David Crosby, “Oh, Yes I can” (1989)

CSN&Yといえば、Neil YoungとかStephen Stillsのカラーが好きな人が多いのでしょうが、ワタシとしてはどうにもCrosbyが気になります。それは”Guinnevere”であったり、”Deja Vu”であったりという、幻想的な曲調によるものです。

しかし80年代のCrosbyは銃と麻薬で問題行動が多く、82年のCSN再結成のツアー中に拳銃不法所持で逮捕されたり、85年には8ヶ月を獄中で過ごしたりしていたようです。その状態から回復した1989年に発表されたのが本作品です。

まず一曲挙げるとすれば、タイトル曲の10.“Oh, yes I can”。バックグラウンドボーカルはJames Taylorらしい。全曲スキャットで通してしまう9. “Flying man”はフュージョンっぽい不思議な曲だなと思うと、ギターがLarry Carltonだったりする。

今は亡きMichael Hedgesがギターを弾いている5. “Tracks in the Dust”, 11.“My Country ‘Tis of Thee”も、なかなかです。

James Taylor, “Dad Lives His Work” (1994?)

Lovesじゃなくて、Livesとなっているのがポイント。81年の”dad loves his work”ツアーでのアトランタ公演をCD化した、よく分からない一枚。イタリアの怪しいレーベルから出ているのだが、住所など連絡先までしっかり入っている。やっぱりブートとして扱うべきなのだろうか?Dan Dugmore, Waddy Wachtel, Leland Sklar, Rick Mrotta, Don Grolnickと、いつも通りのすごい面子が揃っている。

Jackson Browne, “Running on empty” (1977)

ライブ収録が多いのだが、ライブ盤と言うよりは、ロードムービーの音楽版という感じだろうか。タイトル自体は、車のガスタンクが殆ど空の状態で家とスタジオを往復していた、というところから来ているらしい。

表題曲の“Running on empty”から涙ものなのだ。ピアノでロック弾き語るのが、なんともいえずカッコいいのだ。“The road”もDavid Lindreyが泣かせてくれる。“The load out”のJacksonとDavidの絡みも、ずっしり重い。と思っている間に音がだんだん厚くなってきて“Stay”へ流れ込んでいくのだ。Rosemary Butler(「幻魔大戦」のテーマ曲を歌っていた)の絶叫もすごい。

Crosby, Stills and Nash, “Crosby, Stills and Nash” (1969)

CSNとしてのデビュー盤。確か、”4way street”を先に聴いてから、こちらを後から聴いた。かなりの曲は事前に知っていたわけだが、LPに針を落とした瞬間から、スタジオ録音での1. “Suite: Judy Blue Eyes”のDADDADの変則チューニングと、圧巻の三度コーラスのにいきなり打ちのめされた。4. “You Don’t Have To Cry”, 8.“Helplessly hoping”もいい曲だね。

意外にはまるのが、Crosbyの3. “Guinnevere”。すごく好きな曲なんだけど、いかにも薬でラリってますという感じの曲で、他人にも理解されにくいのが難点。確かにこれに聞き入る高校生ってのは、傍から見ていてやばい存在だったかも。

はっぴいえんど、「風街ろまん」(1971)

わたしとしては、二枚目が最高傑作じゃなかろうかと思う。3.「風をあつめて」、7.「夏なんです」などの細野さんのボーカルが好き。高音でのボーカルが取れないことを苦にしていたらしいのだけれども、この頃デビューしたJames Taylorを聴いて開眼したらしい。

8.「花いちもんめ」もすごくいい曲だ。松本さんの新潮文庫から出ている小説なんかを読むと、その背景がわかる。実体験はないけれど、昭和30年代の東京の香りがぷんぷん漂うね。

はっぴいえんど、「はっぴいえんど」(1970)

通称ゆでめん。高校時代に中古盤がなかなか入手出来ず、再発の新盤をどきどきしながら購入したのを覚えている。

7.「12月の雨の日」が素晴らしい。音の作りはまったくBuffalo Springfield(ついでに言うと、LPのライナーノーツもBuffaloの”again”そのもの)。それに絶妙としか言いようのない松本さんの歌詞が乗るのだ。 「水のにおいが眩しい通りに」 なんて、これはもう絶対松本さんにしか書けない代物だ。

3.「しんしんしん」は細野さんが歌っているが、これも私のiTunesでは五つ星。9.「朝」もいい曲。

一方で、はっぴいえんどの代表曲と語られることも多い、大滝詠一が歌う1. 「春よ来い」も確かに好きなのだけれども、はっぴいえんどの本領では無いような気がしている。

America, “America” (1971)

これがデビュー盤で、もっとも有名な一枚でしょう。“A horse with no name”(邦題「名前のない馬」)は最大のヒットだが、曲自体は大して面白いものでもなく、そのギタープレイのみに興味がいってしまう。「砂漠を馬で行く」というイメージが、サハラ砂漠のような砂漠しか思いつかない当時の私にはどうにもイメージできなかったが、アリゾナに住んでみて、「ああこういうことなのか」と思った。西部劇の世界を連想するのが正しかったということだ。

“riverside”とか“Three Roses”はアコースティックギターのカッティングが心地よい曲。こういう世界はAmericaが開いた世界じゃないかなあ。あと、“I need you”は、歌詞がどうにも甘ちゃんではあるが、いい曲じゃないかと私は思う。“Children”などは、CSN&Yの”Teach your children”を後追いする世界で笑えるね。

America, “Homecoming” (1972)

彼らにとっては二枚目のアルバム。私にとっては最初に買ったアルバム。中古レコード屋で買ったのだが、貧乏高校生だった故、「外れだったらどうしよう」という不安がいっぱいだったのを未だに覚えている。しかし、これが大当たりだったのだ。

なんと言っても、しょっぱなの“Ventura Highway”の、ギターのイントロが強烈。いかにも70年代カリフォルニアサウンドという感じで、涙ものだ。このイントロは、何年か前にJanet Jacksonが”Someone To Call My Lover”でイントロだけをぱくっていたので、原曲を知らずとも耳覚えがある人が多いことと思う。

“To each his own”“Only in your heart”もピアノのイントロが印象的な曲。“Don’t cross river”はDan Peekの曲だけど、曲の作りといい、声質といい、まさにNeil Youngなのだ。その他には、“California revisited”あたりがおすすめ。生ギターを弾く人には一度は聞いてもらいたいアルバムだ。

EPO, “SuperNatural” (1989)

ごめんなさい。私にとっては、どうにも誉めようのないアルバムです。「母の言い分」は、その後の“Soul Kitchen”中の“bleeding heart”に繋がる母子葛藤に関する曲で、彼女にとっての重大問題のようだ。この時期というのは、おそらく「業界的に作られた洗練された音のEPO」から「自分らしい音を出せるEPO」への過渡期だと言えるのだと思うのだが、もがきながらこの時期を乗り切っていったことが、今の素晴らしさに繋がっているように思う。

彼女の公式ページにある、このアルバムに関するさらりと書かれたコメントを読んで欲しい。

EPO, “DOWN TOWN”(1980)

山下達郎の同名曲をカバーして一躍注目されたデビュー盤。「シティポップス」という懐かしい言葉が頭をよぎる。

1. “down town”は同時代人の間では「ひょうきん族のエンディング」で話しが通じるだろう。40歳を過ぎてから好きになってきたのが5.「語愛」。

 

James Taylor, “Sweet Baby James” (1970)

2012/08/24 渋谷TSUTAYA

James Taylorはデビュー盤をBeatlesのアップルレコードから出しているのだが、これはアメリカでの再デビュー盤。大学に入ってすぐの頃、サークルの先輩からテープを借りてダビングさせてもらったのだが、アルバムを通して聴くなんてことはここ20年以上は無かったな。

さて70年代Singer-songwriterものが大好きなワタシにとっては、James TaylorはJackson Browneと並ぶ神なのです。このアルバムのしょっぱなに来ている1.“Sweeet baby James”は、SSW時代を開いた一曲。5.“Country road”、8.“Blossom”あたりは、典型的なJames Taylorの音。

このアルバムで特筆すべきは7.“Fire and rain”でしょう。後に彼は”That’s why I’m here”(1985)の中で、
“Oh, fortune and fame’s such a curious game
Perfect strangers can call you by name
Pay good money to hear fire and rain
Again and again and again”
と歌うのですが、複雑な思いを持ちながらも自己の代表作だと認識しているのですね。その歌詞については諸説あるらしいのですが、下の記事が一番理解の助けになったかな。

http://www.snopes.com/music/songs/firerain.asp

大貫妙子、”note” (2002)

2012/08/05 新杉田TSUTAYA

鬼才大貫妙子さんの2002年のアルバムを今頃になって聞いています。この時期の大貫さんは、山弦の二人と一緒に仕事をしているのですよね。山弦とは、(最近は松たか子の旦那としてむしろ知られているかもしれない)佐橋佳幸さんと、小倉博和さんのアコースティックギターデュオ。これに平松八千代さんを加えたSOYは、ワタシ的には大好物です。

1.「あなたを思うと」、2.「緑の道」、3.「ともだち」、8.“Snow”あたりの山弦コラボ作品が秀逸。山弦としてはちょっと抑えた、しかしツボを抑えたプレイで大貫さんの魅力を引き出しています。

一方で4.“Wonderland”なんかは、シュガーベイブの流れそのままのポップス、6.“Le Musique”あたりは、これも初期のトレードマークだったヨーロッパっぽい音造り、9.「星の奇跡」は、”pure acoustic”の頃の音造り。このとき大貫さんは多分48歳、新しいものを次々繰り出すという作品ではありません。しかし、自分の魅力を引き出してくれる山弦のようなアーティストとのコラボを取り入れつつも、自分がかつて作ってきた音でしっかりとアルバムをまとめるような安定感が際立つ心憎い作品。外れのない佳曲揃いです。

Silje Nergaard, “Unclouded” (2012)

Silje Nergaardの新作。彼女がデビューして20年、何度か消えかかったのにしっかりジャズシンガーとして再生し、今でも歌声が聴けるというのは、本当に嬉しいことです。Sony系になってから、国内のiTune Music Storeから購入出来ないのが痛い。割高なヨーロッパ盤を、アマゾン経由で仕入れました。

本作は、Siljeのボーカル+Håvar Bendiksen、Hallgrim Bratberg二人のアコギが核になったサウンドです。YouTubeでのインタビュー動画では、ギター弾きだった父親の影響を語っています。原点回帰なんですね。アコギ二台と女性ボーカルってのは、SOYに似た世界なんですが、これが素晴らしい。薄い音造りと、Siljeの声は似合います。

