんを語る上では欠かせない転換点となる一枚。音楽ビジネスに疲れた白井さんは、ギターの本田さんと、80年代後半にロンドンで一年余「充電」生活を送っている。このあたりのことは、公式サイトのプロフィールを参照されたい。この充電期をはさんで制作されたのがこのアルバム。一部のエンジニアリングはロンドンで行われている。
ロックンロールっぽさが薄れて、ロックっぽくなったという感じだろうか。ボーカルで中音域を効果的に使うようになった、1. 「DREAMIN'(夢見る想い)」、後にアルバム”HANA”に再収録されることになる5. 「野生のマーガレット」あたりが印象に残る。
白井貴子、”Heart Attacker” (1984)
ガールズ歌謡ロックですかね。今からあらためて聞くようなアルバムではないかと。リアルタイムでファンだったなど、思い入れのある人には楽しめるのかもしれません。1. “She is a Go Go”は、サビの音の運びがちょっといいかな。
鈴木祥子、”Long Long Way Home” (1990)
4枚目となる1990年作品。3.“Little Love”は、EPOあたりに通じる80年代邦楽ポップスくささが強く出てる曲。このサビはどこかで聴いたことがあると必死に考えるんだけど思い出せず、ここ数日悶絶中。このアルバムでは一番しっくりくる曲だが、これが本当の彼女自身の色かというと、それは違うかもしれない。4. 「水の中の月」も80年代っぽい拡がりのある音作りで好きだな。5. “Down by riverは、Neil Youngの名曲と同名の一曲。コード進行やアレンジの一部にもその影響が感じられる気が。好きな曲です。1. 「光の駅」、6. 「夏のまぼろし」、7. 「あの空に帰ろう」、10. 「どこにもかえらない」あたりもよい。強烈な曲があるわけでもないが、私的には聴きやすい80年代の音。好きな一枚というよりは、嫌いとは言いにくい一枚、って感じでしょうか。
荒井由実、「14番目の月」 (1976)
これも名曲揃い、文句なしの名盤。80年代に繋がるpopな音の作りが、邦楽においてもこの頃確立したんだな、と思わされるのが1. 「さざ波」。2. 「14番目の月」は、つくづく名曲だ。4. 「朝陽の中で微笑んで」は、ちょっと不思議な曲。曲はしっかりユーミンワールドなのに、ギターのアルペジオはまぎれもなくこの時代のフォークっぽいもの。このアンバランスが、奇妙にはまる。どういう思考回路になってるのか自分でわからないのだが、何故かこの曲を聴くと僕の頭の中には同時代の中村雅俊の「俺たちの旅」が思い浮かんでしまうんだけど。
で、このアルバムを代表する一曲と言えば、5. 「中央フリーウェイ」ですね。多摩地区の米軍基地の多くが未返還だった時代の話なんで、どうも実感がわかないのだけど。6. 「何もなかったように」, 7. 「天気雨」も、天才的としかいいようのないメロディーメーカーとしてのセンスを存分に発揮した曲。
荒井由実、「ひこうき雲」 (1973)
天才ぶりをいきなり開花させきったわけではなく、それとなく示したかのようなデビュー盤。夭折した友人を歌ったとされる1. 「ひこうき雲」は、いきなり強烈。2. 「曇り空」のメロディーの運びは、歌謡曲でもフォークでもない、おそらく当時の邦楽にあっては斬新な世界を切り拓くものだったのではと容易に推察できる。5. 「きっと言える」, 6. 「ベルベッド・イースタ」なんかも、意外性あるなあ。8. 「雨の街を」とか、10. 「そのまま」みたいなピアノの弾き語り曲に、Carole Kingの強い影響が見られるのは、やっぱり時代ですかね。
鈴木祥子、”Radiogenic” (1993)
初期も終わりの時期の作品と位置づけられるのだろうか?90年代後半の作品から入った僕としては、僕のイメージする「鈴木祥子らしさ」がないから、ちょっと物足りないところがある。80年代の上質なポップスが想起される音なんだけど、おそらく彼女でなくても作れてしまう音なんじゃないかと思えてしまうところが、のめりこめない最大の原因かな。
それでも、“Goodbye, my friend”、「両手いっぱい」、“my love, my love”あたりのアルバム後半の曲は好きだ。ギターが小倉・佐橋の山弦コンビなんだよね。懐かしのCorey Hartと共演している“Original Aim”も面白いな。小泉今日子(作詞も小泉今日子)が歌ってヒットした「優しい雨」は、ギター一本がバックなんだけれど、ちょっとテンポが遅すぎかなあ。
The Indigo, “The Flair” (2005)
The Indigoの7枚目。市川さんのある種豊富すぎるアレンジのバリエーションが、逆に器用貧乏っぽい印象を最近数枚は受けていたのだが、本作はデビュー盤に近いアコースティックロック/ポップス路線で、僕的には非常に好きな音になっているのだ。特に、2. “waiting for you”, 4.“I’m busy”, 8. 「あの雲をつかまえて」あたりは、音的には好き。11. “Just the way you are”はBilly Joelの名曲と同タイトルだが、カバーではなくオリジナル。しかし、音が好きなわりにはのめりこめないのは、歌詞の問題だろうか。特に英詞の部分は曲から浮いてしまってますね。
白井貴子ミニライブ@横浜日本大通り(2007/11/4)
横浜の日本大通りの仮設ステージであったミニライブに行ってきた。TVK ’07 秋の収穫祭、神奈川県民の役得ですね。わずか30分のステージながら、ナマで白井さんを見たのは7年ぶり、感激なのである。5mくらいの至近距離から見たんだが、意外に小さかったなあ、白井さん。
(ご主人の)本田清巳さんとの二人ステージ、3曲+0.5曲x2が聴けました。“Chance!”, 「元気になーれ」, “stand up boy”がフルコーラス、次のCrazy Horseの再結成盤に入るという“It’s my rock”, 「ふるさとの風になりたい」がワンコーラスずつ、ってとこでした。
非常にゆるゆるのステージなのですが、非常に良かったのです。笑顔キュート系の白井さんに騙されたところはあるのかも。
EPO, “UVA” (1995)
なかなか中古盤屋で遭遇しなかったので、iTune Storeでアルバム単位で購入してしまった。隠れ名盤というのが大方の評価じゃないかと思うのだけれど、僕的には?ですね。
確かに、POPS爆走路線を走り過ぎ、力が抜けたいい歌が聴けるのだ。そこにいるのは、EPOというよりは佐藤栄子さんなのだと思う。しかし、半数の曲がセルフカバーという作りはどうなんだろう?ライブ音源を編集している曲が多いから仕方ないのか?
自分をreconstructしていく作業自体は彼女にとって必要だったのだろう。その作業結果をそのままでアルバムとして世に出し、リスナーを付き合わせるかどうかは別問題じゃないかなあ。本作以降の90年代後半の彼女の作品の良さを知ってしまっているだけに、余計にそう思う。
鈴木祥子、 “Candy Apple Red” (1997)
最初に買った鈴木祥子さんのアルバムが、この”Candy Apple Road”と、「あたらしい愛の詩」 (1999)の二枚だった。もう20年を越えるキャリアの中で見れば、初期のJ-pop女性シンガー路線から、自身の洋楽体験を反映したロック色の強い路線へシフトした時期の作品群。初期ファンの期待を裏切る作品への反響に、自分自身がかなり戸惑ったことを、2009年のライブに先立ったインタビューで語っている。
5年くらい前から祥子さんを聴き始めて僕は、明らかに遅れてきたファンなのだが、このアルバムは本当にすごいんじゃないかという思いが強まりつつある。それは、自分のリスニング傾向を公開しちゃってるlast.fmの個人的なアルバムチャートでもはっきり出てしまっているわけで。
特に印象的な曲がいくつかある。まずは、4. 「恋のショットガン(懲りない二人)」。「女性らしい歌詞だな」と思って聴いていると、S気全開の“もう降参だと言いなさい”というサビに流れ込むという思わぬ歌詞の展開が面白い。そして、音はどうしようもなく、ロックなのだ。個人的には、この曲でのギターが好きなのだが、弾いているのは当時の旦那の菅原弘昭さん。
9.“Shelter”は、何とも言えない澱みがある曲だ。こういう曲を書き切れる、演り切れる、というのが、祥子さんのスゴミなのだと思う。
11. “Angel”も大好きな曲。ポップなメロディーと自然体の歌詞ながら、とても大事なことを伝えているように思える。作詞は小倉めぐみさん。しかし,本人が書いていたとしてもまったく違和感がないその歌詞は、今に至るまで続く「なにかを見失ったまま、さまよいながら、でも進み続けている」鈴木祥子ワールドそのままだからと僕は感じる。あなたの”胸の中の天使”は、あなたにどう生きろとメッセージを送っていますか?
