EPOってどんな人?

日本が誇る女性ボーカリスト。とにかく日本人離れしたうまさがある。80年代は、山下達郎の流れをくむポップシンガーとしてメジャーシーンで活躍。90年代以降は、むしろ癒し系シンガーとして語られることが多くなった。最近の若いシンガーもうまいけれど、歌を理解して歌って聞く側に伝える力みたいな点で、EPOは圧倒的に違いを見せつけていると私は思う。

EPO official home page : eponica.ne

EPO, “SuperNatural” (1989)

ごめんなさい。私にとっては、どうにも誉めようのないアルバムです。「母の言い分」は、その後の“Soul Kitchen”中の“bleeding heart”に繋がる母子葛藤に関する曲で、彼女にとっての重大問題のようだ。この時期というのは、おそらく「業界的に作られた洗練された音のEPO」から「自分らしい音を出せるEPO」への過渡期だと言えるのだと思うのだが、もがきながらこの時期を乗り切っていったことが、今の素晴らしさに繋がっているように思う。

彼女の公式ページにある、このアルバムに関するさらりと書かれたコメントを読んで欲しい。

EPO, “DOWN TOWN”(1980)

山下達郎の同名曲をカバーして一躍注目されたデビュー盤。「シティポップス」という懐かしい言葉が頭をよぎる。

1. “down town”は同時代人の間では「ひょうきん族のエンディング」で話しが通じるだろう。40歳を過ぎてから好きになってきたのが5.「語愛」。

 

EPO, “UVA” (1995)

なかなか中古盤屋で遭遇しなかったので、iTune Storeでアルバム単位で購入してしまった。隠れ名盤というのが大方の評価じゃないかと思うのだけれど、僕的には?ですね。

確かに、POPS爆走路線を走り過ぎ、力が抜けたいい歌が聴けるのだ。そこにいるのは、EPOというよりは佐藤栄子さんなのだと思う。しかし、半数の曲がセルフカバーという作りはどうなんだろう?ライブ音源を編集している曲が多いから仕方ないのか?

自分をreconstructしていく作業自体は彼女にとって必要だったのだろう。その作業結果をそのままでアルバムとして世に出し、リスナーを付き合わせるかどうかは別問題じゃないかなあ。本作以降の90年代後半の彼女の作品の良さを知ってしまっているだけに、余計にそう思う。

EPO, “Go Go EPO”(1987)

上大岡の、とあるコインパーキングは旧千円札しか受け付けない。近くの中古CD屋に飛び込んで、釣銭目当てで買い付けたのがこの一枚。実は、このアルバム、LP時代に死ぬほど聞いた一枚なのだ。一番印象深いのは、7.“Middle Twenties “。婚期がどんどん遅くなる現代にあっては「20代なかばで、そんなにあせっていたのかなあ、あの時代。」と思ってしまうのであるがいい曲です。イントロのシンセが、どことなくVan Halenの”Jump”だ。あとは、共演のバンドの名をそのまま題名にしている「センチメンタル・シティ・ロマンス」(名古屋の西海岸っぽい音を出すバンド。1998年の“Soul Kitchen”でも共演している。)も頭から離れない。アルバムを締める「八月十七日」も、あの時代を思うと泣けてくる曲だね。

EPO, “Wica”(1992)

正直な話、上記の“Fire & Snow”がぴんと来なかったので、発売された時には購入しなかったのだ。発売から12年も経ってから、レコファンで入手してはじめて聴いた。全くもって、失われた12年を呪ってしまうようないいアルバムなのだ。