佳曲揃いの本作ですが、特に聴きどころとして何曲か挙げておきましょう。まずは、5. “Ordinary sadness”でしょう。まずは、聴いてみてください。

1.“All I had”, 4. “The moon’s a harsh mistress”, 8. “When Our Tune Is Played”あたりは、フォークっぽさを残すポップス。一方で、3.“God’s mistakes”あたりは、がっつりジャズです。9. “I Will Write You Every Day”, 10. “Human”は、とてもきれいなバラード、必聴です。

さてアコギ弾きの方々は、下のYouTube動画も必見です。アルバムには収録されていない、Michael Jacksonの”Black and white”のカバーなのですが、アコギがとにかく面白い。見てしばらく、にやにやが止まらなかった逸品です。

Siljeの最新動向は、Facebook経由で得るのが正解です。気になる人は、フォローしてみてください。

Neil Young, “After the gold rush” (1970)

  1. Tell Me Why
  2. After The Gold Rush
  3. Only Love Can Break Your Heart
  4. Southern Man
  5. Till The Morning Comes
  6. Oh, Lonesome Me
  7. Don’t Let It Bring You Down
  8. Birds
  9. When You Dance You Can Really Love
  10. I Believe In You
  11. Cripple Creek Ferry

アコースティックロックの原点みたいなアルバムです。かつ、Bluegrass的な要素もあって、ワタシ的には素晴らしい。

CSN&Yが”Deja vu”を出した1970年のソロ作品。46歳になった昨年に、初めてアルバムを通して聞いた訳ですが、ほとんどの曲を知っていた。CSN&Yのブートを随分聴いていたのだけれど、それらにソロ曲が多く収録されてたからでしょう。それもある意味、CSN&Yのカラーですね。

4. “Southern man”と7. “Don’t let it bring you down”は、翌年に出たCSN&Yのライブアルバム”4-way street”に収録。

3.?“Only love can break your heart”はカントリーっぽいワルツで、後年のEaglesの”Hollywood Waltz”なんかに繋がっていく世界。1.?“Tell me why”, ?2. “After the gold rush”,, 8. “Birds”あたりも好きな曲です。

 

阿部芙蓉美, 「沈黙の恋人」 (2012)

iTune Music Storeで、最近は滅多にしない衝動買いというのをしてしまいました。邦楽のマイナー系(失礼)ってのは普段は探索範囲外なのですが、一曲目の“highway, highway”のPVに何故かYouTubeでぶち当たってしまい、そのウィスパー系の声に引き込まれたのです。

wikiによると、この人は稚内のご出身だそう。ワタシと同じ北海道人なんですね。Sarah McLachlanが好きなのだそうですが、その影響ははっきり聴いてとれます。Sophie Zelmani, Kathryn Williamsなんかにも通じるところも。こういう世界はじっくり歌詞を聴き込まないと本当のところはわからないのですが、まずは「聴いていて疲れそうなところがない」「ギターを中心とした薄い音の作りがとても気に入った」というのが第一印象。

ダントツに良かったのが、最初に挙げた“highway. highway”とタイトル曲の「沈黙の恋人」の二曲。他には、「君とあの意味」, 「いつかまた微笑みあえる日が来るまで」“cinema”「希望のうた」あたりを気に入りました。

この文章は暫定稿。聴き込みながらreviseをかけていこうと思います。

Workshy, “Bitter Sweet” (2011)

発売直後にiTunes Storeで購入したのに、今までレビューを書いていませんでした。久々に新譜のレビューを書けるチャンスだったのに、出遅れちゃいましたね。

さて、この作品、なかなか素晴らしいのです。1. “Looking Forward To”と4. “Bitter or Sweet”の二曲が特にお勧め、ワタシのiTunesでのratingは五つ星です。その他、11. “West End Lane”, Michael John McDermattがボーカルを取っている10. “Only Maybe”も素晴らしい。

さて、WorkshyのオフィシャルウェブがFacebook上で開設されています。興味を持たれた方は是非。
http://www.facebook.com/WorkshyOfficial
また、Chrysta Jonesは個人でも参加していて、ワタシは友達登録していただきました。こういうつぶやき方をする人なのか、と新しい発見でした。

Sneaker, “Loose in the world” (1982)

本日、iTune Music Storeにて購入。このページです。

さて、このSneakerは、80年代初頭に2枚だけのアルバムを残した西海岸のAORバンド。スタジオミュージシャンたちが組んだバンドという意味では、TOTOあたりと共通しているでしょうか。この”Loose in the world”は、彼らの二枚目。プロデュースはDoobie Bros.のJeff Baxter。一枚目からは、”More than just two of us”という大ヒット曲が出ていますが、このアルバムはそれほどの商業的な成功は収めませんでした。しかし、これが良い曲揃いなのです。ワタシがこのアルバムにはまったのは、たしか数年後の85,6年あたりだったと思いますが、それこそテープがすり切れるほど聴いたものです。もう20年もこのアルバムを聴いてないはずなのですが、どの曲もはっきりくっきり記憶している。こんな一枚がダウンロード購入出来てしまいようになったことに、ひたすら感動なのです。

1. “Believe Me Tonight”は、いかにも西海岸な快活な一曲。アナログシンセのぎらぎらした音の使い方がこの時代らしいですね。2. “Quit Crying”のアコギのフュージョンっぽいソロは好きだったなあ。いかにもオベーションの音なんですよね。5.“Never Get Over You”も、いいピアノバラード。 “More than just two of us”の二匹目のどじょうを狙ったっぽいところはあります。

6. “Where You Gonna Run”のリズムの刻みはレゲエっぽいですね。こういうところから、このアルバムと夏という季節が、頭の中で結びついてしまうのです。10.“Nothing from you”もいい曲。ギターのアルペジオが単純なんだけど非常に印象深いAメロから、いかにも西海岸なサビに流れ込む作りが秀逸。アルバムを締める11. “I can’t imagine”も、いいバラードです。

  1. Believe Me Tonight
  2. Quit Crying
  3. Before You
  4. The Fight / Voices
  5. Never Get Over You
  6. Where You Gonna Run
  7. Pour It Out
  8. Someone To Blame It On
  9. Did You Order One
  10. Nothing From You
  11. I Can’t Imagine

“Believe Me Tonight”のYouTube動画↓

Pat Metheny Group, “First Circle” (1984)

名盤です。その割には、カセットの時代から更新してなくて、改めて聴き直してみると「なんでこんな重要作品を更新してなかったんだ?」と思う一枚。

“Yolanda, You Learn”, “The First Circle”, “If I Could”が続く辺りは圧巻。80年代半ばにライブに通ったワタシ的には非常にはまります。”The First Circle”のスチール弦と、”If I could”のガッド弦のコントラストが何とも言えないのです。

最後の”Praise”は、題名通りに賛美歌テイストがちょっと入った曲。アコギのカッティングが非常にカッコ良い。好きだなあ。

2010/08/10 渋谷TSUTAYA

山本潤子、 “Songs” (2007)

2010/08/10 渋谷TSUTAYA

元赤い鳥・ハイファイセットの山本潤子さんがJ-pop(この表現は非常にキライなのだが)の名曲をカバーするという企画のアルバム。潤子さんは、どう考えても史上最強の日本人女性ボーカリストの一人だし、好きなんですよ。上手いし、説得力もあるし、声もやはり素晴らしい。

でもこの一枚の存在意義がどうしてもわからない。カラオケが上手いおねーさんが歌っているのと、どう違うのかがわからない。原曲を越えていくようななにかとか、「今、ここで新しいものを生み出そう」という心意気みたいなものが感じられない。

でも、amazonのレビューなんかでは、結構好評なのです。多分いいアルバムで、ワタシがオーディエンスの枠内に入ってないというだけなんでしょう。

Beth Nielsen Chapman, “Beth Nielsen Chapman” (1990)

10/07/18 250円で購入@伊勢佐木町ブックオフ。このCDの紹介の最初のバージョンは、1995年のサイト開設直後に書いた記憶がある。気温45度を越すアリゾナ在住中に車中にCDを放置したせいで、長らく聴けない状態になってしまっていた。ようやく中古で買い替えて一通り聴き直してみると、とにかくハズレのない佳曲揃いなのに、改めて驚く。

このCDは、たしか渋谷で買ったのだろうと思う。それがCiscoだったか?Waveだったか?記憶が定かではない。試聴ブースで聞いてほぼ即決だったのは、1. “Life holds on”のイントロの強烈さが決め手になったのだと思う。なぜかといえば、そのピアノのフレーズが、CSNの1977年再結成盤の”Shadow Captain”にあまりにそっくりだったから。もちろん、曲本体は素晴らしい。20年に渡る愛聴曲。

尖ったところは無く,無難に良い曲が並ぶ。コンテンポラリーなソングライターで、そのあたりはCarole Kingに通じるだろうか?通常のTop 100チャートに入るような曲は無かったが、アダルトコンテンポラリーチャートでは、3. “I Keep Coming Back To You”, 4. “Walk My Way”, 5, “All I Have”が10位台を記録している。

他に当時好んで聴いたのは、9. “Avalanche”, 12.“Years”あたり。6. ”Take It As It Comes”の最初のキーボードの使い方も、Joni Mitchellの80年代の作品そっくり。時代の音だったんですねえ。

Journey, “Escape” (1981)

言うまでもなく、80年代アメリカンハードロックの金字塔と言えるアルバム。自分自身が、このアルバムからの何枚目かのシングルの頃に洋楽を聴き出したので思い出深い。

何と言っても、このアルバムピカイチは、未だにCMなどで多用されている”Open Arms”。ロックバラードの名曲として、普遍の価値を持つ一曲と思う。

“Don’t Stop Believin'”, “Who’s Crying Now”あたりも、記憶の中で重要な位置を占める曲。やはり必聴盤なのです。

鈴木祥子、「鈴木祥子」(2006)

デビュー18年目にしてのセルフタイトルアルバムで、40歳を過ぎての初作品。アルバムのために曲を書く、というのではなく、書いた曲をライブでやっていって、いいものをアルバムとして出す、というスタイルを取ったらしい。今までのアルバムは、一枚一枚の中でもバラエティ豊かというか、すごく音楽性の幅が広いことをみせつけているかのような感もあり、それは時として器用貧乏っぽい印象を与えることもあったのだけれど、本作は至ってシンプル。けだるさというか、全力疾走から一息入れたような感じを受けるし、それが決してマイナスに作用していない、等身大の姿を映し出しているかのようなところが非常に好きだ。