12.“River’s end”は、のちのライブ盤のMCで、自分が生まれ育った下町のことを歌ったと語った曲。忘れるために生きているというくだりも、のちの「忘却」あたりにつながる世界だ。
その他、3. “Sulky Cat Strut”あたりも、決して好きでは曲調でないにも関わらず、「器用だなあ」と思ってしまう。単純なようで実はメロディーの作りが面白いのは8.「君の赤いシャツが」。13.「ぼくたちの旅」は、珍しく前向きな歌詞なんだけど、曲のキレがいいのでやはり大好きな曲。
そしてそして、この人の天才ぶりを示す一曲が7. 「3月のせい」だと思う。私の拙い言葉をどう書き連ねようとこの壮絶な世界を説明できない。ぜひあなた自身が聴いてみて下さい。
鈴木祥子、「あたらしい愛の詩」 (1999)
本作は、80年代洋楽へのオマージュみたいなキャッチコピーがついていたと思うのだけれど、なるほどそれらしい仕上がりだ。1. 「この愛を」を書いたときに彼女の頭にあったのはBruce Hornsbyの”The way it is”だったに違いない。“二人はとても似ていたので恋することは簡単でした”から始まる歌詞も絶妙で、実らなかった若き日の自分の恋を思い出すのだった。
もう一曲佳曲を挙げておくと5. 「愛は甘くない」だろう。メロディーの運びも佐橋氏のギターも自然で心地よく、なにより文体を変えて“愛は甘くないんである”と歌詞を締め括るセンスが大好き。必聴。
「この愛を」のライブ画像@YouTube↓
渡辺美里ライブ@横浜新港埠頭 (2007/7/29)
ある日妻から「これ行っておいでよ」と手渡されたのは、横浜・新港埠頭での渡辺美里のライブのチケットだった。20年続いた西武スタジアムでのコンサートに一昨年区切りをつけての、新たな夏の定期ライブらしい。86年の第一回から何年か西武スタジアムに通った僕としても、15年ぶりくらいの彼女のライブだ。で、どういうライブだったかというと・・・
美里さんはほんとに上手くなったなあ、という印象。高音域の伸びは、さすがに落ちたか。大江千里系の曲の人気は根強く、小室系の曲は”My Revolution”を除くとさっぱり、ということもわかった。しかしもっと面白かったのは、観客ウォッチ。「君達、渡辺美里以外の音楽をほとんど聴いてないでしょ」という感じで、宗教の集会にまぎれこんでしまったかのようだった。問題発言なのは承知で書くが、このファンが20代までの彼女を育て、このファンが30代以降の彼女を駄目にしたのだと痛切に思う。(自分も含めてだが)アーティストを育てられるような実力はないファン層だったということだ。白井貴子さんとかEPOとか、僕が今いいなあ、と思うベテランたちは、良くも悪くも古くからのファンを裏切るような、音楽的な大転換をしている。成長しないからついてくる、あるいは成長することで離れていくファンより、成長してもなおついてきてくれるファン・成長したからこそ新たに付くファンを大事にすれば、きっと違う展開があるのに。
しかし20年前に高校生くらいだった彼ら・彼女たちが子連れで来てるのを見ると感慨深い。僕が一緒にスタジアムライブに行っていた人たちとは音信不通になって久しく、既にこの世の人でなくなっている人さえいる。そう考えると、僕があの日見ていたのは、渡辺美里でも観客でもなく、きっと自分自身のこの20年だったんだろうな。
荒井由実、ハイファイセット 「卒業写真」
例年この時期になると、「卒業写真」のキーワードから検索して、このサイトを訪れる人が急増する。ハイファイセットのデビュー盤として発売されたのが1975年2月5日、ヒットから間が浅かったぼくらの時代はそんな事態にはなっていなかったのだけれど、30年以上の時を経て学校教育では定番の合唱曲なんかにもなってしまったようだ。荒井由実バージョンは、バックのアレンジが秀逸。ハイファイセットバージョンは、やはり新居潤子(山本潤子)さんのボーカルが素晴らしい。
『あのころの生き方をあなたは忘れないで』というフレーズがこの曲にある。今日の午後、中学時代の同級生の訃報を伝えるメールが回ってきてた。全国紙の「おくやみ」欄に訃報が出るまでに有名人になった彼は、他の同級生たちのような収まり方とはほど遠いところで、決して平坦ではない人生を太く短く駆け抜け切ってしまった感がある。札幌を離れてから会ったのは一度だけ、新宿で集まって飲んだのは7-8年前だったろうか。彼の「あの頃の生き方」と、現在がどうつながっていたのだろう、とふと考え込む。彼の冥福を祈りたい。
LANPA, 「水の上のPEDESTRIAN」 (1990)
平松八千代さんが在籍していた、いわゆる「イカ天バンド」の一つ。あの番組としては異色な大人系バンドだった。最も印象に残っていたのは、タイトル曲でもある、2. 「水の上のPEDESTRIAN」。CDを当時保有していたわけでもなく、ほんの数回しか聴いたことがなかったにも関わらず、このメロディーの運びは覚えていた。あらためてCDで聴いてみると、アレンジが泣きそうなほどつまらないのだけれど。他には、1. “LOCH SENU”なんかを聴くと、なんかPat Methenyっぽいなあ、ということがいきなり頭をよぎる。彼がこの曲で求めた音の拡がり感がメセニーっぽいものだったんだと思うのだけれど。あとは、10, 「あの時の私達は」あたりもいい曲かな、と思う。これにはFleetwood Macあたりが思い起こされるかなあ。正直なところ、全体的にはそれほど面白いアルバムではありませんでした。
しかし、八千代さんのボーカルは、この作品ではまだちょっと不安定が感じられる。Soyの時代に向けて歌唱力がすごくアップしたんだな、と感嘆。
加藤いづみ、「好きになって、よかった」 (1993)
それなりにヒットした曲だったと思うのだけれど、オンタイムでの記憶がない。アメリカに渡った直後の1995年春、「北の国から ’95 秘密」のビデオを日本から送ってもらい、郷愁心をそそられながら見ていた。その中の雪印のCMで使われていたのがこの曲。どうにも気になり、LAまで買出しに行ったときに”Sweet Love Songs”というアルバムを仕入れた。アルバム自体はとてもつまらなかったが、この曲だけはやはり別物。未だに時々聞く曲だ。
LINDBERG, “LINDBERG III” (1990)
えー、こういう趣味があったとカミングアウトするのも恥ずかしいのですが、Lindberg好きでした。ロックと言えば洋楽・歌謡曲と言えば邦楽という時代から、ロックが邦楽の中でマーケット的に自然に受け入れられていった80年代後半からのシーンで、Lindbergとかアンルイスとか言った歌謡ロックの役割ってのはそれなりにあったと思うのだ。ボーカルの渡瀬マキはアイドル歌手としてデビューしたのち、Lindbergのボーカルとして再登場することになった経歴を持つ。ぶっきらぼう唱法はパーソンズっぽくもあるのだけれど、上手くもなく下手でもなく、でもいい味を出していたと思う。
最大のヒット曲は3. 「今すぐ Kiss Me」で、この疾走感は好きだったなあ。他には、1.“LITTLE WING”, 8. “YOU BELONG TO ME”あたりのアップテンポな曲がよいのだ。スローな曲になると、どうしても出来の悪い歌謡曲になってしまい、いまいち。
白井貴子、”Marguerite River” (1995)
Unplugged系のスタジオライブによる秀作。2000年の夏に富山県福光町で見たライブがこのような軽い編成でのサウンドで、非常に良かったことを思い出してしまった。「癒し系転向」みたいな書き方もあるかもしれないが、”Living”, “Hana”へ繋がっていく自然体の白井さんが実感できるアルバムだと思う。
出色の出来は、6. 「抱きしめて」だろうか。1993年の”Baby Face”にも収録されている曲だが、このアコースティックバージョンはすごいなあ。7.「遠い日の幻に聞いた」も、じっくり歌いこんできて心に響くのだ。2. 「北風」みたいな歌を歌えるようになったのも、「学園祭の女王」から等身大の白井さんへの転身の苦闘の結果だと思うと、ぐっと来るものがある。お勧めの一枚です(なかなか出くわすことも少ないとは思うが)。
白井貴子、”Pascal” (1983)
ジャケットのパステルカラーと白井さんのおみ足につい目が行きます。EPOの”High touch, high Tech”のジャケットと似たような構図。歌謡ロックンロールですかねえ、これは。確かに当時はこういう音がもてはやされた記憶はありますが、曲名が”ドキドキBy My Side”とか”愛がなければ-愛’m down-“ですもの。気の毒な作品です。