全曲とも、EPO自身の作詞・作曲。「花」でのピアノはEPO自身。はるか前に、ライブでピアノを弾き語る姿を見たことがあったが、なぜ自分のアルバムでは演じないのだろうと不思議に思っていた。「汽車」では、以後延々と続くChoro Clubの笹子さんとのコラボレーションが聴ける。「ジェラシーと呼ばないで」は、以前からのEPOの路線の音を踏襲しつつも、詞の面では今に続く新しい世界が開かれつつあったんだな、と今になって感じさせられる。「百年の孤独」は、後に“air”にも再録されるのだが、自分の歌詞の世界をしっかり広げだしていることが感じられる。「見知らぬ手と手」はずっしり重い曲を、さらりとしたメロディー(どこか「音楽のような風」を思い起こさせる)に乗せて、ピアノ弾き語りで歌いきった佳曲。

音的には、従来からのポップス、ブラジリアン、アジアンと、多少まとまりが悪い部分もあるが、現在に至るEPOがこの辺りで芽吹いたのだな、ということがわかって、それも一興。

EPO, “CM tracks”(1992)

タイトル通りに、CMで使われた曲を集めた企画物。しかし、これが一種のベストアルバムのように思えてしまうのは、タイアップが成功してきたEPOらしい。

他のアルバムには収録されていない曲が5曲ほど入っている。「エンドレス・バレンタイン」とか懐かしいね。

EPO, 「さとうきび畑」(2002)

帯には「癒し系の原点と誉れ高いアルバム「UVA」より」とある。”UVA”は1995年発売のアルバムだが、私はこの時期EPOへの興味を失っており、かつ日本にいなかったので、このアルバムはノーマークだった。そのアルバムから、二曲をシングルとして再発したのが本作。

今のEPOのスタイルの原点がはっきり見える二曲だ。「さとうきび畑」のアコースティックな音の作りは確かに癒し系であろうが、沖縄戦を題材に取ったと思われるその歌詞はずっしり重く、私は凍り付いてしまった。

もう一曲は”Pump! Pump!”に収録されていた「音楽のような風」のアコースティックバージョン。これも、ボーカルとギターのみの薄い音の作りで、素晴らしい仕上がりだ。ブレスの取り方までもが計算されつくされているような、すごい音。必聴。今までこれを聞き逃していたとは、無念でならない。

EPO, “Pump! Pump!”(1986)

個人的にはこの頃一番真面目にEPOを聴いていたので、思い出深い一枚。

しかし、アルバムの中での当たり外れは大きい。2.「音楽のような風」と10.「12月のエイプリール・フール」が正解。「音楽のような風」はカセットテープか何かのCMに使われていたはず。

EPO, “POP TRACK”(1987)

これは、山下達郎の「いつか」とか、サザンの「いとしのエリー」とかのカバーをやっているアルバム。

お薦めは、1 .「三番目の幸せ」で、これはオリジナル曲。花王ソフィーナのCMで使われてた。個人的には、人生を変えた悲喜こもごもの一曲。

5.「横顔」は大貫妙子の曲だが秀逸。10.“Loving you”(原曲はMinnie Riperton)も良い。浅野ゆうこのアイドルとしての唯一のヒット曲である3.「セクシーバスストップ」のカバーをやってたりするのには、笑ってしまうが。

EPO, 「う・わ・さ・に・な・り・た・い」(1982)

正直なところ、わたしとしてアルバム単位でのめりこめるのは本作以降。

このアルバムでのベストトラックは、カバー曲のセルフカバーというややこしい境遇の“JOEPO~DOWN TOWN”“Girl in me”「うわさになりたい」は、とてもいいポッポス。「雨のめぐり逢い」はきれいなバラード。「おしゃれ」(死語)な恋愛の姿を題材に取った歌詞は、今聴くとかなり笑えるものもある

 

 

EPO, “Vitamin E•P•O”(1983)

これを初めて聴いたのは大学1年の夏の帰省中のことであった。華やかな渋谷の人通りなど思い出しながら、「こういうポップスはあういう街からじゃないと出てこないよな。」などと、カルチャーショックに見舞われつづけた東京暮らしの最初の三ヶ月を静かな札幌の町で総括したりしたものだ。ジャケットは今見るととても恥ずかしいものがあるが、名曲揃い。今年(2008年)でこのアルバムが出てからちょうど四半世紀。未だに輝きを失わない絶対的な名盤だと思う。後年のTVのインタビューで見ると、この頃しみついた元気者のイメージで、本人は後からずいぶん苦しんだらしいが、ファンなんて、お気楽稼業だからなあ。