2.“Love is a sweet harmony”や4. “Passion”は好きだなあ。洋楽を消化しきった人じゃないと、絶対に書けない曲だ。3. 「何がしたいの?」は、「見失い感」とでも書いておきましょうか、壮絶な曲だ。ぐさっと来る一曲。1. 「愛の名前」、5. 「契約 (スペルバインド)」、8.「忘却」もいい曲です。10. “Blondie”も、すさまじさを感じる曲。11. 「道」は、ピアノのイントロがもろにCarole Kingの”So far away”ですな。一方、6.「ラジオのように」の再演・再収録は、ちょっと意味がわからない。確かにこのテイクの方が僕としては好きなのだけれども、あえてオリジナル盤に再収録するほどの出色でもないかな、というのが個人的な感想。

何曲かでエレキバイオリンを弾いているROVOの勝井祐二さんの動向には個人的に興味があった。彼は札幌の高校の一期下で、自主制作盤やらライブやらの告知を校内に張りまくる有名人だったので、直接話した記憶はないけれど知っていた。「こんな田舎でやってても限界あるだろうに」などと当時は思っていたのだが、本当に影響力のあるミュージシャンになってしまったんだなと感動。80年代初頭の売れたロックのスタイルを消化しきった感のある祥子さんと、その時期には売れ線のロックなんてまるで聴いていそうになかった勝井さんが一緒に仕事して、壮絶な一枚を仕上げてるところが、ある意味とても面白いなあ。

追記: 「忘却」のYouTube動画を発見。アルバム収録のバージョンとは異なるアコギ弾き語りバージョンですが、その凄まじさはわかっていただけると思います。しかし、アコギがNeil Youngっぽくて面白い。

鈴木祥子、「私小説」(1998)

1990年代後半の祥子さんは、ワタシ的には一番ツボにはまる時期なのです。しかし、曲によって好き嫌いが大きく分かれるこの一枚は、非常に微妙な作品ではあります。
このアルバムで一番好きな曲は、2.「プリヴェ」。後年のライブ盤”I was there, I’m here”でのピアノ弾き語りバージョンが素晴らしいのですが、70年代SSWのテイストを出してるこのテイクも素晴らしい。
1.「完全な愛」は、初期ガールズポッポス路線の香りを残した一曲でちょっとはじけきらないでしょうか?3.「だまってそばにいる女」あたりは、EaglesとかNeil Youngとか、70年代の西海岸アメリカンロックっぽい音の作りが面白い。クロウハンマーっぽいバンジョーの使い方は、ちょっとワタシ的には許し難いですけど。7.「依存と支配」は、ある意味問題作で、イカレきった歌詞が大好き、でも音が大嫌いという本当に微妙な一曲です。8.「ただの恋だから」はカーペンターズっぽく仕上げた曲ですが、やはり祥子さん上手いなあ、と納得してしまう曲です。10.「日記」はミディアムテンポのロックしてて、これまたいいんですよねえ。

James Taylor/ “Walking man” (1974)

評論家には酷評され、売り上げもイマイチだったというこのアルバム、私は結構好き。 プロデューサーはNYのフュージョンシーンを牽引したギタリストのDavid Spinnoza。いかにもスピノザの音だなあ、というところが随所にある反面、Jamesの歌がとても優しい。70年代前半の洗練された音の代表格みたいな仕上がりじゃないでしょうか?

タイトル曲、1. “Walking man”は、ビルボードチャートにさえ入らなかった曲らしいですが、とてもいい曲です。3. “Let It All Fall Down”, 5. “Daddy’s Baby”, 6. “Ain’t No Song”, 7. “Hello, Old Friend”, 10. “Fading Away”も佳曲。

フィンガーピッキングの名手として知られる、ギタリストとしてのJames Taylorの良さが目立つアルバムからもしれません。

Lene Marlin, “Twist the truth” (2009)

3/30日付けで本国発売になっていたLene Marlinのアルバムを、日本盤の発売はなさそううな状況でもあるので、iTunes Music StoreでDL購入した。(先行シングルの、”Here we are”については既に本ブログにてレビュー済み)

前作”Lost in a moment”の派手なエレクトリックな音にはがっかりしたが、本作は一転してacousticな音の造り。それにも関わらず、またもがっかりしてしまった。

やはり、デビュー盤のような鮮烈さを、10年を経過して20代後半になり、声質も変わってきた彼女に求めるのは無理なのだろう。薄い生音で勝負した場合、Kathryn Williamsのような人が出てきているだけに、比較するとイマイチなのだ。歌で聴かせきるには、歌唱力・曲の力、どちらも今ひとつ足りないような気がする。

やはり気になるのは、ここ二枚目以降の三作で音の造りがバラバラだということ。いろんな音にチャレンジしてさまになる(たとえばNeil Youngとか)ほどの力はないでしょう。ここは好意的に、単に迷走期なのだと思いたい。いつかきっと自分自身の音を確立して戻ってきてくれるのを、気長に待とうと思う。それはきっと彼女が30代後半くらいになってからだと思うのだけれど。

Song for Memories, “Song for Memories” (2000)

鈴木康博(元オフコース)・山本潤子(元赤い鳥、ハイファイセット)・細坪基佳(元ふきのとう)の三人によるユニット。これが1970年代後半に実現していたら、CSN&Y並みのスーパーグループになったことでありましょう。60-70年代のフォーク・ニューミュージックの名曲をカバーするという趣向のライブアルバム。完全に後ろ向きなコンセプトではあるのだけれど、非常に楽しめます。

泉谷しげるのフォーク時代の名曲A-2 「春夏秋冬」、PPMのA-4 “Puff”、GAROのファーストに収録されている名曲 A-7 「地球はメリーゴーランド」、荒井由実のA-9 「あの日にかえりたい」B-5 「中央フリーウェイ」、カーペンターズのB-7 「YESTERDAY ONCE MORE」、ふきのとうのB-8 「白い冬」、オフコースのB-9 「さよなら」、赤い鳥のB-10 「翼をください」のあたりは、まさに自分の中学?高校時代のリスナーとしての嗜好にびたりと一致するのだ。しかし、やっぱり潤子さんの歌は素晴らしいね。

Glenn Frey, “Solo Collection” (2002)

5. “The one you love” (放題:「恋人」)だけを聴きたかった。本当は、この曲が収録されたオリジナル盤[“No fun around” (1982)]を探していたのだけれど、なかなか遭遇しない。そこでTSUTAYAで借りたのが、このベスト盤。他のベスト盤ではライブバージョンが収録されていたりするので要注意。

文句なしに、ロックバラードの秀作です。この曲が出たのはイーグルス解散で、Glenn FreyとDon Henryがソロアルバムを競うように出していたころ。ちょうどこの曲あたりで私は洋楽を聴きだすようになったのでした。

Corrinne May, “Beautiful Seed” (2007)

とても好きな歌い手さんの最新盤。発売後一年経って気付くなんて、いかに情報収集をさぼってるかってことですね。

さて本作ですが、どうにも突き抜けきらない感じがあります。いつものCorrinne Mayのように聴こえるのですが、「この曲はすごい!」という感じの曲がないのです。ひとつには使っている音域の問題があるような気がします。彼女は中音域での声質が素晴らしい人ですが、ちらっと織り込む高音域のフレーズが非常にアクセントとして効くのです。しかし、今作は中低音域に大半のフレーズが収まってしまっているので、いささか退屈に響くのかも。あとはピアノ弾き語りに近い形の方がいい気がします。オーケストレーションが厚過ぎるんじゃないかな。

2.“Shelter”, 12.“On my way”あたりは、まあまあいいかな、と思います。

Cloudberry Jam, “The Great Escape” (2005)

Cloudberry Jam再結成後の二枚目。個人的には、ブラスを多用したアレンジにちょっとなじめない。Jennie Medinの声も、太さは感じるが、ちょっと勢い不足かな。4.“7 Days A Week”, 8. “I Will Feel Better” あたりはいいと思う。

彼らの音楽はブランク期を経て確実に進化しているわけで、その方向が私の好みとは違う方向に行ってしまっているようだ。

James Taylor, “JT” (1977)

名盤です。一番印象深いのが映画「FM」のサウンドトラックでも使われていた、1. “Your smiling face”(邦題:「きみの笑顔」)。AORっぽいアレンジが素晴らしいのだ。 2. “There we are” , 7. “Handy man”あたりも素晴らしい。この三曲って、”dad loves his work”の頃にNHK-FMでJames Taylor特集があって、その時にかかった組み合わせじゃないかと思う。エアチェックしたカセットテープが擦り切れるほど聴いたんで、さすがに頭に刷り込まれたかな。

その他、10. “Terra Nova”は当時の奥さんのCarly Simonとのデュエット。9. “Looking For Love On Broadway”もいい曲です。

白井貴子 & Crazy Boys、「地球 -HOSHI-」 (2008)

昨年の「白井貴子 & Crazy Boys」名義でのツアーに引き続く、久々のニューアルバム。最近のソロ作が好きな私としては正直微妙なところもある。高音にぶら下がったまま降りてこなかった80年代当時の白井さんのボーカルはあまり好きではないし、それ以前に80年代前半の邦楽ロック(J-popと言うべき?)は、今思うに拙い音楽だったと思う部分も大きいからだ。ロッカーとしての白井貴子は、21世紀にどんな姿で戻ってきたのでしょう。
2. “Time Limit”は、疾走感あふれる80年代っぽい硬い音の作りのロックででよろしい。3.“Believing”も、ちょっと高音域でがんばりすぎなんじゃないの?と思う部分もあるけれど、良い曲だと思う。一番出来がいいなと思われるのが、4. “Run 風のように 雲のように”。タイトルのセンスには全くうなずけないが、この疾走感はたまらん。ギターとかシンセのフレージングは20年前にタイムスリップした感覚。レベッカってこんな感じだったな、とふと思う。6. “Start Again”は、ソロ作に一番近い感じだろうか。エキサイティングでもないが、安心して聴ける曲です。

America, “History: America’s Greatest Hits”(1975)

ビルボードのアルバムチャートで3位までいった、1-4枚目のアルバムからのベスト盤。佳曲揃いなので、特にマニアな人でない限りは、1-4枚目をバラ買いせず、この一枚で済ませるのが正解ではないだろうか?他のアルバムと比較して何より嬉しいのは、安定してCD市場に供給され続けているというメリット。

Joni Mitchell, “For the roses” (1972)