白井貴子、”Good to be wild” (1993)
6曲のみのミニアルバムだが、これも白井さんの転換期の秀作。これ以前の「ロックンロール+高音域ぶら下がり絶唱」路線から、現在の「ソフトロック+中低音域唄い込み」路線の中間に現れた、「中低音域ロック」路線とでも言っておきましょう。6. “Desire”あたりは以前の芸風がだいぶ残っているものの、アコースティックギターのカッティングが心地良い1. “Come Together”や、無理なく曲の最後まで爆走しきる3. 「ワイルドに行こう!」あたりがよろしい。
Dreams Come True, “Love unlimited” (1996)
“Love Love Love”の一曲しか聞くつもりもなく、250円で仕入れたアルバム。
だいたい、私は恥ずかしくてドリカムなんて買えないのだ。なぜそういうことになるかと言えば、やはりデビュー当時の印象だろうか。バンドのコンセプト・アルバムタイトル・ジャケット・音の作り・全てが、ちょっと先発のイギリスのグループSwing Out Sisterをぱくっているように思われた。この見方はあながち外れてはいないと今でも思う。しかし、その後ドリカムは高い音楽性を発揮して、邦楽として輝かしい独自の地位を築くに至ったのは言うまでもない。
さて、この”Love Love Love”, 1995年の年間チャート1位曲で、掛け値なしのバラードの名曲だ。この年アリゾナに居て日本にいなかった私がなぜこの曲に思い入れが深いかといえば、日系の貸しビデオ屋で借りて見ていたドラマ「愛していると言ってくれ」の主題歌だったから。トヨエツも良かったが、やはりこの時期の常盤貴子は良かったなあ。
で、ここで連想してしまうのが、(前出の)Swing Out Sisterの“Now you’re not here”だ。この翌年だったか、常盤貴子は「真昼の月」というドラマでも好演している。その主題曲だったこの不朽のバラードの名曲である。
長くなったが、結論は、「”Love Love Love”と”Now you’re not here”の二曲は、常盤貴子とバンドカラーの類似性で、私の頭の中ではがっぷりとリンクされている」である。
荒井由実, “MISSLIM” (1974)
初期四部作の中でも、わたしとしては最高傑作ではないかと思う一枚。
1.「生まれた街で」は、四畳半フォークっぽい材料でもあり、歌謡曲っぽい材料でもあるのに、しっかりポップスになっているというのが不思議な曲。2. 「瞳を閉じて」は名曲。ボーカルのレコーディングはダブリングなのか?これが功を奏している感じ。3. 「やさしさに包まれたなら」も、最近のJR東日本のCMにも使われるなど、時代を超えて通用する曲。4. 「海を見ていた午後」は、山本潤子さんのページにも書いたけれど名曲。歌の巧さとか声質という点をとれば山本潤子さんの足元にも及ばないのだけれど、アレンジも含めた曲の良さとか深みという点をとるとやはりオリジナルのこちらに軍配があがる。これは、「卒業写真」とか「中央フリーウェイ」でも同じことなんだけれど。ちなみに以前ブログにも書いたけれど、「坂をのぼってひとり今日も来てしまった」という歌詞なのだが、これを根岸の方から歩いて登っていったのであれば、それはかなりご苦労さまなことです。5.「12月の雨」は、EPOもほとんどそっくりそのままのアレンジでカバーしていたけれど、やはりいい曲だ。このアルバムにも参加している細野・鈴木両氏が参加していたはっぴいえんどの名曲に「12月の雨の日」というのがあり、なにかしら関連があるのかと昔から思っているのだが、これに関しての記述はどこでも見たことがない。8. 「たぶんあなたはむかえに来ない」は、ピアノとベースがいいなあ。荒井由実の高音域ってのはヘッドフォンで聞いてるとなかなか辛いものもあるんだけど。そしてアルバムを締めるのが、10. 「旅立つ秋」。
荒井由実、”COBALT HOUR” (1975)
渡辺美里、”My revolution” (1986)
この曲の発売は1986.1.22、石野陽子が出ていたTBSドラマの「セーラー服通り」で使われた曲だ。この曲を初めて聴いたときの衝撃は忘れ得ない。PV以外のテレビで渡辺美里を最初に見たときのことは、はっきりと覚えている。当時のランキング番組の最高峰だったTBSの「ザ・ベストテン」初出演のときだ。発売直後が最高で上位からは2-3週で消えてしまうような現在とは違い、当時のチャートアクションはゆっくり上がり、ゆっくり下がっていくのが主流。渡辺美里はランクインした最初の数回は出演拒否をしてから、何週目かにどこかのライブ会場から初登場したのだが、緊張のあまりがちがちになっていたのがテレビでもはっきりと見てとれ、歌の出来も芳しいものではなかった。強がっている19歳、という感じだったが、それでも初めて見た動く渡辺美里には感動したものだ。
それから20年、初出場の紅白でこの曲を聴いてから三時間と経過していない。その時間だけチャンネルを譲ってくれた嫁に感謝。デビュー20周年だった2005年を締めくくるにはふさわしい舞台だったのだろうと思う。久々にテレビで歌っていることを聴いたけれど、その堂々とした様子に、ダメダメだったあの日のベストテンのことをふと思い出した。最近セールスがちょっと持ち直してきている彼女も、先人の白井貴子やEPOのように、売れた時期を過ぎても歌い続けたことで、静かだが強いメッセージを送ることが出来るようになったということか。しばらく渡辺美里ウォッチをさぼっていた僕だが、また注意を向けてみようと思う。
渡辺美里、紅白初出場に驚く
Paris Match, “Voice” (2005)
11/23にシングルが発売になった直後だそう。先週末にFMで何回か聞いて興味を持った。これ以前の作品をまったく知らないし、DJが「クラブシーンで・・・」と言いかけた途端に別の局に移ってしまうというほど邦楽のクラブ系に拒否反応が強い僕なのだけれど、この曲はいいね。思わずシングル買いました。
杉山洋介と古澤大の音の作りは、かっちりと計算されていて心地よい。オリジナルラブの田島氏がプロデュースしたアンナバナナの”high dive”あたりを思い出す。ドリカム的でもあるとも言えるかな。(ということは、Swing out Sisterっぽくもあるのか)。
でも、やはり決め手は、ボーカルのミズノマキの声だろう。独特の透明感と、ふっとファルセットに抜く歌い方、理屈抜きにいいと思える。弱点はといえば、残念ながら歌詞が意識に残らないこと。適切な表現ではないかもしれないけれど、インストものとして聞いているっていう感じだろうか。ミズノマキの声が楽器として優れていると言えるかもしれない。
まあとにもかくにも、以前の作品も聞いてみようかという気に、ちょっとなったのだ。
「海を見ていた午後」(荒井由美)
ある午後、カーステで荒井由美の「海を見ていた午後」を聞いていたときの、妻(はまっこ)との会話。
私「この歌詞に(山手のドルフィンに)『坂を上ってひとり今日も来てしまった』ってあるけど、これは根岸の方から登ったってことかね。」
妻「そうじゃないの」
私「えらく急だよね。あの坂。歩いて登ると。」
妻「ご苦労さんなこって」
私「まったくご苦労さんなことで」
妻・私「げらげらげら」
The Indigo, “My Fair melody 2” (2004)
Satisfaction”, Americaの「名前のない馬」、Van Halenの“Jump”と、好きな曲が並んでいたので期待したのだが、ちょっと遊びすぎですね、これは。まあでも、アコースティックっぽくまとめた“Jump”は、なかなかかも。
EPO, “Go Go EPO”(1987)
上大岡の、とあるコインパーキングは旧千円札しか受け付けない。近くの中古CD屋に飛び込んで、釣銭目当てで買い付けたのがこの一枚。実は、このアルバム、LP時代に死ぬほど聞いた一枚なのだ。一番印象深いのは、7.“Middle Twenties “。婚期がどんどん遅くなる現代にあっては「20代なかばで、そんなにあせっていたのかなあ、あの時代。」と思ってしまうのであるがいい曲です。イントロのシンセが、どことなくVan Halenの”Jump”だ。あとは、共演のバンドの名をそのまま題名にしている「センチメンタル・シティ・ロマンス」(名古屋の西海岸っぽい音を出すバンド。1998年の“Soul Kitchen”でも共演している。)も頭から離れない。アルバムを締める「八月十七日」も、あの時代を思うと泣けてくる曲だね。
アンナ・バナナ, “Sing Selah” (199?)