イチオシは、5. 「う、ふ、ふ、ふ」。毎年春になると、今でも聞きたくなる曲。休日の晴れた午後の渋谷のスクランブル交差点とか公園通りで。その他、1.“Vitamin E•P•O”と、ひょうきん族で使われてた2.「土曜の夜はパラダイス」は、初期のPOP爆走路線時代を代表する曲。3.「無言のジェラシー」, 4.“Would You Dance With Me?”あたりも忘れられない曲だなあ。6. “PAY DAY”は、当時はちょっと近寄りがたかった六本木の街が思い浮かぶ。「明日は日曜日、踊りに行きましょう」って歌詞からは、この当時はそういえば週休二日制が定着する以前だったな、と思い出す。7.「かなしいともだち」もいい曲だなあ。8.「五分遅れで見かけた人へ」は、おそらくは成田空港が舞台と思われる、新婚旅行に出かける昔の恋人を見かけたって曲。成田空港ってのは僕にとっても悲喜こもごもの場所で、いろんなことを思い出してしまいますね。

 

EPO, “Harmony”(1985)

このアルバムでは、6曲目の「私について」が大のお気に入り。「15の私に手紙を書いたら」「はたちの私に手紙を書いたら」で始まって、それぞれに返事が来るという歌詞なのだが、最後は「未来の私に手紙を書いたら」「宛名が違うと返事が来たから・・」という展開になるのだ。「うーん、おれが15や20の自分に手紙を書いたらなあ・・」と、ふと考えさせられてしまうのだ。

タイトル曲の“harmony”も、かなりいい曲です。

EPO, “Peach” (1999)

音的には薄目のアコースティックな作りで、チャレンジングなところっていうのはあんまりないけど、それを圧倒するように歌詞がじわっと来る一枚。20代の時にはわからなかった世界だな。EPOっていう人が、いい歳の重ね方をしてるんだなと、そういうことが伝わってくる一枚。この時期は個人的にかなりキツい時期だったので、この一枚には随分と助けられた。

5曲目の“Memories”には、特にはまってしまい、つい口づさんでいる自分に気付く。ばんばひろふみの「さちこ」を思い出してしまうのは、さびの音使いが一緒だから?

6曲目の「あきらめたくない」、も、なかなかじわっとくる曲。

7曲目の「君のさがしもの」もいいね。歌いだしは、多分あおい輝彦の「あー、ことしも~~」って曲(「君だけを」だったっけか?)の影響受けてるな。でも、さびのあたりは80年代中期のエポっぽい音の運び。

 

EPO, “air” (2001)

5.「星の舟歌」が、とても印象的な一曲だ。6.「ずっとここにいよう」も近年のEPOらしい佳曲。9.「百年の孤独」は、“Wica”からの再録。EPOがいい年齢の重ね方をしてるなってことが伝わってくるい曲です。

あと一曲どうしても言及しておかなければいけないのが、4.「土曜の夜はパラダイス」。これは冒頭にあげた”Vitamine EPO”の中にも収録してされていたポップ路線爆走時代の曲だが、これを見事にボサノバ調に消化しきっているところを聴くと、完全にあの時代からは吹っ切れたのだなと感慨深いものがある。

 

EPO, “Fire & Snow”(1991)

Virginレーベルからの第一弾アルバムだったが、あまり印象に残ってない。というか、「もうEPOは終わったな」という印象を強く持ったのを覚えている。

しかし、テレビで見たインタビューで、このアルバムのロンドンレコーディングの際に、「君は元気なポッポスより、癒し系の曲を歌うべき声をしている」と言われたのが転機になった、と本人が語っていた記憶がある。