二枚の名盤中の名盤”Blue”と”Court and Spark”に挟まれ、やや影が薄くなりがちな一枚だが、これも素晴らしいアルバム。ライナーノートには、Joniのヌード(背中側からですけどね)が入っているというのも話題になった一枚。

イチオシなのは、9. “You Turn Me On, I’m A Radio”。Joniの曲の中では最も好きな曲のうちの一つ。ハーモニカはGraham Nash。ギターが本当に格好よい。カントリーっぽい曲調・題材でありながら、コーラスワークの洗練されていること、こういうミスマッチが面白いのだ。6. ””For the roses”、11. “Woman and heart and mind”も大好き。やっぱり、Stephen Stillsっぽいギターが面白いのだ。8. “Electricity”のギターのアレンジは、70年代後半とか80年代前半に流行ったような感じのもので、時代を一歩先取りしてた感じでしょうか。1.“Banquet”, 4. “Lesson In Survival”, 7. “See You Sometime”, 12. “Judgement Of The Moon And Stars (Ludwig’s Tune)”といったピアノ弾き語り曲もいいのです。

3. “Barangrill”は、”Court and Spark”以降ではよく聴かれた曲調。今から思えば、これが予告編だったのか?といったところでしょうか。

Pat Metheny, “Watercolors” (1977)

Pat Metheny名義ながら、Lyle Maysと組んだ最初の作品。もう30年も前のアルバムになるんだな。

Jazzを解さない私としては、1. “Watercolors”, 4. “Lakes”の、二曲が好き。透明感あふれるというか、ドビュッシーっぽいというか。5. “River Quay”も結構好き。7. “Sea Song”のLyle Maysのピアノっていうのは、いかにも彼の色が出ているね。

学生時代の短い期間、遠距離恋愛というのに没頭した時期がありました。電子メールなんてない時代だから、便箋10枚を超える手紙が週に一度くらい行き交ったわけだが、彼女のこのアルバムに関する感想は、「さらりと流れてしまった」だったのを強烈に記憶している。「綺麗っぽく作っただけで、記憶に留まるような引っかかるところがない」と言いたかったのだと思うし、多分それは正解なのだろう。これとは別に、研究室の先輩はPat Methenyを「環境音楽だよね」と総括していた。これもきっと正解。

なのに、20年以上経った今もこのアルバムを聴いている私。騙されやすいってことかね。

Joni Mitchell, “Court and Spark”(1974)

名盤との評価が定着している一枚(一例:Rolling Stone誌の500 Greatest Albums of All Time、111位)。フュージョンがクロスオーバーと呼ばれていた頃に、Larry Carltonを筆頭とするその手のミュージシャンも数多く参加して作られたアルバム。かと思うと、ロックンロールっぽい曲、従来のアルバムを踏襲した路線の曲も入っていて、渾然一体となっている。その意味でフォークの延長に留まっていたそれ以前の作品と一線を画す作品なのだが、いろんなスタイルを取り込みながらも、決して呑まれる事無くあくまでも Joniらしい曲の作りを保っているところがすごい。現在のJoniのスタイルを理解するうえでは重要なアルバム。

2. “Help Me”, 3. “Free Man In Paris”は言うまでもなく名曲。CarltonのギターもJoe Sampleのキーボードもすさまじい。”Free man in Paris”のバックアップボーカルはCrosby and Nashだ。8. “Raised On Robbery”も、その自由なスタイルが大好きな曲。一方で、1. “Court And Spark”, 4. “People’s Parties”, 5. “Same Situation”のように、本人のギター・ピアノ弾き語りが軸になる従来の作りの曲もさえている。

私が保有しているのは邦盤のCD再発盤。付いてきた日本語のライナーノーツは、オリジナルLP発売時の小倉エージ氏によるものそのまま。小倉さんのライナーノーツは、西海岸趣味の私は何十と読んできているが、この一枚のはちょっと違う。解説と言うよりは、当時の興奮をそのままストレートに文字にした様子が伝わってくるようで、それも面白いのです。絶対の必聴盤。

America, “Silent letter” (1979)

Capitalレーベル移籍後第一弾、Dan Peek脱退後の初デュオ作品にして、George Matrinがプロデュースした最後のアルバム。めちゃくちゃ面白いわけではなく、かと言って箸にも棒にもかからないという不出来でもない、微妙なアルバム。

2. “All around”のコーラスは、ちょいとママス&パパスっぽい空気だろうか、心地よい。6. “Foolin'”は、西海岸っぽい乾いた音が心地よい。4. “1960”, 9. “All my life”あたりのG. Beckleyの甘ったるいバラードには毎回騙される。5. “And Forever”みたいな、D. Bunnelのちょっとおかしなコード感覚の生ギター曲も実は結構好きだったりする。

白井貴子、”French Tough” (1991)

これもある種、中途半端な時期の作品。方向転換したまだ自分を受け入れきれていないというか、のたうちまわっている感じが残っているような印象を受ける。まだ、「深み」には至っていない感じですかね。

1. “夕焼けのバラード”は無難な曲。この時代、キーボードとかピアノとかドラムって随分硬い音に録っていたんだな。2. “Love Forever”は結構好きな曲。使っている声域の問題だろうか、落ち着きが感じられるのだ。5. 「みんなあなたのせいよ」は、好きな感じのミディアムテンポのロックバラード。9. 「レクイエムの聴こえる坂道」も結構いい曲なんだけど、今の時代の感覚で言うと、裏のシンセが余計なところでうるさい感じはしますかね。

The Cloudberry Jam, “Blank Paycheck”(1995)

古いアルバムではある。しかし、抜群のポップセンスを持ちながら、かと言ってロックのドライブ感をまったく失っていない、その絶妙な調和が素晴らしいのだ。Jennieの声は中低音域でかっちょいい。ちょっとChrissie Hyndeっぽいところもあるかな。

しょっぱなの“Walking in my sleep”から、がつんとやられる。“This & that”“Hold on”のドライブ感も堪らない。“couching”での、ビブラフォーンが絡んでくるアレンジなどは、いかにもSwedishで、お洒落っぽさを出しているのだけれど、ここまでの完成度は他のバンドには出せていないんじゃないかな。“Twice as cool”“By your side”とか、本当にかっこよい。その一方で、“Someday soon”のような、静かな曲もいいしね。

白井貴子、”BOB” (1990)

決していい出来のアルバムとは思わないが、白井さんを語る上では欠かせない転換点となる一枚。音楽ビジネスに疲れた白井さんは、ギターの本田さんと、80年代後半にロンドンで一年余「充電」生活を送っている。このあたりのことは、公式サイトのプロフィールを参照されたい。この充電期をはさんで制作されたのがこのアルバム。一部のエンジニアリングはロンドンで行われている。

ロックンロールっぽさが薄れて、ロックっぽくなったという感じだろうか。ボーカルで中音域を効果的に使うようになった、1. 「DREAMIN'(夢見る想い)」、後にアルバム”HANA”に再収録されることになる5. 「野生のマーガレット」あたりが印象に残る。

Van Halen, “1984” (1984)

(最初の)David Lee Roth時代の最後を飾る、芸のないタイトルのヒットアルバム。

言うまでもなく、代表曲は2. “Jump”。全米No.1ヒットである。Oberheimのアナログシンセのイントロが印象的。当時の御茶ノ水の楽器屋の店頭では、みんながこのフレーズを弾いていた。PVでは、Davidが飛び跳ねてました。

今になって聴き直してみて面白いと思うのが、3. “Panama”。重厚なリズムセクションと、単純ながらEddieにしか出せない音のギターのリフの絡みが面白く思えるのです。

Donna Lewis, “now in a minute”(1996)

Debut盤。かなり話題を呼んだようですが、当時滞米中で情報収集力が落ちていた私は気づいておりませんでした。

3. “I Love You Always Forever”は、やはり名曲でしょう。これに対して、5. “Simone”,7.“Agenais”, 11. “Silent world”あたりの、バックの音を薄くしたスローバラードもいい。後述の”Be still”(2002)への流れの布石として捉えてみると、これらの曲の意味というか、彼女の本当の強みとするところががわかってくるような気がする。

America, “Harbor” (1977)

オリジナルアルバムとしては7枚目、Dan Peek脱退前のトリオとしての最後の一枚にして、Warner Bros.レーベルから発売された最後のオリジナルアルバムでもある。ハワイ録音で、ジャケットが印象的。商業的には大成功とはほど遠かった一枚だが、私としてはとても好きなアルバム。

1. “God of Sun”の音の枯れ方がなんと言っても素晴らしい。単調なリズムを刻み続けるピアノと、G.Beckleyのリードボーカル、いかにもアメリカなコーラスワークと文句ないのです。4. “Political Poachers”も好きな曲だ。5. “Sarah”は、Beckleyっぽい甘ったるい曲だけど、いいんだよね。9.“These Brown Eyes”はPeekの曲でなんだか記憶に残ってる。

1曲目を除けば決め手となる曲もないのだが、ハワイ録音のせいだろうか、ストリング仕立てをちょっと控えてアコギバンド回帰してるからなのか、音の抜けがよくて、好きな仕上がり。まあまあ、おすすめです。

America, “Holiday” (1974)

Americaの四枚目。この作品からプロデュースが(The Beatlesを手がけた)George Martinとなり、ストリングを加えたアレンジなどの新趣向が出てくる。商業的に成功した五枚目の”Hearts”の布石と捉えるといいのだろうか。名盤と言える出来ではないけれども、個人的には好感を持ってるアルバム。

オズの魔法使いからヒントを得ている2. “Tin man”, 4. “Lonely people”が全米トップ10入りした二曲。前者は以前からのアコースティックギターバンドとしての色と、George Martin色がうまくミックスした曲で結構好き。ちょっと変わった音作りの 7. “Hollywood”や、アコースティックギターとピアノの絡むイントロが印象的だった10. “Old man took”も記憶に残っている曲。他には、3. “Another try”、9.“You”あたりも好き(甘ったるさがちょいと気にかかりますが)。

鈴木祥子、”Long Long Way Home” (1990)

4枚目となる1990年作品。3.“Little Love”は、EPOあたりに通じる80年代邦楽ポップスくささが強く出てる曲。このサビはどこかで聴いたことがあると必死に考えるんだけど思い出せず、ここ数日悶絶中。このアルバムでは一番しっくりくる曲だが、これが本当の彼女自身の色かというと、それは違うかもしれない。4. 「水の中の月」も80年代っぽい拡がりのある音作りで好きだな。5. “Down by riverは、Neil Youngの名曲と同名の一曲。コード進行やアレンジの一部にもその影響が感じられる気が。好きな曲です。1. 「光の駅」、6. 「夏のまぼろし」、7. 「あの空に帰ろう」、10. 「どこにもかえらない」あたりもよい。強烈な曲があるわけでもないが、私的には聴きやすい80年代の音。好きな一枚というよりは、嫌いとは言いにくい一枚、って感じでしょうか。