同じ歌い手さんなのに、曲のプロデュースでこんなにもつまらなく聞こえるのか?っていう、妙な感動(失望)があります。”Sing Selah”だけは、まあまあいい曲ですよ。
平松八千代、”Travelling Soul” (2004)
長いキャリアの中でも、これが初ソロ作ということになる。あまり店頭では遭遇せず、5店目くらいの横浜西口のHMVでようやく購入した。最初の正直な感想は、「微妙なアルバムだな」であった。正直、Soy時代の八千代さんを知らなければ、おそらく購入していなかったと思う。どうもアルバム全体を通じて突き抜けきらない感じがするのは何故だろう、と随分考えた。曲がいまいちなのか、アレンジの問題なのか、歌い方なのか、声質の変化なのか、録り方の問題なのか、と。ヒントになったのは、「抱きしめたいのに」とか“Rescue Me”だった。いわゆる、「英語歌い」というやつか、日本語として響いてこないのだ。また、声域の広さを過剰に意識したのか、ワンフレーズ中でかなり音域の飛ぶ曲がかなりある。八千代さんの場合、シームレスに全部の音域をカバーするのではなく、それぞれの音域をそれぞれちょっと違った歌い方でカバーするタイプなので、音域の飛ぶフレーズはぶち切れに響いてしまう感がある。
そういう点から見ると一番出来の良い曲は、桑田佳祐の“Journey”のカバーではないかと思う。長めの文節からなる歌詞と、ゆったりしたメロディーの動きが八千代さんには合っているように思う。「これは日本語か?」とデビュー当時物議を醸した桑田さんの曲だというのが皮肉なところだ。
などと、ちょっと不満を持ちつつ、購入後数日を過ぎると、“You are like the sunshine”のメロディーを口ずさんでいる自分に気づく。“Back to me”なんかも、Love Psychedelicoっぽいなと思うけど、好きな曲だ。“Love is blue”あたりは、Indigoっぽくもあるが、やはり良い曲。何だかんだと言いながら、結局はまってしまっている自分。やはり八千代さんは素晴らしいのです。
EPO, “Wica”(1992)
正直な話、上記の“Fire & Snow”がぴんと来なかったので、発売された時には購入しなかったのだ。発売から12年も経ってから、レコファンで入手してはじめて聴いた。全くもって、失われた12年を呪ってしまうようないいアルバムなのだ。
全曲とも、EPO自身の作詞・作曲。「花」でのピアノはEPO自身。はるか前に、ライブでピアノを弾き語る姿を見たことがあったが、なぜ自分のアルバムでは演じないのだろうと不思議に思っていた。「汽車」では、以後延々と続くChoro Clubの笹子さんとのコラボレーションが聴ける。「ジェラシーと呼ばないで」は、以前からのEPOの路線の音を踏襲しつつも、詞の面では今に続く新しい世界が開かれつつあったんだな、と今になって感じさせられる。「百年の孤独」は、後に“air”にも再録されるのだが、自分の歌詞の世界をしっかり広げだしていることが感じられる。「見知らぬ手と手」はずっしり重い曲を、さらりとしたメロディー(どこか「音楽のような風」を思い起こさせる)に乗せて、ピアノ弾き語りで歌いきった佳曲。
音的には、従来からのポップス、ブラジリアン、アジアンと、多少まとまりが悪い部分もあるが、現在に至るEPOがこの辺りで芽吹いたのだな、ということがわかって、それも一興。
The Indigo, “Song is love” (2004)
ちょっと油断をしていたすきに、二枚アルバムが発売になっていた。一枚飛ばして、オリジナルとしては5枚目となる最新盤を先に購入。全体的に、夏を強く意識したアルバムの作りになっているように思われる。
“kiss in the sky”からアルバムは始まる。極端に上手ではないけれど中低音でじっくり聞かせる田岡美樹のボーカルが冴える。ゆったりサウンドから私が思い出したのは80年代初頭のAORグループSneaker。夏の昼下がりにぼーっと聞くのにふさわしい。続く“squall”は、ボサノバっぽいリズムの刻みで、これまた心地よし。「恋の魔法」は、生ギターのカッティング、ブラスのアレンジが心地よいポップ・チューン。“miracle”なんかは、とてもIndigoらしい曲だ。(ちなみにイントロからは、EPOの「無言のジェラシー」が思い出される)
渡辺美里、”Big Wave” (1993)
一見してわかるように、ジャケットのアートワークがこのあたりからがらっと変わってきた。
正直、このアルバムは「外れ」。「いつかきっと」が辛うじていいかな、という程度。「さえない20代」とか“Audrey”なんか、メロディーもアレンジもすごくいいのに、歌詞がうまく乗ってないんだよなあ・・・。声質がマッチしていないというのも大きいかもしれない。
渡辺美里、”Tokyo” (1990)
このアルバムを聞いたとき、なにか転機が来たのかな、と感じた記憶がある。「サマータイムブルース」で「第三京浜選んだ・・・」という歌詞が出てくるのだけど、たしか渡辺美里が免許取って、自分で運転しはじめた直後だったのではないかと思う。ささいなことなんだけど、高校時代をひきずった歌からちょっと抜けたのかな、と感じたのであった。でも、この曲は未だに聴けるいい曲だ。
あともう一曲挙げておくと“Boys kiss Girls”である。歌詞はどうにも馬鹿らしいのだが、村田和人らが参加したさびの部分のコーラスワークが素晴らしいのだ。短いフレーズなのだけれど、とても強烈。佐橋さんのギターもいいね。でも。岡村靖幸の色が強く出たアルバムで、そういう意味ではちと苦手。
アンナ・バナナ, “singz of love” (1994)
以前このページに、「これ(上記の“High Dive”)が現在までのところ、アンナバナナの最後のソロ作品になってしまっているようで、とてももったいないと思う。」と書いていたが、それは間違いであった。偶然出くわして購入した実質4曲のミニアルバムでも上質のポップスが展開されている。
渡辺美里、”Baby Faith” (1994)
このアルバムは良いと思う。「あなたの全部」、「真夏のサンタクロース」あたりが好み。アメリカンな音作りなんだけど、ジャケット撮影は何故かフランス(たぶんパリ)みたいで、わけわからん。
渡辺美里、”Lucky” (1991)
大貫妙子、”History 1978-1984″ (1999)
アルバム単位でフォローしてないので、企画ものアルバムを紹介する。真面目なファンの方、ごめんなさい。
「黒のクレール」は、「やっぱり大貫妙子は鬼才だなあ」と思ってしまう曲。「愛の行方うらなうとき・・・」のあたりのフレーズを聞くと、他の日本の女性ミュージシャンを寄せ付けない高い音楽性に圧倒される。
一方で、「海と少年」のようなポップスの王道を行く曲をかけてしまうところがすごい。この曲は、アレンジ・キーボードに坂本龍一、ギターに鈴木茂、ドラムに高橋ユキヒロ、ベースに細野春臣と、すごい顔ぶれだ。
ところで、わたしの一番のお気に入りは、大貫妙子っぽくない「ピーターラビットとわたし」だ。坂本龍一のアレンジがやっぱりすごいのだ。あと、「横顔」もとても好きな曲。しばらく前に、NHK-BSの京都を紹介する番組の主題歌として使われていたし、EPOもカバーしていた。「愛の行方」、「幻惑」、「夏に恋する女たち」、「最後の日付」も、名曲だと思う。
うーん、やっぱりすごい・・・。勉強しなおして、隠れ名曲発掘せねば。
渡辺美里、”Hello Lovers” (1992)
セルフカバーを主としたアルバム。歌唱力は確かに上がっているのだが、かと言って、原曲を上回る仕上がりのものはないような気がする。
EPO, “Goodies”(1980)
キリンレモンのCMで使われた“Park Ave. 1981”がとても印象深い。TBS系の「ザ・ベストテン」の提供にキリンが入っていたために、やたら耳についたのではなかったろうか。思えばあれがEPOとの出会いだったのだな。
渡辺美里、”Ribbon” (1989)
「センチメンタルカンガルー」がとても懐かしい。「雲行きが怪しい」などと歌っているのだが、この年の西武球場は雷雨で途中中止になった「伝説の」ライブだったはず(私は、現場にいました)。「恋したっていいじゃない」もいい曲だ。たしか、このアルバムが出る前の冬の代々木プールのコンサートで、ちょっとご披露されていた記憶がある。
「彼女の彼」は、珍しく歌詞が気に入った曲だった。”eyes”の「悲しいボーイフレンド」に繋がる世界かな。佐橋さんのギターが、またいいのだ。
「さくらの花の咲くころに」もいい曲。「シャララ」も、アレンジワークがいいね。
渡辺美里、”Flowerbed” (1989)
アメリカ録音が一部で行われて、TOTOのPorcaro兄弟とか、Rick Marottaとか、「おおお」という顔ぶれも参加したアルバム。大江千里作曲の「すき」であるとか、「跳べ模型ヒコーキ」あたりがおすすめ。
「やるじゃん女の子」とか「一瞬の夏」とか、今聴いても音の作りはいいなあ、と思う。しかし、歌詞がうまく乗っていないなあ、と他方で感じてしまう。当時はうまく気持ち的に入り込めたのだけれどもねえ・・。
渡辺美里、”Breath” (1987)
“Boys Cries(あの時からかもしれない)”で決まり!というアルバム。佐橋佳幸氏のアコギのカッティングが、ひたすらにかっこよい。この曲を提供しているのは、後にSPEEDを手がけることになった伊秩弘将で、これがソングライターとしての彼の浮上のきっかけになった。“Happy Together”のさびでのコード進行は、CSNの”Judy Blue Eyes”と一緒で当時から笑えたが、今聞いてもまだ笑える。
当時とても気に入っていたのが、ちょっとだけジャズフレーバーの「Milk Hallでお会いしましょう」。タイトル曲の“Breath”も、(歌唱力のあらは見えるが)素晴らしいバラード。“Pajama Time”は、青春路線がうまくつぼにはまるいい曲。
渡辺美里、”Spirits” (1996)
無言
山本潤子、 “The Best” (1998)
1998年に発売されたソロ作で、過去のヒット曲のセルフカバーを集めたベスト盤となっている。「フィーリング」、「中央フリーウェイ」、「海を見ていた午後」、「卒業写真」、「翼をください」などなどと豪華なラインナップ。
オリジナルの方が良かったんじゃないの?と思う曲が多いのだけれど、いい出来だなあ、と思うのが、「海を見ていた午後」。山手のドルフィンから見る海の景色がくっきり思い出される。「卒業写真」も柔らかい声とバックコーラスのアレンジが心地よい。「緑の季節」、「風船」もいいね。「翼をください」のソロバイオリンを軸としたアレンジは、Celine Dion (with Kryzler & Kompany)の“Fly”(鈴木保奈美、佐藤浩市、岸谷五朗、鈴木京香が揃い踏みしたフジのドラマ「恋人よ」の主題歌)を意識したものではないかと思われてならない。バイオリンを弾いているのが、葉加瀬太郎じゃないかとクレジットを確認してしまった私。答えは、加藤高志さんという方だったが。
太田裕美、”The Best”(1997)
ベスト盤ではあるが、シングルコレクションではない、渋めの選曲。ライナーノーツには、全曲に関して、太田裕美自身によるショートコメントがついている。
やはり、初期の松本隆作詞、筒美京平作曲の一連の作品は素晴らしい。当時私は小学生だったが、太田裕美ファンってのは大学生の世代に多かったような記憶がある。「青春のしおり」とか「茶いろの鞄」なんかを聴くと、その訳がわかる。こういう曲がいいと思われるようになったのは、やはり私自身がCSN&Yに染まり、「はっぴいえんど」に染まり、という経過を辿ったせいだろうか。
「雨だれ」、「夕焼け」、「九月の雨」などのシングルA面曲は、もちろんいい。しかし、やはりは決め手は「木綿のハンカチーフ」だろう。この一曲が無ければ、私はクラシックしか聴かない人のままで終わったかもしれない。
「恋愛遊戯」、「心象風景」、「煉瓦荘」、荒井由実詞・曲の「青い傘」、伊勢正三詞・曲の「君と歩いた青春」とかも名曲。これだけいい曲をもらっていながら、ビジネスとしては「歌謡曲」に軸足を置かざるを得なかったところが、太田裕美の中途半端さなのかもしれない。こういう曲を、昔の歌謡曲アレンジじゃなくて、今の音でアレンジし直して、まとめてアルバムにしてくれたら、即買ってしまうな。
しかし、こうやって改めて聴いてみると、高音域を力まずに抜いて出せる歌い手さんが好きな自分の趣味の原点が太田裕美にあることを認識させられる。自分の年齢も当時の3倍4倍ほどになっているのだが、変わらないものは変わらないのだね。
The Indigo, “My fair melodies” (2002)
発売後しばらく経って気づいて購入したのだが、なんと全曲とも英語曲のカバーという一枚。このグループの音楽的背景がよくわかる一枚。変な英語を歌詞に入れ込まないところがいいと以前書いたが、英語のときはきっちり英語で勝負してくるというその姿勢におそれいる。田岡美樹の英語だが、アクセントはかなりきれい。
選曲も、原曲の年代がまちまちで面白い。もちろん、知ってる曲も、知らない曲もあるのだが、一曲目がいきなりCarole Kingの“I feel the earth move”で、「えらい、渋いところ突いてくるのぉ」という感想を持った。それにしても、市川氏のアレンジは、やはり素晴らしい仕事なのだ。
カーペンターズが原曲の“Rainy days and mondays”なんかは、どうしても原曲に負けてしまっている。しかし、カレンのphonogenicな声質(あるインタビューで、カレンのレコードに乗りやすい声質をRichardがこう表現していた)と比較しては、それはやはり酷というものだろう。
Suzanne Vegaの“Luka”を取り上げていたのには、ふと学生時代が懐かしく思い出された。元の歌詞は幼児虐待を扱ったシビアなものだったと記憶しているんだけど、仕上がりは上質のポップ。
Minnie Ripertonの“Lovin’ you”にチャレンジしているのも、なかなか面白い。原曲の高音域ボーカルとは大きく異なり、中低音域で抜いたボーカルでこの曲を歌い上げるというのは、なかなか意表を突いた攻撃だ。
原曲の解説などについては、the indigoの公式サイトにあるこのアルバムを紹介しているページ中の、田岡美樹筆のライナーノーツの方が参考になる。ご一読あれ。
The Indigo, “sound of fragrance” (2002)
早いものでもう四枚目なのだ。生ギターのカッティングで組み立てていくような音作りは影を潜め、ホーンを使ったアレンジが多くなっているのだが、それでもやはり市川さんの仕事は素晴らしい。
しょっぱなの「永遠の愛」から、indigoサウンド炸裂。「といかけ」から「素晴らしい明日」に続くあたりなんかは、カーペンターズですねえ。「夏の雨」の最初のメロディーは、山下達郎の”downtown”っぽいかな。
“stay”は、このアルバムでは唯一と言ってもいい、アコースティックな薄い音の作りの曲なのだが、素晴らしい。力の抜けた田岡美樹のボーカルがいいね。
Hi-Fi set、”The Best Hi-Fi set”(1998)