John Cougar, “American fool” (1982)

イギリスのニューウェーブ勢がチャートを席巻した1982年に、ソリッドなアメリカンロックで売れたたのがJohn Cougarだった(その後、John Cougar Mellencamp, John Mellencampと名義は何度か変わる)。何枚かパッとしないアルバムを出したあとのブレークスルーだったようだ。

1. “Hurts So Good”はビルボードの最高位が2位らしい。今聞くと非常にいいなあ。2. “Jack and Diane”は、ビルボードで 1位まで上り詰めた曲。イントロが、もろに80年代前半のアメリカンロックっぽくていいよねえ。この曲のアコースティックギターの使い方が、ものすごく好きだった。wikipediaによると、本人あんまりこのアレンジは好きではないようだけど。5.“Can You Take It”、 8. “Close Enough”あたりも好きだった。TSUTAYAで借りて20年ぶり以上に聴いたわけだけど、結構このアルバムの曲は(シングル的には売れなかったものまで含めて)覚えてるもんだな。

Jackson Browne, “For everyman” (1973)

Jackson Browneの二枚目にして、初期の最高傑作。本作に加わったDavid Lindleyは、以降JBの作品に欠かせないキーパーソンとなる。アルバムは、The Eaglesのヒットとして知られる1.“Take it easy”から始まる。ドラムが16ビートを刻んでいるところ、David Lindleyのスライドギターが効果的に使われているところが、がイーグルスバージョンとの大きな違いか。4. “I though I was a child”もSSWとしての本領を発揮した名曲。5. “These days”はJBの曲の中でも最も好きな曲の一つ。最初に触れたのは、New Grass Revivalによるカバーバージョンでしたが。6. “Redneck friend”はあまり好きな曲ではないが、キーボードがElton Johnだってのが特記事項。9. “Sing my songs to me”も佳曲。タイトル曲でもある10. “For everyman”は、David Crosbyへのメッセージとして書かれた曲。everymanは「どこにでもいる当たり前の人」と訳すらしい。「この場に踏み止まり生きていく」ことを、内向きな表現ながら、強い社会的メッセージを発した曲だそうだ。

GARO, “GARO” (1971)

携帯に舞い込んだ渋谷・TAUTAYAのレンタル半額キャンペーン。ここは以前から狙っていたブツをまとめ借りなのだ。で、これは名盤の誉れ高いGAROのファーストである。数年前に出たボックスものも買いぞびれ、中古屋では10年近く探し回っても遭遇せず、という逸品。レンタル屋で借りれたなんてね。自分の間抜けさ加減を呪うのです。

このアルバムとの出会いは高校時代に遡る。CSN&Yで洋楽に目覚めた僕は、ほどなく和製CSN&Yの異名をもつGAROにたどりつく。もちろん「学生街の喫茶店」なんかで知ってはいたのだが、アコースティックロック色が強かった一枚目の存在は知らずにいたのだ。同時期に、富澤一誠著による「失速〜ガロが燃え尽きた日」という本も店頭に並んでいた。この作品は、今に至るまで議論の多い一冊だけれども、間違いなく僕をGAROへと導いた一冊だった。とは言っても、80年代初頭には既に廃盤になっており、あちこち探して北18条駅の北大教養部そばにあった中古レコード屋でLPに遭遇したのは、高校三年の夏だったろうか。予備校の夏期講習帰りかなんかだったと思う。この一枚は、LPを大量に処分したときも生き残り、未だに手元にある。でも、プレーヤーがないんだけどね。

さて家に戻ってLPに針を落とすと、そこには邦楽とは思えない世界が広がっていた。1. 「一人で行くさ」の、イントロでのアコギの絡み、いきなりの三度コーラス、これはCSN&Yの”Deja vu”とか、Americaの”Homecoming”に針を落としたときと正に同じ感覚で、すっかりやられてしまった。この一曲は、GAROの曲としては最も好きな曲のひとつだ。4, 「何もかも遠くに」あたりは、Stepehn Stillsっぽいよねえ。6. 「暗い部屋」は、あまり好きではない曲調なのに、なぜか深く囚われてしまった曲。8. 「小さな恋」は、当時はそのわかりやすさが好きだった。今思えば、甘ったるすぎるけど。9. 「地球はメリーゴーランド」は、今でも好きだなあ。Bee Geesっぽいんだよね。

1983年に江古田マーキーでの堀内・日高二人だけの再結成ライブには行ったが、三人揃っての再結成は日高さんが他界したことであり得ないことになってしまった。久々に聴いてみて、黎明期の日本のアコースティックロックを代表するバンドであることを再確認。はっぴえんどほど後世にインパクトを与え続けられるグループではなかったかもしれないけど、好きだなあ。洋楽で言えば、AmericaとかBreadとかと似たような位置づけですかね。

Miranda Lee Richards,”The Herethereafter”(2002)

発売直後に購入していたものの、レビューせず放置すること、早6年ですか。この作品は、なかなか面白いのです。Wikipediaによれば、サンフランシスコ育ちで両親はコミックアーティストだとのこと、カウンターカルチャーの中で育ってきたことが伺える。60年代後半のJefferson Airplaneとか、ヒッピーカルチャーの香りがするものを21世紀になってあえて作ってきたところが面白かった。

1. “The beginner”はStonesのカバーなのだそうだけど、オリジナルを知らず。でも、アレンジはサイケですねえ。2. “The Long Goodbye”は一番日本で売れた曲らしい。60年代後半のロックの色と、彼女自身がFavoriteとして挙げるChrissie Hynde (The Pretenders)の匂いがプンプンとする一曲で、私的にも一番のお気に入り。4. “Right now”, 7. “Last Solstice Of The 70’s”, 9. “Beauty Queen”, 13. “When We Go Walkin'”あたりも、いいですねえ。

Wilson Phillips. “Wilson Phillips” (1990)

全米No.1ヒットを3曲生み出した三人組のデビュー盤。売れたわりには、長く保有する気にもならないというアルバムだからか、『中古屋のベストセラー』状態。ブックオフで105円で出ていたところを購入したもの。デビュー直後は、親がThe Mamas & the PapasやThe Beach boysのメンバーであるという二世グループとしての顔が前面に出されたプロモーションだったと記憶している。

で、聴いてみると、非常に懐かしい音だ。教科書的な三度コーラスと、いかにもこの時代の売れ筋の音の作り方が成功の源か?ビルボードNo.1の“Hold On”, “Release Me”, “You’re In Love”あたりは、売れなきゃ不思議、という音。でも、チャート的には12位止まりだった “The Dream Is Still Alive”の記憶がはっきりしているのは何故だろう。このメロディーは好きだなあ。

事実上、一発屋だった彼女たちだが、「ミュージシャン」になりきれず、「歌い手」止まりだったということだろうか。

Steve Morse Band, “Coast To Coast” (1992)

Steve Morse Bandのアルバムの中で、最も好きな一枚。それを決定付けるのは、“The Oz”。ロックインストというよりはフュージョンっぽい曲で、速弾きではなく、むしろコードワークで勝負の一曲。単純なんだけどすごくすごく格好いいギターインストで、個人的には忘れ難い。2:10くらいのところのブリッジというか、Cメロというかも格好いいんだよなあ。

いつも通りの速弾きロックインストの1. “User Friendly”, 2. Collateral Damageも、もちろん格好いいのです。

The Supremes, “The Ultimate Collection” (1997)

昔からSoulとかR&Bのような黒い音には、どうもなじめない私であります。しかし、数々のカバーを通して、いくつかのThe Supremesの曲にはなじみが深くなるのは必然で、ツタヤでベスト盤借りてみました。僕が洋楽を聴き出した80年代前半に、Diana Rossは押しも押されぬソロの大御所だったが、どうにもなじめなかった。しかし、60年代にThe Supremesで歌っていた頃の彼女の声は、どうにもチャーミングだ。

同じ姿の髪の薄いサングラス姿の男がずらりと並ぶPVが印象的だったのは、Phil Collinsがカバーした“You Can’t Hurry Love”(放題:「恋はあせらず」)だったが、やっぱり原曲が素晴らしいのだね。“Stop! In The Name Of Love”とか、“You Keep Me Hangin’ On”あたりも、元々非常になじみがあり。渡辺美里が初期のライブでカバーをやってましたな。

“Where Did Our Love Go”, “Baby Love”, “Back In My Arms Again”, “Someday We’ll Be Together”あたりの全米no.1になった曲は、やっぱりさすがの出来ですねえ。

荒井由実、「14番目の月」 (1976)

これも名曲揃い、文句なしの名盤。80年代に繋がるpopな音の作りが、邦楽においてもこの頃確立したんだな、と思わされるのが1. 「さざ波」。2. 「14番目の月」は、つくづく名曲だ。4. 「朝陽の中で微笑んで」は、ちょっと不思議な曲。曲はしっかりユーミンワールドなのに、ギターのアルペジオはまぎれもなくこの時代のフォークっぽいもの。このアンバランスが、奇妙にはまる。どういう思考回路になってるのか自分でわからないのだが、何故かこの曲を聴くと僕の頭の中には同時代の中村雅俊の「俺たちの旅」が思い浮かんでしまうんだけど。

で、このアルバムを代表する一曲と言えば、5. 「中央フリーウェイ」ですね。多摩地区の米軍基地の多くが未返還だった時代の話なんで、どうも実感がわかないのだけど。6. 「何もなかったように」, 7. 「天気雨」も、天才的としかいいようのないメロディーメーカーとしてのセンスを存分に発揮した曲。

荒井由実、「ひこうき雲」 (1973)

天才ぶりをいきなり開花させきったわけではなく、それとなく示したかのようなデビュー盤。夭折した友人を歌ったとされる1. 「ひこうき雲」は、いきなり強烈。2. 「曇り空」のメロディーの運びは、歌謡曲でもフォークでもない、おそらく当時の邦楽にあっては斬新な世界を切り拓くものだったのではと容易に推察できる。5. 「きっと言える」, 6. 「ベルベッド・イースタ」なんかも、意外性あるなあ。8. 「雨の街を」とか、10. 「そのまま」みたいなピアノの弾き語り曲に、Carole Kingの強い影響が見られるのは、やっぱり時代ですかね。