これもベスト盤。一曲目の「卒業写真」はライブ録音バージョン。やはり不朽の名曲だ。「土曜の夜は羽田に来るの」も、いい曲だ。この曲が出た頃の羽田は、沖合移転前で、まだ国際空港だったんだろうな。旧羽田空港は、帰省などで何十回と使った空港だ。いろんな事が思い出される。このあたりの荒井由実提供の楽曲は、やはり(本人の歌で聞くより)いいなあ。「中央フリーウェイ」がこのアルバムに収録されていないのは残念。
「フィーリング」はHi-Fi setの最大のヒット曲。売れてた当時はピンと来なかったが、今聞くとやはりいい曲だなと思う。原曲がもちろんいいのであるが。“boy friend”、「たった一枚のフォトグラフ」の潤子さんのボーカルもいいな。
しかし、70年代に荒井由美の楽曲を洗練されたアレンジで歌い、時代の先を行ったHi-Fi setではあるが、他に優れた邦楽ポップスミュージシャンを輩出した80年代のシーンにあっては、やはりパンチ不足だったような気がする。今、鈴木・細坪とやってるユニットみたいに薄い音作りの方が、潤子さんの歌が生きるんだな、とこのアルバムを聴いて思った。
Soy, “Soy” (1998)
Soyの一枚目。二枚目を先に聴いたのでそのインパクトの方が強いのだが、こちらもなかなかのアルバム。
しょっぱなの“Sugar Days ~あの日~”は、ペダルスチールなんかも入った初期のEaglesを思い起こさせる上質のポップス。続く「真夏へ続く道」は、ちょっとOrleans風かな。生ギターのからみも、とても良し。「約束」は、八千代さんのボーカルが冴え渡る佳曲。「夕焼け前」も、70年代っぽい音で好き。“Lemonade”は、ホーンアレンジやフレージングがSteely Danっぽい。いいところ突いてくるなあ。
「一週間」は、生ギターの絡みを軸にすえた薄い音の作りで、八千代さんのボーカル、バックのコーラスワークともに冴えている。締めの「Going Home~家に帰ろう~」もまたいい曲。アルバムを通して、とにかく私好みの音で文句なし、って感じだ。
EPO, “CM tracks”(1992)
タイトル通りに、CMで使われた曲を集めた企画物。しかし、これが一種のベストアルバムのように思えてしまうのは、タイアップが成功してきたEPOらしい。
他のアルバムには収録されていない曲が5曲ほど入っている。「エンドレス・バレンタイン」とか懐かしいね。
EPO, 「さとうきび畑」(2002)
帯には「癒し系の原点と誉れ高いアルバム「UVA」より」とある。”UVA”は1995年発売のアルバムだが、私はこの時期EPOへの興味を失っており、かつ日本にいなかったので、このアルバムはノーマークだった。そのアルバムから、二曲をシングルとして再発したのが本作。
今のEPOのスタイルの原点がはっきり見える二曲だ。「さとうきび畑」のアコースティックな音の作りは確かに癒し系であろうが、沖縄戦を題材に取ったと思われるその歌詞はずっしり重く、私は凍り付いてしまった。
もう一曲は”Pump! Pump!”に収録されていた「音楽のような風」のアコースティックバージョン。これも、ボーカルとギターのみの薄い音の作りで、素晴らしい仕上がりだ。ブレスの取り方までもが計算されつくされているような、すごい音。必聴。今までこれを聞き逃していたとは、無念でならない。
赤い鳥,「赤い鳥シングルズ」”(1999)
ハイファイセット以降のおしゃれっぽい音の作りよりは、Peter, Paul and Mary流れの関西フォークの残り香がする赤い鳥の方が個人的に好き。シングル収録曲を集めたこの一枚を取り上げてみる。
私と赤い鳥との遭遇は、高校時代に溯る。当時我が家ではNHK FMの「朝のポップス」を聴きながら朝飯を食う習慣があったのだが、「誰のために」と「忘れていた朝」が続けて流れたことがあった。その衝撃は忘れられない。何がかっこよかったかって、アコースティックギターのバッキングなのだ。その当時はニューミュージックの時代だったのだが、大方はスリーフィンガーかコードカッティングかという単純なプレーばかりだった。それより10年も前にこんなかっこいいプレーがやられていたのかと、愕然としたのである。話しは女性ボーカルから大きく逸脱していくが、70年代前半のアコースティックギターには、北山修と加藤和彦の「あの素晴らしい愛をもう一度」とか、ガロとか、はっぴいえんどとか、風とか実はかなりかっこ良いものが多かったのである。アリスと松山千春には、日本のアコースティックギター文化を後退させた責任を痛切に感じて欲しいものだ。
で、潤子さんである。やっぱり、一言で言って声が美しい。特にあらゆる曲で歌い出しの部分がすごいのだ。「忘れていた朝」の「わすれた」とか、「河」での「河よ」であるとか、ほんとうになにげないフレーズでの中音域の豊かさに、胸をぎゅっとつかまれる思いがする。これはほとんど生理的な問題だとも言えるのであるが・・・。「忘れていた朝」は、さびの部分でのコーラスワークは後のハイファイセットでの音の作りにつながっていくような面白いもので、ほんと名曲だと私は思う。
アレンジが古いので多少聞きにくい部分もあるし、「翼を下さい」が私が好きなバージョンとは違っていたなどという多少の不満があるにせよ、お勧めのアルバムである。
白井貴子、”HANA” (2001)
アコースティックにこだわった一枚。前作ほどのインパクトは感じなかったけれども、「アジサイ」、“Blooming Days”、“Peace of love”、「野生のマーガレット」(1990年の”BOB”からのセルフカバー)など、いい曲が多いアルバムだ。
EPO, “Pump! Pump!”(1986)
個人的にはこの頃一番真面目にEPOを聴いていたので、思い出深い一枚。
しかし、アルバムの中での当たり外れは大きい。2.「音楽のような風」と10.「12月のエイプリール・フール」が正解。「音楽のような風」はカセットテープか何かのCMに使われていたはず。
渡辺美里、”She loves you” (1995)
アルバム単位でおすすめできるのは、上記の”eyes”くらいである。これには仕掛けがある。特に三枚目以降、彼女自身はR&Bやfunkっぽい音へ傾斜してアルバムにはそういう曲が多く収録されている。しかし、シングルで当てたのは大抵がアメリカンロック的な曲なのだ。単純に私はアメリカンロックの音が好き。であるからして、ベスト盤の方が安心して聴けるのだ。というわけで、デビュー10周年記念のベスト盤。めぼしい曲はすべて入っている。
しょっぱなの「世界で一番遠い場所」が好きだった。この曲はこのアルバムのための書き下ろしだったはず。ちょうどアリゾナに住んでいた頃、買い出しに出かけたロサンゼルスのリトルトーキョーのヤオハンでこのアルバムを買い、日本から遠く離れた場所で毎日この曲を車の中でかけていた。
もちろん、名曲“My revolution”も収録されている。「サマータイム・ブルース」とか「真夏のサンタクロース」もいい曲だった。「夏が来た」とか“10 years”はあまり好きな曲ではなかったけれども、何故か痛烈に西武球場が思い出される。
渡辺美里、”Loving you” (1986)
“My Revolution”の大成功を受けて出された二枚目。無理して二枚組に仕立てあげたため、質的には低い仕上がりになってしまった。しかし、このアルバムのタイトル曲である“Loving you”だけはぜひ聴いてほしい。シングルカットされなかった曲だが、日本語で歌われたロックバラードの中でも、特に優れたものとしてお勧めしたい。
EPO, “POP TRACK”(1987)
これは、山下達郎の「いつか」とか、サザンの「いとしのエリー」とかのカバーをやっているアルバム。
お薦めは、1 .「三番目の幸せ」で、これはオリジナル曲。花王ソフィーナのCMで使われてた。個人的には、人生を変えた悲喜こもごもの一曲。
5.「横顔」は大貫妙子の曲だが秀逸。10.“Loving you”(原曲はMinnie Riperton)も良い。浅野ゆうこのアイドルとしての唯一のヒット曲である3.「セクシーバスストップ」のカバーをやってたりするのには、笑ってしまうが。
Soy, “Soy2” (2000)
きっと20年以上経っても、時折CDキャビネットから引きずり出して聴いてしまうアルバムだろう。そう確信させられる一枚。西海岸っぽいアコースティックロックとアメリカンポップスが絶妙に混じりあった感じが心地よい。
彼らを知ったきっかけは、ある日ふと気になって「佐橋佳之」のキーワードでインターネット検索をかけてみたことだった。佐橋氏は言うまでもなく渡辺美里の初期作品やライブで中心的な役割を果たしていた、アコースティックな音が偉くかっこよかったギタリストである。探し当てたサイトにはこうあった。「現在『山弦』というギターユニットと、それにさらに元ランパの平松八千代を加えた”Soy”というユニットでの活動をしている」。ランパ・・・「イカ天」に出ていたなあ。あのボーカルの落ち着いた声は好きだった。10年以上経過して私の好みも変り、あの声質はいっそう好きになっている。そういう思いが瞬時に頭をかけめぐり、このアルバムはメンツを聞いた時点で(実際に聴いたことがないにも関わらず)「買い」候補の筆頭へと躍り出したのである。
で金沢郊外のCD屋で探し当てたのが彼らの二枚目にあたる”Soy2″。アコギ二本のからみから始まる一曲目「おしえて」から、すっかり狂喜乱舞状態に陥ってしまう。「リベルテ」は、Steven Stillsっぽい音作りにこれまた狂喜乱舞。「恋に似ている」は、とてもきれいな高音域が聴ける。さび前の曲想は大貫妙子っぽいなかな?「嘘は罪」では、中音域が生理的に気持ちいい。いまどきのお子様シンガー達にはこういう世界は作れないだろうなあ。「ひなぎく」や“SUBWAY”や「遠い日」は80年代中期のEPOのスローな曲っぽい。「雪降る街でノースリーブ」はEPOのポップス路線時代の曲っぽい。そういえば佐橋氏って高校はEPOと同窓で、業界デビューはEPOのレコーディングだった筈、と思い出してしまった。「EPOっぽくて良い」と私が書いていると受け取られると、それはちょっと不本意。声質では八千代さんが上をいっていると思うし、テクニック的にもまったく遜色ない。
アコースティックギターフリークの方々にもこのアルバムはとてもお勧め。計算しつくされたアコースティックギターワークと、声質最高の女性ボーカル。こんなグループがあればいいなと思っていたのが実現されてしまうなんて、邦楽もなかなか捨てたものでないなと思った次第。
EPO, “Soul Kitchen”(1998)
全曲御自分で書いておられる。盟友Sentimental City Romanceが二曲に参加。“soramimi”のアレンジが面白い。「寂しくならない別れの言葉」が、昔の「音楽のような風」みたいな感じで気に入る。(1999.1.30購入)
EPO, 「う・わ・さ・に・な・り・た・い」(1982)
正直なところ、わたしとしてアルバム単位でのめりこめるのは本作以降。
このアルバムでのベストトラックは、カバー曲のセルフカバーというややこしい境遇の“JOEPO~DOWN TOWN”。“Girl in me”と「うわさになりたい」は、とてもいいポッポス。「雨のめぐり逢い」はきれいなバラード。「おしゃれ」(死語)な恋愛の姿を題材に取った歌詞は、今聴くとかなり笑えるものもある
白井貴子、”LIVING” (1999)
随分探し回り、21世紀になってからようやく購入。アルバムタイトルにもなっている“LIVING”は名曲だと 思う。しみじみと聴いて欲しい。“Born Free”もずしっと響く内容の歌。“人は自由のため生まれ て来た・・・そう信じたいよ・・・”。下手すれば安っぽく聞こえる歌詞なのに、説得力を持って聞こえるのはやはり白井さんだからだろう。EPOなんかもそうだけれど、売れっ子の時期を 過ぎて、その古きよき時代にしがみつくことなく、それなりの年齢になっても現在を歌いつづけることを選んでいる人の強みなのだと私は思うのだ。
「元気になーれ」は上述の「ひるどき日本列島」でさかんにかかっていた。白井さんが地方ロケに出かけて、漁港と かで歌ってしまうのだ。職場の食堂で昼飯食う手を休めて、「おっ、白井さんだ」などと見入っていた。この曲は気合を入れるのに大変向いている。「緑の河」はちょっと赤い鳥の 「河」を思い出してしまうな。
EPO, “Dance”(1997)
1. “Friends”が素晴らしい。バックアップがPat Metheny Groupっぽいのだ。歌詞もすごくよくて、癒し系転向が見事に成功したことを印象付けた一曲。EPOの音楽とは長く付き合っていけそうだと、本当に思うことが出来るようになった。
白井貴子、”Angel smile” (1997)
CDの背には”GOLDEN J-POP/THE BEST TAKAKO SHIRAI”とある。80年代半ばまでの売れていた時期の分のベスト盤という位置づけらしい。洋楽一辺倒だった私はリアルタイムでこれらの曲を聴いていなかったことを、ここに白状しておく。
音の造りが、シンセドラム・シンセベースを多用したかなりミーハーなものので、今となっては笑えてしまう曲も多い。「夢中大好き」と か、“Chance”のような曲は、下記のライブでアコースティックな編成で演っていたけど、これは良かった。“Color Field”もメロディがいいねえ。アレンジはBruce Springteen辺りを意識したものだったのかな?ピアノ弾き語りの“Happy New Year”は今聴いても違和感がない、佳曲だ。
EPO, “Vitamin E•P•O”(1983)
これを初めて聴いたのは大学1年の夏の帰省中のことであった。華やかな渋谷の人通りなど思い出しながら、「こういうポップスはあういう街からじゃないと出てこないよな。」などと、カルチャーショックに見舞われつづけた東京暮らしの最初の三ヶ月を静かな札幌の町で総括したりしたものだ。ジャケットは今見るととても恥ずかしいものがあるが、名曲揃い。今年(2008年)でこのアルバムが出てからちょうど四半世紀。未だに輝きを失わない絶対的な名盤だと思う。後年のTVのインタビューで見ると、この頃しみついた元気者のイメージで、本人は後からずいぶん苦しんだらしいが、ファンなんて、お気楽稼業だからなあ。
イチオシは、5. 「う、ふ、ふ、ふ」。毎年春になると、今でも聞きたくなる曲。休日の晴れた午後の渋谷のスクランブル交差点とか公園通りで。その他、1.“Vitamin E•P•O”と、ひょうきん族で使われてた2.「土曜の夜はパラダイス」は、初期のPOP爆走路線時代を代表する曲。3.「無言のジェラシー」, 4.“Would You Dance With Me?”あたりも忘れられない曲だなあ。6. “PAY DAY”は、当時はちょっと近寄りがたかった六本木の街が思い浮かぶ。「明日は日曜日、踊りに行きましょう」って歌詞からは、この当時はそういえば週休二日制が定着する以前だったな、と思い出す。7.「かなしいともだち」もいい曲だなあ。8.「五分遅れで見かけた人へ」は、おそらくは成田空港が舞台と思われる、新婚旅行に出かける昔の恋人を見かけたって曲。成田空港ってのは僕にとっても悲喜こもごもの場所で、いろんなことを思い出してしまいますね。
今井美樹、”from 1986″ (1998)
実はまじめに研究しているというわけでもないので、ベスト盤を挙げておく。歌っている曲の大部分は正直言って好きでも嫌いでもない。では、なんでまた彼女をone of my favorite female singersとして挙げたのか?