鈴木祥子、”Radiogenic” (1993)

初期も終わりの時期の作品と位置づけられるのだろうか?90年代後半の作品から入った僕としては、僕のイメージする「鈴木祥子らしさ」がないから、ちょっと物足りないところがある。80年代の上質なポップスが想起される音なんだけど、おそらく彼女でなくても作れてしまう音なんじゃないかと思えてしまうところが、のめりこめない最大の原因かな。

それでも、“Goodbye, my friend”「両手いっぱい」“my love, my love”あたりのアルバム後半の曲は好きだ。ギターが小倉・佐橋の山弦コンビなんだよね。懐かしのCorey Hartと共演している“Original Aim”も面白いな。小泉今日子(作詞も小泉今日子)が歌ってヒットした「優しい雨」は、ギター一本がバックなんだけれど、ちょっとテンポが遅すぎかなあ。

Workshy, “Clear” (2000)

このアルバムも、外れのない快作。とても心地よい緻密な音なのだ。BGMとしては最高、しかし決定的に吸い込まれていくインパクトの強い曲があるかといえば、そうでもない。というあたりが微妙だ。

1. “Got it clear”, 4. “With Or Without You”, 5. “Anything You Want”あたりがお勧め。6.“If You’re In Love”は、Stevie Wonderあたりを想起させられるメロディーの運び、かつ次作”Mood”の中の”Forever”にも似てますかね。

Christopher Cross, “Christopher Cross” (1979)

邦題は「南から来た男」。言わずと知れたAORの珠玉の名盤。透き通ったハイトーンボーカルがもてはやされたのは、これと前後するAir Supplyのヒットなんかとも共通するところがあった。8. “Sailing”が特に素晴らしい。 “Never Be The Same”もやはり名曲。

80年代前半に僕が洋楽を聴き始めた頃、僕が聞いていたのは60年代後半もの。その時点からわずか15年遡る程度でしかったものを、えらく昔のものを聞いている気になっていた。いまさらながらこのアルバムが30年近くも前のものになるというのにショックを受ける。

The Indigo, “The Flair” (2005)

The Indigoの7枚目。市川さんのある種豊富すぎるアレンジのバリエーションが、逆に器用貧乏っぽい印象を最近数枚は受けていたのだが、本作はデビュー盤に近いアコースティックロック/ポップス路線で、僕的には非常に好きな音になっているのだ。特に、2. “waiting for you”, 4.“I’m busy”, 8. 「あの雲をつかまえて」あたりは、音的には好き。11. “Just the way you are”はBilly Joelの名曲と同タイトルだが、カバーではなくオリジナル。しかし、音が好きなわりにはのめりこめないのは、歌詞の問題だろうか。特に英詞の部分は曲から浮いてしまってますね。

Mary Lou Lord, “Baby Blue” (2004)

1965.3.1生まれだというので、僕自身とも2ヶ月と違わないんだな。Nirvanaを理解できない私にとってはどうでもいいことなのだが、Kurt Cobainの元恋人とも言われる人らしい。その真偽とは全く無関係に、このアルバムは素晴らしいものだと思う。誰に一番近いか考えてみたのだが、頭に浮かんだのはMatthew Sweet、フォークロックっぽいSSWという位置づけだろうか。

総じて外れのないアルバムなんだけど、特に好きなのは、1. “The Wind Blew All Around Me”, 4. “Baby Blue”の二曲。

Maggie Reilly, “Rowan” (2006)

これもiTune Storeで調達したもの。私が世界で一番声がきれいだと信じてやまないMaggie Reillyの最新作。昨夏にCDの邦盤も発売になっていたはず。

しかし、正直この作品はしんどい。トラッド志向が強くなって、ポップス色は非常に薄くなってしまった。”Echoes”の時代の音が好きだった私としては、ちょいと受け入れがたい。2. “Who Knows Where the Time Goes?”, 4.“Star”, 8.Heartsongあたりは、まあ聞けます、っていう程度でしょうか。

Rebekah Jordan, “The Trouble With Fiction”(2005)

1997年にRebekah名義で“Remember to Breathe”を発表。このアルバムには現在でも中古屋で遭遇する確率が高いので、当時日本でもそれなりに受け入れいられたのだと思う。二作目の発売がなく消息がわからなくなっていたのだが、たまたま公式サイトを発見して最近の動向を知った。女優業にむしろ忙しかったようだが、2005年に6 songs EPとして出した久々のミニアルバムは、日本でもiTune storeで購入できる。

で、本作品なのだが、非常に良い。前作のように、アコースティックな曲〜オルタネ爆発な曲まで混在という感じではなく、ちょうど私の好きなアコースティックな路線あたりで落ち着いてまとまっている。blackっぽさを感じさせないblackな音は、相変わらず健在。2. “Dreams”がStevie Nicksのカバーである以外はオリジナル。特に好きなのが、4.“The Art of Losing”。メロディーの運びも、ギターのコード感覚も、とてもいい。3.“Happy”も、面白いなあ。5.“Bliss”もきれいな曲。外れがないアルバムと思えるのは、6曲に絞っているからか?大手レーベルに属さずとも、CDという媒体の物理的な容量にとらわれずとも、ダウンロード販売みたいな発表の仕方が出来るようになったってのは、マスプロ的ではない良質な作品が出てくることを確実に助けている、ということが実感できる作品だ。

The Doobie Brothers, “The Captain And Me” (1973)

大学時代、Eaglesは死ぬほど聴いていたが、Doobieはさっぱり。デビュー盤であるこの一枚を聞いて、単なる食わず嫌いだったことを思い知らされる。おそらく、洋楽を聴き始めた頃は、Micheal McDonaldのソロが非常に売れていた頃で、(後期の)ちょっとむずかしめのサウンド=Doobieっていう思い込みがあったのだと思う。この一枚をツタヤで借りてきたのだが、失われた20年を呪うような内容だった。

2.“Long Train Runnin'”、ひたすらギターが格好いいねえ。3.“China Grove”も言わずと知れた名曲だ。5.“Clear As The Driven Snow”みたいな、いかにも西海岸って音もいいなあ。こういう曲があることを知っていれば、見方はすっかり変わっていたはずなのだ。タイトル曲である10. “The Captain And Me”のコーラスワークも、教科書的な三度コーラスながらすごいなあ。Eaglesが「コーラスではDoobieに絶対勝てない」と思っていたというのが納得できる。

Silje Nergaard, “Darkness Out Of Blue” (2007)

発売直後に購入したものの、レビューをさぼっていたアルバム。通常盤とミニフォトアルバム付きの限定盤が出たのだが、もちろん私は後者を購入してしまった。ファン心理とは恐ろしいものだ。

さて、ヨーロッパでジャズシンガーとしての地位を気づきつつあるSiljeだが、この作品には、デビュー当時に近いポップシンガーとしての彼女の色が強く出ている。曲はポップだが、バックの連中はジャズとしての解釈で演っているという、とても面白いバランスのアルバムで、そういう意味では一時期のJoni Mitchellっぽい感じもあるだろうか。

2.“How Are You Gonna’ Deal With It”, 4. “Who Goes There”, 7. “The Beachcomber”、8. “When Judy Falls”, 10. “The Diner”など、いい曲がてんこもりだ。

一番気になったのが、タイトル曲でもある11. “Darkness Out Of Blue”。リズムの刻みに、Methenyの匂いがする。締めの12. “Paper Boats”も、すごいなあ。

変な意味で特筆に値するのが3.“Before You Called Me Yours”。これはJoni Mitchellの”Circle game”に酷似していて、わざとやったとしか思えない曲です。

Workshy, “Smile Again” (2007)

5年ぶりとなる新譜が、テイチク系のImperialレーベルから出た。相変わらずの洗練されたサウンドは見事なのだ。しかし、前作”Mood”のように、心奪われるようなものにはなっていない。どうしてだろうかと考えてみたのだが、原因はどうやらChrysta Jonesのボーカルの声域にありそうだ。Workshyのは高音域を売りにしてようだが、前作で私が心奪われたのは低中音域の豊かさだった。この作品は、その中低域を使った曲が非常に少なく、初期作品のように高音域にぶら下がったような曲が多い。これはもう生理的なものだとしかいいようがなく、アルバムの出来の評価の指標としては不適切なものなのだが。

いいなあ、と思った曲は、3.“Publiceye”, 7. “Breakthrough”のあたり。2.“smile”や6.“Call on me”なんかは、初期作品っぽい軽さというか、キラっとした派手さがある曲だ。

EPO, “UVA” (1995)

なかなか中古盤屋で遭遇しなかったので、iTune Storeでアルバム単位で購入してしまった。隠れ名盤というのが大方の評価じゃないかと思うのだけれど、僕的には?ですね。

確かに、POPS爆走路線を走り過ぎ、力が抜けたいい歌が聴けるのだ。そこにいるのは、EPOというよりは佐藤栄子さんなのだと思う。しかし、半数の曲がセルフカバーという作りはどうなんだろう?ライブ音源を編集している曲が多いから仕方ないのか?

自分をreconstructしていく作業自体は彼女にとって必要だったのだろう。その作業結果をそのままでアルバムとして世に出し、リスナーを付き合わせるかどうかは別問題じゃないかなあ。本作以降の90年代後半の彼女の作品の良さを知ってしまっているだけに、余計にそう思う。

鈴木祥子、 “Candy Apple Red” (1997)

最初に買った鈴木祥子さんのアルバムが、この”Candy Apple Road”と、「あたらしい愛の詩」 (1999)の二枚だった。もう20年を越えるキャリアの中で見れば、初期のJ-pop女性シンガー路線から、自身の洋楽体験を反映したロック色の強い路線へシフトした時期の作品群。初期ファンの期待を裏切る作品への反響に、自分自身がかなり戸惑ったことを、2009年のライブに先立ったインタビューで語っている。

5年くらい前から祥子さんを聴き始めて僕は、明らかに遅れてきたファンなのだが、このアルバムは本当にすごいんじゃないかという思いが強まりつつある。それは、自分のリスニング傾向を公開しちゃってるlast.fmの個人的なアルバムチャートでもはっきり出てしまっているわけで。

特に印象的な曲がいくつかある。まずは、4. 「恋のショットガン(懲りない二人)」。「女性らしい歌詞だな」と思って聴いていると、S気全開の“もう降参だと言いなさい”というサビに流れ込むという思わぬ歌詞の展開が面白い。そして、音はどうしようもなく、ロックなのだ。個人的には、この曲でのギターが好きなのだが、弾いているのは当時の旦那の菅原弘昭さん。

9.“Shelter”は、何とも言えない澱みがある曲だ。こういう曲を書き切れる、演り切れる、というのが、祥子さんのスゴミなのだと思う。

11. “Angel”も大好きな曲。ポップなメロディーと自然体の歌詞ながら、とても大事なことを伝えているように思える。作詞は小倉めぐみさん。しかし,本人が書いていたとしてもまったく違和感がないその歌詞は、今に至るまで続く「なにかを見失ったまま、さまよいながら、でも進み続けている」鈴木祥子ワールドそのままだからと僕は感じる。あなたの”胸の中の天使”は、あなたにどう生きろとメッセージを送っていますか?