理由はただ一つ、この人の声なのだ。今の日本の売れている女性シンガーの大半って、高音域を気張って出しているぢゃあないですか。この人は高音域を「抜いて」出せるところが生理的に好き。声はわりにほそい方なのであろうと思うが、それが良いほうに出ているみたい。こういう声の出し方できる人がいたら、ユニット組んでやってみたい。
好きな曲は「瞳がほほえむから」と“Piece of my wish”で、どちらもドラマに使われていたはずだから、まあ月並み。
EPO, “Harmony”(1985)
このアルバムでは、6曲目の「私について」が大のお気に入り。「15の私に手紙を書いたら」、「はたちの私に手紙を書いたら」で始まって、それぞれに返事が来るという歌詞なのだが、最後は「未来の私に手紙を書いたら」「宛名が違うと返事が来たから・・」という展開になるのだ。「うーん、おれが15や20の自分に手紙を書いたらなあ・・」と、ふと考えさせられてしまうのだ。
タイトル曲の“harmony”も、かなりいい曲です。
EPO, “Peach” (1999)
音的には薄目のアコースティックな作りで、チャレンジングなところっていうのはあんまりないけど、それを圧倒するように歌詞がじわっと来る一枚。20代の時にはわからなかった世界だな。EPOっていう人が、いい歳の重ね方をしてるんだなと、そういうことが伝わってくる一枚。この時期は個人的にかなりキツい時期だったので、この一枚には随分と助けられた。
5曲目の“Memories”には、特にはまってしまい、つい口づさんでいる自分に気付く。ばんばひろふみの「さちこ」を思い出してしまうのは、さびの音使いが一緒だから?
6曲目の「あきらめたくない」、も、なかなかじわっとくる曲。
7曲目の「君のさがしもの」もいいね。歌いだしは、多分あおい輝彦の「あー、ことしも~~」って曲(「君だけを」だったっけか?)の影響受けてるな。でも、さびのあたりは80年代中期のエポっぽい音の運び。
渡辺美里、”eyes” (1985)
彼女のデビューアルバムであり、かつ彼女の最高傑作。この頃に女性ロッカーが出始めていて、当時の教祖様は「六本木心中」で当てたアンルイス。これに対して地道に人気があったのが白井貴子で、渡辺美里は「白井貴子の妹分」として売り出されたと記憶している。同時期に中村あゆみや小比類巻かおるが出てきたという時代であった。
このアルバムの中では、“Growing up”, 「すべて君のため」、「悲しいボーイフレンド」、そしてタイトル曲の“eyes”が秀逸。曲を提供しているのも、小室哲哉・木根尚登のTM勢、大江千里、岡村靖幸、白井貴子と豪華な顔ぶれ。特に小室哲哉が重要な役割を果たしていて、彼自身にとってもプロデュース業で最初に収めた大成功だったと記憶している(TMが商業的に成功したのはこの数年後)。
これ以後のアルバムと比べると、シンガーとしてのテクニック的には劣る。速い曲では若さに任せて勢いで歌いきっているけれども、特にスローな曲であらが目立つ。しかし、声が圧倒的に若いのだ。これが何事にも代え難い!そして、このアルバムの翌春に、あの名曲“My Revolution”が出て(「セーラー服通り」で使われたんだな)、渡辺美里は時代の寵児になっていくのであった。
平松八千代さんってどんな人?
「イカ天」では異色の子供受けしないバンド「ランパ」、のボーカルだった人。ギターユニット「山弦」の佐橋佳之・小倉博和両氏と組んでのSOYというユニットを経て、現在はソロ活動中。(Soyとは佐橋・小倉・八千代の頭文字を並べた安易なネーミング。その発想ばかりか音作りまでもがCSN&Yを彷彿させる。)最近ではむしろ。桑田佳祐のバックボーカルとして知られているかもしれない。
八千代さんの声質は、どことなくEPOっぽく、どことなく山本潤子さんっぽい。高音域がすごくきれい。でも、個人的には柔らかさと硬さの二面性がある感じの中音域の響きが好き。以前の事務所のページによると、彼女のお気に入りのアルバムは、Joni Mitchellの“Shadows and light” 、シンガーは、Carpenters, Sarah McLachalan, Joni Mitchell, プロデューサーはPat Methenyだそうで、こんなバックグラウンドを持つ人を好きにならないはずがない。
EPO, “Freestyle”(1988)
この時期に行われたツアーのライブ盤。表題曲の1.“freestyle”は、いいポップスに仕上がっている。が、3.「夏の約束」、5.「きゅんと」、9.「小さなkiss」のようなバラードに、良く仕上がってるものが目立つアルバム。
EPO, “air” (2001)
5.「星の舟歌」が、とても印象的な一曲だ。6.「ずっとここにいよう」も近年のEPOらしい佳曲。9.「百年の孤独」は、“Wica”からの再録。EPOがいい年齢の重ね方をしてるなってことが伝わってくるい曲です。
あと一曲どうしても言及しておかなければいけないのが、4.「土曜の夜はパラダイス」。これは冒頭にあげた”Vitamine EPO”の中にも収録してされていたポップ路線爆走時代の曲だが、これを見事にボサノバ調に消化しきっているところを聴くと、完全にあの時代からは吹っ切れたのだなと感慨深いものがある。
The Indigo, “Records” (2001)
プラスティックケースを開けて、いきなり「はっ」と思った人は、昔からの洋楽マニアの人でしょう。CDのラベルが、Atlanticレーベル(CSN&Yなどを手がけていた)のLPのそれを模したものなのだ。
インストを一曲目に持ってきているのに意表を突かれる。二曲目の「ココロニ」から、ボーカルありのindigoワールド炸裂。四曲目の“pain”は、マイナーコードでの生ギターのカッティングが、どことなく「はっぴいえんど」を思い起こさせられ、とても好きな曲。。五曲目の「恋の女神」は、市川氏がindigoの公式サイトのアルバム紹介でネタばらしをしているが、Doobie Bros.ですねえ。
“She said”, 「夏のプリズム」, “melody”、「電話」と、とにかく佳曲が続く。根強いファンが付くグループでしょうね。田舎暮らしでライブとかに行けないのが残念だ。
EPO, “Fire & Snow”(1991)
Virginレーベルからの第一弾アルバムだったが、あまり印象に残ってない。というか、「もうEPOは終わったな」という印象を強く持ったのを覚えている。
しかし、テレビで見たインタビューで、このアルバムのロンドンレコーディングの際に、「君は元気なポッポスより、癒し系の曲を歌うべき声をしている」と言われたのが転機になった、と本人が語っていた記憶がある。
小泉今日子、”Anytime” (1994)
アルバム単位でフォローしてないので、ベスト盤を紹介する。真面目なファンの方、ごめんなさい。
しょっぱなの“My sweet home”は、TBSの東芝日曜劇場「Sweet Home」(1994)の主題歌。山口智子がお受験ママを演じたやつでしたね(遠い目)。作詞は小泉今日子自身、作曲が小林武史。歌が上手でないのは仕方ないのだが、いい曲なのです。
「優しい雨」も、さびの印象が強烈な曲。作曲は鈴木祥子さんだったのだと、最近気付いた。TBS系ドラマ「愛するということ」(1993)の主題歌だったが、ドラマの内容はさっぱり覚えていない。
そして「この曲で決まり」というのが、「あなたに会えてよかった」。この一曲のために、わざわざCDを買ったようなものだ。TBS系ドラマ「パパとなっちゃん」(1991)の主題歌。パパが田村正和、恋人役が大江千里だったかな。ドラマの内容は今となっては思い出せないくらいなのだが、この曲は今でも聴いてしまう。“”さよならさえ上手に言えなかった”という歌詞が泣ける。どうでもいい話だが、Kinki-kidsと吉田拓郎がやってた番組で、篠原ともえがこの曲をアコースティックバージョンで歌っていたことがあった。これも涙ものの素晴らしい出来映えで、篠原ともえ株が私の中で急上昇したのであった。
そして「月ひとしずく」。井上陽水・奥田民雄・小泉今日子の共作だが、奥田カラーが強いと思われる。これもまたまたTBS系ドラマ「僕が彼女に、借金をした理由」(1994)の主題歌。
「ラブバラ(Love Ballad)」は、フライングキッズの浜崎貴司とのデュエット。懐かしい人だなあ。「おやすみ・・・」も密かにいい曲だ。Pat Methenyっぽいバックのギターがいいね。