12.“River’s end”は、のちのライブ盤のMCで、自分が生まれ育った下町のことを歌ったと語った曲。忘れるために生きているというくだりも、のちの「忘却」あたりにつながる世界だ。

その他、3. “Sulky Cat Strut”あたりも、決して好きでは曲調でないにも関わらず、「器用だなあ」と思ってしまう。単純なようで実はメロディーの作りが面白いのは8.「君の赤いシャツが」。13.「ぼくたちの旅」は、珍しく前向きな歌詞なんだけど、曲のキレがいいのでやはり大好きな曲。

そしてそして、この人の天才ぶりを示す一曲が7. 「3月のせい」だと思う。私の拙い言葉をどう書き連ねようとこの壮絶な世界を説明できない。ぜひあなた自身が聴いてみて下さい。

鈴木祥子、「あたらしい愛の詩」 (1999)

本作は、80年代洋楽へのオマージュみたいなキャッチコピーがついていたと思うのだけれど、なるほどそれらしい仕上がりだ。1. 「この愛を」を書いたときに彼女の頭にあったのはBruce Hornsbyの”The way it is”だったに違いない。“二人はとても似ていたので恋することは簡単でした”から始まる歌詞も絶妙で、実らなかった若き日の自分の恋を思い出すのだった。
もう一曲佳曲を挙げておくと5. 「愛は甘くない」だろう。メロディーの運びも佐橋氏のギターも自然で心地よく、なにより文体を変えて“愛は甘くないんである”と歌詞を締め括るセンスが大好き。必聴。

「この愛を」のライブ画像@YouTube↓

Norah Jones. “Not too late” (2007)

Norah Jonesの三作目。売れているようだが、どうにも私にとってはつまらない作品。なぜそう感じてしまうかと言えば、アメリカンルーツミュージックに寄り過ぎて、ジャズっぽさが薄れたのが原因じゃないかと思う。“Thinking about you”はいい曲だと思うが、オリジナルだというのに、どうも誰かの(The Bandあたりかな?)カバーのような気がしてしまうのだよね。

LANPA, 「水の上のPEDESTRIAN」 (1990)

平松八千代さんが在籍していた、いわゆる「イカ天バンド」の一つ。あの番組としては異色な大人系バンドだった。最も印象に残っていたのは、タイトル曲でもある、2. 「水の上のPEDESTRIAN」。CDを当時保有していたわけでもなく、ほんの数回しか聴いたことがなかったにも関わらず、このメロディーの運びは覚えていた。あらためてCDで聴いてみると、アレンジが泣きそうなほどつまらないのだけれど。他には、1. “LOCH SENU”なんかを聴くと、なんかPat Methenyっぽいなあ、ということがいきなり頭をよぎる。彼がこの曲で求めた音の拡がり感がメセニーっぽいものだったんだと思うのだけれど。あとは、10, 「あの時の私達は」あたりもいい曲かな、と思う。これにはFleetwood Macあたりが思い起こされるかなあ。正直なところ、全体的にはそれほど面白いアルバムではありませんでした。

しかし、八千代さんのボーカルは、この作品ではまだちょっと不安定が感じられる。Soyの時代に向けて歌唱力がすごくアップしたんだな、と感嘆。

Journey, “Frontiers” (1983)

高校卒業の春を猛烈に思い出すアルバムだ。アメリカ発売が2月で、日本発売は5月だったとwikipediaにはあるのだけれど、ベストヒットUSAなんかでは早くからオンエアされていたせいだろうか?

1. “Separate Ways (Worlds Apart)”が売れていました。ディスコでこの曲ががかかっていた記憶があるんだけれど、あれは札幌だったのか?東京だったのか?5. “Faithfully”(邦題:「時への誓い」)は、いいロックバラード。ロードムービーっぽいビデオクリップだったのが思い出される。2. “Send Her My Love”も耳にこびりついてる感じなんだよなあ。ハードロック趣味ではなかった僕の記憶にさえ残るのだから、やはり名盤なのでしょう。

The Eagles, “One Of These Nights” (1975)

イーグルスがハード路線へと舵を切り出した作品。でも結構好きで、大学時代に良く聴いていた(もちろんリアルタイムではない)。タイトル曲である1. “One Of These Nights”のコーラスにはやられました。3. “Hollywood Waltz”のペダルスチールにも、はまったものだ。4. “Lyin Eyes”なんて、ウエストコーストサウンドの教科書的な乾いた音だ。5. “Take It To The Limit”は代表的なヒット曲。8. “After The Thrill Is Gone”とか9. “I Wish You Peace”も好きだったなあ。この手の音の話で盛り上がった、一緒にバンドをやっていた友の顔を思い出す。彼が亡くなってもう10年以上が経つんだな。

The Eagles, “The Long Run” (1979)

最初の解散の際に残した一枚。初期イーグルスファンの私としては、どっぷりひたる部分の少ないアルバムではあります。その中でも記憶に残るのは、やはりTimothy B. Schmitの 2. “I Can’t Tell You Why”。昔から好きな曲だ。3. “In The City”のさびの部分のコード進行も好きだったなあ。10. “The Sad Cafe”もアルバムを締めるにふさわしい佳曲。

The Eagles, “Desperado” (1973)

これが二枚目。初期Eaglesを代表する一枚。私は非常に好きです。やはり極めつけは.5. “Desparado”でしょう。ロックバラード史上に燦然と輝く名曲だ。

1. “Doolin Dalton”もいい曲。ブルーグラスあがりの私としては、2. “Twenty-One”も外せない。MuleskinnerでのClarence Whiteのプレイをぱくったとしか思えないイントロが笑える。いかにもランディマイズナーだなあ、という6. “Certain Kind of Fool”も好きな曲だ。

The Doobie Brothers, “Minute By Minute” (1978)

The Eaglesと共に70年代後半のウエストコーストシーンの双璧をなしたグループ。これは後期作品で、Steely Dan流れのMicheal McDonald色の強いアルバムだ。2. “What A Fool Believes”が傑出した名曲。このコーラスワークは、本当にすごい。タイトル曲である3. “Minute By Minute”もやはりすごい。10, “How Do The Fools Survive?”もいいねえ。音が初期Doobieほど単純ではなく、ちょっと難しいところはあるかもしれないが、AORの名盤と捉えておけばよいでしょうか。

Chantal Kreviazuk, “Under These Rocks And Stones” (1996)

久々に引っ張り出して聴いてみると、なかなかすごい人です。優れた女性SSWを輩出しているカナダの出身で、これがデビューアルバム。1. “God Made Me”を聴くと、「オルタネだねえ。ぶちぎれ加減が足りないAlanisかねえ」とか思うのだが、一転してきれいな音の運びの2. “Surrounded”なんかが続いたりすると、「こいつ、すごいかもしれん」と思わされるのだ。3. “Don’t Be Good”あたりにはLisa Loebっぽい自由さを感じてみたり。6.“Imaginary Friend”, 10.“Actions Without Love”もいいバラードだ。こうやって聴きなおしてみると、(Joni MitchellとかRickie Lee Jonesほどではないにしろ)音楽性の幅広さに驚きの一枚。二作目以降をなぜフォローしていなかったのかとひたすら後悔、私的CD want listの筆頭に一気に躍り出ました。

The Byrds, “Byrdmaniax” (1971)

私のギターアイドルClarence Whiteなどの加入で大きくカントリーロック路線へ舵を切ったThe Byrdsの後期作品の一つ。1. “Glory, Glory”は、やはり名曲なんじゃないでしょうか。もう一つ言及しておきたいのが、Jackson Browneのデビュー盤にも収録されていた“Jamaica say you will”。JB版でのClarenceのギターには本当に泣けるが、このThe Byrds版もなかなかのものだ。JBファンに取っても聴く価値のある一曲。

The Byrds, “Mr. Tambourine Man” (1965)

フォークの神様Bob Dylanの曲をロック編成で演ずるというデビューの仕方で、Folk Rockという新分野を開拓したのがThe Byrds。自分が生まれた年のアルバムだと思って聴くと感慨深い。1. “Mr. Tambourine Man”は言うまでもなく彼らの代表曲。12弦エレキのイントロからして既に格好いいし、コーラス部も格好いいよね。しかし、個人的には正直ピンとくるのはこの一曲のみ。高校時代にベスト盤を聞いていた後遺症だろうか。

Buffalo Springfield, “Again” (1967)

Neil Young, Stephen Stillsを擁した’60後半の西海岸バンド。その影響は、はっぴいえんどを通じて、日本の音楽界にも色濃く残る。ロック史を語る上で避けては通れないバンドの一つ。

アルバムは、Neil Youngの“Mr. Soul”から始まる。1982年のテクノ志向で知られるいかれたソロ作”Trans”でも再演していた曲だ。2. “A Child’s Claim To Fame”あたりは、後にpocoの結成に参加するRichie Furayらしいカントリーロックナンバー。5.“Bluebird”, 9, “Rock & Roll Woman”はStephen Stillsらしい曲の作り。CSN&Y以降よりは、彼はこの時代の方が格好良かったんじゃないかな。10. “Broken Arrow”は、Neil Youngの農場の名前にもなった曲。わざとらしい組曲作りがほほえましい、いかにも初期Neil Youngっぽい曲だ。

The Carpenters, “Gold-Greatest Hits” (2000)

1970年代を中心に大ヒットを連発した伝説の兄妹デュオThe Carpentersのベスト盤。いわゆる「ポピュラー」に分類されるものなので、ロックファンとしてはこれを語るのは気恥ずかしいところもあるのだけれど、やはりKaren Carpenterは不世出・別格の女性シンガーである、と言うのが結論だ。NHK-BSで見たカーペンタース特番で、Richard CarpenterはインタビューでKarenの声をPhonogenic(レコードに乗りやすい)と表現していたけれど、とにかく厚いというか、豊かというか、特に低音域であらゆる倍音成分がほどよくブレンドした声なのだ。

それぞれの人が、それぞれの曲に対していろんな思い入れを持っていることと思う。私は、1. “Yesterday Once More”, .2. “Superstar”, 3. “Rainy Days And Mondays”, 14. “(They Long To Be) Close To You”, 19. “Sing”あたりが、ポップス史を語る上で忘れることの出来ない不朽の名曲だと思う。決して「面白い」と思うような曲ではないのに、「でもやっぱりいい曲」と認めざるを得ないところが、カーペンターズがカーペンターズたる由縁で、長い間人々の心をひきつけている原因なのだと改めて思う。

Billy Joel, “The Stranger” (1977)

今さら何を書くまでもない大御所Billy Joelがブレークを果たした一枚。洋楽に興味なんてさらされない中学生の耳にでさえ、このアルバムからのヒット曲は容赦なく耳に飛び込んできたものだ。

タイトル曲の2. “The Stranger”はよく知られているが、何と言ってもこの一枚を代表する一曲は3. “Just The Way You Are”だろう。私のiTuneでのratingは文句なしの五つ星。ロックバラードを語る上で、歴史上欠かせない一曲であると断言できる。4. “Scenes From An Italian Restaurant”も佳曲。

Bill Evans Trio, “Waltz For Debby” (1961)

一言で言って青春の音です。雪解けの札幌でこのアルバムを教えてくれたあの人は、今も元気でやっているのだろうか?一時期ピアノ譜を買って一生懸命練習したけれど、中学時代にようやく到達したソナチネで沈没した私にはやはり無理でした。

1. “My Foolish Heart”は本当に本当に名曲だ。2. “Waltz For Debby”は、人類の宝だ。「お前が思うこの世で美しい曲を三つだけ挙げろ」と言われたら、この一曲は必ず入ってくる。4. “My Romance”もいい曲だ。筆舌に尽くしがたいというよりは、この一枚について書こうとする自体ことが失礼だと自分で思ってしまう、そういう作品。

Original Soundtrack, “FM” (1978)

FM局を舞台とした映画“FM”のサウンドトラック。映画自体は後世に残るようなものではなかったが、サントラだけはその豪華顔ぶれから生き残っているという作品のようだ。二枚組CDもの。下の通り、「ごめんなさい」と平伏すしかない選曲です。

Original Soundtrack, “No Nukes” (1979)

西海岸系のアーティストによる反原発コンサート。下に示すようなメンツなので、聞かないわけにはいかないアルバム。これは映画にもなって、東京に出たての頃だったろうか、レーザーディスクを上映する渋谷の飲み屋までわざわざ見に行った記憶がある。しかし、選曲のせいだろうか、メンツの割には正直面白くないアルバムだと今になると思う。しいてお勧めするのは The Doobie Brothers with John Hall & James TaylorというメンツでのJohn Hallの名曲、5. “Power”だ。

Woodstock, Bangladesh concert, No Nukes, Live Aid…….ロックで時代が変わると信じてられていた熱気も今は昔。

Anna Nalick, “Wreck Of The Day” (2005)

Billboardアルバムチャートで20位まで行ったデビュー盤。いい若手ロックシンガーだ。1. “Breathe (2 AM)”は最初にシングルカットされた曲だが、やはり良い。.3. “Paper Bag”, 6. “In The Rough”, 9. “Bleed”あたりも非常に好きな曲調。4. “Wreck Of The Day”はタイトル曲だが、クラシックロックの要素をしっかり消化した妙に惹かれる仕上がりとなっている。84年生まれだからアルバム発売時は21歳。周りが作ってくれた音、という要素がまだまだ強いだろうが、これからどう化けていくかが楽しみなアーティストの一人だ。

Angela Ammons, “Angela Ammons” (2001)

デビュー当時17歳。Michelle BranchやAvril Lavigne的なガールズロックと捉えておけばいいのだろうか。しかし、良いpop-rockを聞かせてくれる。1. “Big Girl”や、2. “When It Doesn’t Matter”あたりは、単純に「いい!」と思える。アップテンポな曲は歌いきれるが、スローな曲はからっきし、というのが若いシンガーの定番だが、4. “Someday Soon”みたいなスローな曲でもしっかり歌いきって馬脚を現さないところは見事。

Ana Martins, “Linda” (2001)

勉強しようと思いつつ全く追いついていかないボサノバ。そんな私にも、この一枚は一味違うとわかる。バックアップミュージシャンのテクニックによるところが大きいのだと思うが、「すごい音を聞かされている」って思いに囚われるのだ。3. “Tardes Cariocas”, 4. “Ninho De Vespa”あたりが特に強烈で印象に残る。かと思うと、4. “Bewitched [Encantada]”や、11. “Saudade Fez Um Samba”は、肩の力が抜けたいい曲。夏の昼下がり向きだ。

Airplay、”Airplay” (1980)

AORの名盤中の名盤と言われる一枚で、私ごときが多くを語らない方が良さそう。とにかく音作りの緻密さは完璧だ。1. “Stranded”, 2. “Cryin’ All Night”と、ゾクゾクする音の作り。5. “Should We Carry On”のようなバラードも完璧なのだ。一番好きな曲は、9. “She Waits For Me”かな。

The Alan Parsons Project, “Eye In The Sky”(1982)

これも掛け値なしの名盤。ビートルズの”Abbey road”を代表作とするスタジオエンジニアだったAlan Parsonsを中心としたイギリスのグループ。プログレ系に分類されることも多いが、このアルバムはAOR色が強い。

なんといっても、2. “Eye In The Sky”が名曲。“I am the eye in the sky looking at you, I can read your mind”なのだ。5. “Silence And I”はセイコーかどこかのCMで使われていたような気がする。10. “Old And Wise”も印象深い曲だ。

LINDBERG, “LINDBERG III” (1990)

えー、こういう趣味があったとカミングアウトするのも恥ずかしいのですが、Lindberg好きでした。ロックと言えば洋楽・歌謡曲と言えば邦楽という時代から、ロックが邦楽の中でマーケット的に自然に受け入れられていった80年代後半からのシーンで、Lindbergとかアンルイスとか言った歌謡ロックの役割ってのはそれなりにあったと思うのだ。ボーカルの渡瀬マキはアイドル歌手としてデビューしたのち、Lindbergのボーカルとして再登場することになった経歴を持つ。ぶっきらぼう唱法はパーソンズっぽくもあるのだけれど、上手くもなく下手でもなく、でもいい味を出していたと思う。

最大のヒット曲は3. 「今すぐ Kiss Me」で、この疾走感は好きだったなあ。他には、1.“LITTLE WING”, 8. “YOU BELONG TO ME”あたりのアップテンポな曲がよいのだ。スローな曲になると、どうしても出来の悪い歌謡曲になってしまい、いまいち。

Ivy, “In the clear” (2005)

5作目。ジャケットは飛行機の窓、タイトルと相まって面白い。いつのまにか、ギターサウンドへ回帰している。2. “Thinking About You”, 4. “Tess Don’t Tell”, 6. “Corners Of Your Mind”あたりのギターサウンドの疾走感と、へなへなしたボーカルのアンバランス感はThe Cardigansを彷彿させて面白い。一方で、9. “Ocean City Girl”, 10. “Feel So Free”あたりのスローな曲も結構良いのです。

Ivy, “Long Distance” (2000)

3年のブランクを経ての三作目。アレンジが”ApartmentLife”のあたりとは少し変わり、ギターは奥に引っ込んだ。ある種Swing out sisterっぽくなったかも。おしゃれ系ポップスですかね。邦楽で言えば、The Indigoのような音といえばいいだろうか。アメリカでの発売は2001年で、日本では2000年に先行発売されたようだ。

気になる曲は、3. “Edge Of The Ocean”, 6. “Lucy Doesn’t Love You”, 9.“Midnight Sun”のあたり。4. “Blame It On Yourself”, 13. “Digging Your Scene”あたりの、前作っぽいギターサウンドも良い。

Ivy, “ApartmentLife” (1997)

IvyはNYCを根城とするバンドで、これはそのIvyの二枚目。いいギターポップバンドだと思う。ボーカルのDominique DurandはパリからNYCへ語学留学中にバンドに合流したそうな。決して上手いボーカリストではないが、サウンドとはよくマッチしている。

1. “The Best Thing”とか、4. “I Get The Message”あたりはThe Cardigansあたりのスカンジナビアン・ポップロックと共通の匂いがする私好みの音。9. “Get Out Of The City”あたりの疾走感は、(ボーカルの線はJennie Medinと比べると圧倒的に細いけれど)むしろCloudberry Jamっぽいかな。

Fleetwood Mac, “Mirage” (1982)

言うまでもなくスーパースター揃いのバンドだが、Christine McVieとStevie Nicksの二人の名女性ボーカリストを抱えていた。(何度も書いているが)1982年というのは私にとっての洋楽元年であり、”Best Hit USA”で盛んに見たこのアルバムからのヒット曲のビデオクリップは忘れがたいものがある。

私が好きだったのは、実は女性ボーカリストものではない9. “Hold Me”だ。このピアノのイントロと、さびのコーラスは何とも言えないなあ。大ヒットとなったのは、Stevie Nicksがリードを取った5. “Gypsy”。でも、今となっていいなあと思えるのは、Christine McVieがリードを取った6. “Only Over You”だったりする。

Julia Fordham, “Swept” (1991)

これも良いアルバム、大人の音です。1. “I Thought It Was You”, 2. “Patches Of Happiness”, 3. “Swept”, 4. “Rainbow Heart”とアルバムの前半は外れなしの隙のない出来。 8. “As She Whispers”あたりは個人的には好きな曲調ではないけれど、すごいということはわかる。10. “Tied”で、ずっしり重いバラードを歌い上げて静かにアルバムの幕を引いていくのです。

Julia Fordham, “Porcelain” (1989)

これが二枚目なのだと思うが、ややうるさい音作りだった一枚目からうって変わって良い大人の音に仕上がっている。ボーカルの良さをフルに引き出して、広がりのある音世界を作るアレンジが光る。

タイトル曲である2. “Porcelain”はさびのメロディーが何か他の曲とそっくりなのだが思い出せない。でも、良い曲だ。Juliaのボーカルの良さがフルに引き出されている。6. “Manhattan Skyline”はメロディーもいいし、開放弦を多用したアコースティックギターのストロークも良い。8. “Towerblock”はスローバラードだが、サビで高音に抜けるフレーズを柔らかく唄いきっているあたりは圧巻。9. “Island”も深みのあるいい曲。